店舗の外に歩いている人の何%が実際にお店に足を踏み入れるのか、知りたいと思ったことはないだろうか?WiFiを活用して、その疑問に答えてくれるサービスが登場した。
今回、株式会社モバイルAブリッジ 取締役COO 松井康至さんと、取締役 CTO 森谷武浩さんにお話を伺った。
-サービス内容を教えてください。
松井さん(以下、松井) ウォークサイトというサービスでして、簡単に申しますと、リアル(オフライン)店舗の分析サービスです。コンビニエンスストアなどの天井にセンサーを設置しておくと、お客様がお持ちのスマートフォンのWi-Fi信号(設定が「ON」になっていることが条件)をセンサーがキャッチし、分析ができる仕組みです。
例えば、店舗外の通行者がおおよそどの位であるとか、そのうちの何%が入店されているなどの傾向が把握できます。また、滞在されているお客様はどの位で、そのうち再訪問のお客様は何%で、1週間のうちに2回来店されている方がどの程度いらっしゃるか、などの一連の流れがわかります。
店頭でお使いいただける無料のダッシュボードもご用意しておりまして、取得した情報をお店のPCやタブレットの端末上に、グラフでリアルタイムに表示できるようになっております。
店外、店内の客の動きがわかる
松井:ダッシュボードでは計り知れないことも多々ありますので、分析レポートのサービスも別途提供させて頂いております。
一番基本的な分析レポートとしては、ファネル分析と呼んでいるものがあります。先ほど申上げた、お客様の流動分析とご理解いただければと思いますが、店頭にいくつかセンサーを設置することで、外で歩いている方の何%が来店されているかという分析が可能です。これらの分析を応用し、チェーン展開されているクライアント様にレポートをご提供しております。
例えば、新宿や渋谷などの中心にある大きなお店は人通りも多く、入店されるお客様も多いので、売上げも大きくなり、成績が良いように見えてしまいます。ただ、数だけを見るとそうなのですが、実際に外の何%が入ってこられていて、何%の方が購入されているのか、といった割合で見ると、店舗の実力を少し違う角度で見ることができます。
とあるクライアント様では、数値を割合に転換することで、売上げの大きなお店以外でも入店率や購買率で健闘している規模の小さなお店が沢山あるということがわかりました。このように、別の角度で指標をご確認頂くことで、目指すべきKPIを変更されるるお客様もいらっしゃいます。
他にも、ゾーン分析と申しまして、店舗内にセンサーをたくさん設置し、ヒートマップを分析事例として提出させていただくこともあります。アパレルショップなどのディスプレイ変更による人の動きの変化を確認する際にも有効です。
たくさんの商圏に導入されるとクロス分析も可能になってきます。あるブランド様の事例ですが、50mほどの近距離にお店が2つ並んでいて、通行量で20~25%ほど重複が見られるということがわかりました。経営者の方としては、片方のお店を閉じた方が良いのではないかという悩みがどうしても出てきます。実際にデータを確認すると入店されている方の重複がミニマムで2%くらいでしたので、このまま両店を継続して売上げを確保したい、という判断に繋がりました。
最近では、インバウンドが非常に盛んですので、訪日外国人分析のサービスも提供しています。センサーで集めたデータを解析して、どこの国から来られた方なのかという簡単な割合を出すことができます。現在は地方自治体さんなどからの引合いが強いように感じます。
海外の事例になりますが、MARSという感染症が流行った時に客足が遠のいてしまって、店舗さんが困っていらっしゃっていました。このグラフで(下記参照)グレーのところが国内の消費者の足取り、赤色が外国人なのですが、国内の方が先に回復がはじまったので、このタイミングで国内向けのプロモーションを再開することで、無駄なお金を使わなくて済んだという事例があります。
弊社では個人情報には該当しないパーソナルデータを扱っており、個人を特定する情報は扱っておりません。
また、データ取得時に暗号化(非識別化処理)を行なったり、集計処理なども行っています。また、お客様にサービスの明示を行うべく、店頭にステッカーを貼っていただき、情報の取得および活用について説明させて頂いております。
