昨晩、SAP本社ビルにおいて、2回目となるSORACOMのユーザグループ会が開催された。
ソラコム社はモノとインターネットの間をつなぐ上で必要な様々な技術を提供するIoTプラットフォーマーだ。
以前の記事でもSORACOMでできることについて紹介しているので、詳しくはそちらを見てほしい。
ところで、ユーザグループというのに馴染みのない人のために説明を加えると、ソラコムのようなプラットフォーマーが提供する技術を実際に利用しようとした際、その技術を検証したり、利用方法を知る場所があることは重要なことだ。いくら優れた技術やサービスがあっても、使いこなせない限りその本当の力が引き出せないからだ。
そこで、有志のメンバーがコアとなる技術に興味の有る人を集め、お互いに情報交換を行ったり、SORACOMからの最新情報を聞くことができるような場所を作っていくのだ。
目次
ソラコムからの新サービスの発表
SORACOM Canal API
先日のソラコム社のイベント、Connectedで発表された、SORACOM Canal。もともとSORACOMのシステムがアマゾン社のAWSに格納されていることから、他社のシステムもAWS内に配置されていれば、AWSの機能を使ってセキュアにネットワーク接続が可能となるサービスだ。
このサービスを使うことで、AWS内にサーバを構えるサービス事業者が、提供するモノをインターネットにつなぐ際、
「モノ→SORACOM Air→ソラコムのサーバ→サービス事業者のサーバ」
というデータの流れの中で、モノからサービス事業者のサーバまでをセキュアに、しかも簡単につなぐことができるというサービスだ。
今回ソラコム社から発表のあったサービスは、このSORACOM Canalの利用手続きをプログラム制御することができるようになり、その結果価格も大幅値下げとなるという発表だった。
APIの仕様もすでに公開されている。
コマンドラインインタフェース化
これまでも様々な機能をAPIとして提供されてきているのだが、今回の発表ではそれらのAPIをコマンドラインから呼び出すことができるようになったということだ。
指定された引数を元にリクエストを組み立て、SORACOM API を呼び出すので、そのAPI からの出力はをそのまま標準出力へJSON形式で出力されるということだ。
端末ログを自分で確認することができるように
モノとの通信において、通信状態が悪い場合、通信が途切れたりする。その通信状況を知るにはこれまでは問い合わせが必要だったのだが、今回の発表ではユーザコンソール上で通信履歴がみれるようになったということだ。これによって、障害が発生した場合などの際、通信がどういう状況であったかということを簡単に自分で確認することができるようになったということだ。
MWC報告会 ソラコム 安川氏
ソラコムのCTO安川氏から、先日スペインのバルセロナで開催された、MWS(Mobile World Congress)の視察報告があった。
外から書き換え可能なSIM(eSIM)や、IoT向きな通信である、Cat-M, NB-IoTなどなどいろんな通信に関する情報が展示されていたということだ。
クルマに搭載されたeSIMの例
ヨーロッパでは、ご存知の通り国境が隣接していて、クルマで国をまたぐ移動も可能だ。そういった場合、各国ローカルな通信キャリアへの変更を行うときに、これまでだとそれぞれのキャリアに対応したSIMの変更が必要だった。
しかし、eSIMを使うことで、クルマがいろんな国にはいっても、各国のローカル通信プロファイルでデータ通信をしながら移動ができるというデモンストレーションが行われていたということだ。
SIMのプロファイルを書き換える
まず、eSIMの入った、Galaxy GearS2を準備する。そして、自分のスマートフォンで特定のSIMのプロファイルをダウンロードし、Galaxy Gear2に必要なプロファイルを送信することで、いろんな通信キャリアを利用できるという例が紹介された。
LTE Cat-MとNB-IoT
IoT向け通信では、必ずしもリッチな通信ができる必要がないということから、LTE Cat-MとNB-IoTの利用が注目されているということだ。
通信業界の技術も日進月歩で生まれてきているので、注目していきたいところだ。
さくらのIoT Platformによくある勘違い フェロー 小笠原氏
続いて、さくらインターネット フェローの小笠原氏から、さくらのIoTPlatform α版リリース後、よく「MVNOサービスをやるのですか?」と聞かれることが多いが、そうではないというお話があった。
小笠原氏は、冒頭、さくらのIoTPlatformでは、「現在ハードウエアをやっている人が弱い、インターネットの部分を補完しようと考えている」と述べた。
通常、モノにIoT通信モジュールをつけようとすると、現状だと3万円くらいするものだ。そこで、さくらインターネットは、2年間のメッセージのやり取り(100万回分)をつけて、1万円を切る金額で出そうと考えていると述べた。
しかし、この通信サービスはあくまでも、さくらインターネットの閉域網につながるだけなので、自由にインターネットを楽しめるMVNOとは違うということだ。SIMに関しても例えばSORACOMのSIMも使えるということだ。
さらに、さくらインターネットの閉域網の中では、BaaSとしてウフル社のMilkcocoaを使っており、その先も様々な企業と提携して利用しやすくすることで、IoTのバックエンドがカンタンに作れるようになるというのが特徴だと述べた。
ライトニングトーク
Raspberry Pi3の電源問題 スイッチサイエンス 宗村氏
Raspberry Pi3が先日発売され、機能アップしたが、電源消費が増えてしまった。そこで、身近な機器をつかってどれくらいの電力が必要かについて検証してみたということだ。
CPU負荷のみであれば給電USBを使えば何とかなるが、実際は2.5A出力に近い電源を用意する必要があるということが分かったということだ。
SORACOMに乗せるぜマイナンバー アイレット 齋藤氏
マイナンバーのような個人情報をモノからインターネット上のクラウドに上げる際、セキュアな通信網が必須となる。そこで、SORACOM EndorseやSORACOM Canalを使って情報をセキュアに飛ばす仕組みを簡単に構築できないかとためしたということだ。
SORACOMとクラウドをつなぐツール Cassipeiaをつくってみた @takipone氏
Cassiopeiaとは、被デベロッパが手軽に使えるようなバックエンドを作る、つなげるCLIツールだということだ。
アーキテクチャはIoTではシンプルな構成だ。Amazon KinesisとAnalyzerを使っているということだ。
こういう専門的な知識がなくてもデバイスのデータを送信することができるCLIを作った。
具体的なアーキテクチャは以下の通り。
#cas setupですべてのコンポーネントを作成することができるので、後はSORACOMを指すだけでよいのだ。
#cas pullでKinesisのデータを取りに行くことができ
#cas openでブラウザが立ち上がり、kibanaにデータが入り、グラフ表示がされるようになるというモノを作ってみたということだ。
電源停止状態のRaspberry PiをSORACOM Airで起動してみた メカトラックス 永里氏
メカトラックスは3GPiという、Raspberry Piに接続可能な3Gモジュールを提供しているが、今回は電源が落ちているラズパイをソラコムのSIM経由で電源をつけるというデモが行われた。
下のように、ブラウザ上でスイッチを押すと、SNSが3GPIを起動する。起動した後、AWS Device Shadowと段ボールが同期するので、目の色を変えたり、首を動かしたりすることができるのだ。
このように遠隔のデバイスを必要な時だけ使えるという機能を現在開発中で、次世代の3GPiにこの機能を搭載したい、さらにSORACOMの回線も閉じることができるようになるのではないかと考えていると述べた。
その他、今後のソラコム関連の告知
SoftwareDesign5月号に、SIM付きで発売
7/13(水)SORACOM Conference “Discovery”開催
これらの情報は今後IoTNEWSでも紹介してく予定だ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。