その上で、お客様からパーソナルデータの取得を止めてほしいというご依頼があれば、サービスページで、オプトアウトが行えるよう体制を整えております。オプトアウト後にはお客様のデータの取得を停止することが可能です。
海外の技術をベースに、日本展開
-技術的には、端末のMACアドレスを取得しているのでしょうか。
松井:主に、スマートフォンにはMACアドレスという48ビットの識別番号があるのでそれを取得しています。
-お客さんが外にいるか中にいるかはどう区別しているのでしょうか。
森谷さん(以下、森谷):電波の強さの設定ができるので、センサーを設置したあとに調整しています。店舗の敷居内の数値を入れ、その数値より下だと外とみなしています。
-敷居前後の、電波の減衰を見ているのですね。
森谷:外の通行量といっても、車道やさらに向こう側の歩道は店舗には関係ありません。なので、再度計測を行い、この歩道より外のデータは使わないという設定をすることで、かなり厳密に店舗の内外を判別しています。再訪問の回数や周期、再訪問の回数別の滞在時間もわかりますし、色々な切り口の分析を提供しています。
-まさにクラウドとビッグデータ様様(さまさま)ですね。とてもじゃないですが10年前は思いつかなかったです。
森谷:そうですね。スマートフォンの普及とタイミングがマッチしましたね。それでも店舗さんはけっこうネット環境がないところが多くて、ポケットWiFiを使うケースもあります。
-設置するには専門の技術者がいないとできないのでしょうか。
松井:工事業者であれば、ノウハウさえ習得いただければ、設置は可能です。
-電波技術的には難しいですよね。
森谷:これ自体がセンサーとして作ってありますので、干渉などが起こらないように設計されています。5GHzと2.4GHzどちらも使用していますが、用途に応じて得意不得意がありますので、両方うまく使分けしています。
電波のチャンネルなどを見ながら設置しているのですが、今のところ、干渉で問題があったということはありません。
-ライトにつけられるのですね。
森谷:設置方法としては、どこかに置いてもいいのですが、お客様が触ってしまうこともあるので、一番良いのは工事をして天井に設置することです。
-この手のサービスはデータ集めたもの勝ちなので、いかに普及させるかがポイントになりそうです。
松井:個人情報保護委員会によるデータ取扱のガイドラインが来年以降制定されていくと思われますので、その動きを見ながらサービスを世の中に普及させていければと思っています。
-ウォルマートがずいぶん前に出した事例で、顔認識をして来店客を把握するというのがあったのですが、デッドスペースが見られないので、そこはどうするのということだったり、高価なモノをたくさん入れるわけにはいかないし、どうしようという話がありました。ウォークインサイトは比較的安いので、費用をおさえられるし、複合施設だとWiFiをオンにしてる人も多いでしょうから、広がりに期待が持てそうです。
松井:顔認証は夜になると暗くなるので店外が撮れないこともあるかと思います。また、動画はプライバシーの取扱いが高度になる部分もありますので、その辺は人を特定しないというウォークインサイトの特徴が活かせると考えております。
森谷:独自でセンサーを開発しているというのも珍しいかと思います。センサーとしては性能が高いのが特徴です。
-本日はありがとうございました。
これまでもこのような考え方はあったし、海外では類似サービスもあるという現状だが、モノとしての仕上がりがいいのと、クラウドにあげた後の分析に力を入れているというところが素晴らしいと思う。
この手のソリューションは先んじて導入シェアを高めたところが勝つという傾向にあるので、今後は導入時の電波状況の計測や、導入工事をどうやって簡単に誰でもできるようにしていくか、導入店舗が増えた際に、導入後のデータの見方をどのように理解してもらっていくかという点をクリアしていくことになるのではなかろうか。
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