AWSのCEOAndy Jessyは、AWS re:Invent2017のキーノートスピーチで、「Everything is Everything」と銘打ち、多くのサービスのリリースを発表した。
まず、全体を通して、昨今のシステム開発は、どんどんサーバレス、プログラムレスな環境が出来上がってきていて、我々は「提供されている部品をうまく使う『使い方』さえ知っていれば、大抵のことはできる環境が整いつつある」ということに改めて気付かされるスピーチだった。
これまで、オンプレミスで作られてきたエンタープライズ向けの大きな情報システムでは、大量のデータを高速に処理する力を求められ、世界中にシステムリソースを分散させデータの保全性を高めることや、セキュリティ面での堅牢さと、大量データを解析するエンジンを必要としてきた。
しかし、今や、AWSは市場のシェアとしてもそう言った既存ベンダーを抜き去り、クラウドにあげたくない顧客が納得するような、必要な機能を次々と提供してきている。そして、大規模で高価な環境を必要としない、規模が小さい情報システムにも対応した、エンジンを同時に準備しているのだ。
小さいことをやるのに、大げさな設備を使って高いコストを払いたくない。その一方で、大きなことをやるには、スケーラブルで安定的な環境を準備したい。といった、様々な顧客ニーズに応えるためだと言える。そして、AWSは、こういったインフラを構成する要素のすべてを「秒単位の利用時間に対するの価格」で提供しようとしているのだ。
IoTについて言えば、「エッジ側を如何に楽に作れるか」「学習済みのAIモデルがどれくらいあるのか」「クラウドにあげた後の処理がどれだけ業務運用を意識されたモデルとなっているか」「分析は簡単にできるのか」など、実際に取り組んでみると、多くのことが解決すべきテーマとなるはずだ。
例えば、IoTを進めるために、「エッジデバイスの管理」は必須となる。世界中のどこに、どんなデバイスがあって、それは今どういう状態なのか、プログラムは簡単にアップグレードすることができるのか、デバイスのセキュリティはどう担保されるのか、ネットワークの安全性は確保されるのか、といった様々なことが「インフラ」として提供されていれば、我々は安心して必要なビジネスロジックの実現に精を出せることだろう。
![AWS IoT DEVICE MANAGEMENT](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05208.jpg)
そして、クラウド上に上がったデータは、蓄積され、簡単に分析ができることが必要で、IoTの大量データがストリーミングデータとしてサーバにアップロードされてくるなか、どれだけリアルタイムにデータを処理することができるのかも重要になる。
![Amazon REKOGNITION VIDEO](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05137.jpg)
ここで使われるアルゴリズムは、マシンラーニングなどで学習済みのモジュールである場合もあるはずだ。
音声や画像、動画といった、「ヒトがこれまで認識して処理してきたこと」についても、機械学習によって作られたモジュールが対応をする。
![Amazon TRANSCRIBE](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05146.jpg)
![Amazon TRANSLATE](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05153.jpg)
![Amazon COMPREHEND](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05159.jpg)
ちょっとしたことであれば、エッジデバイス側でも学習済みモジュールをつかった高度な判断もしたくなるだろう。
![GREENGRASS ML INFERENCE](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05222.jpg)
マシンラーニングを実際に行うのに必要な環境も、これまでは「学習環境」や、「デプロイ環境」など様々なシステムを横断する必要があったが、これも、ひとつのサービスの中で完結すれば無駄な作業時間やソフトウエアに関する学習時間も大きく削減されるだろう。
![Amazon SAGEMAKER](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05118.jpg)
そして、エッジデバイスのセキュリティの担保も重要な課題だ。利用者にとってみれば、エッジデバイスが踏み台となって別の問題が起きるケースや、重要なデータを抜き去られたりする可能性があるからだ。
![AWS IoT DEVICE DEFENDER](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2017/11/DSC05212.jpg)
そして、IoTサービスによって得られたデータのうち、他社と連携したり、公開したりすることで価値があがるものについては、セキュアに他社との通信をしたいと思うはずだ。
こういった、IoT/AIを活用したビジネスをやろうと考えた時、「あったらいいな」という、一つ一つのことが、着実に、全部実装されていく、これが今回のAndy Jessyのメッセージとなる「Everything is Everything」という言葉の意図するところなのだろう。
顧客の課題ありきで増えていくサービス群は、どれも現場志向で興味深いものであった。
新サービスの紹介と考察
15種類の新サービスと、1つのカメラデバイスが紹介されたが、全部の機能を解説するのは、AWSのホームページに譲るとして、IoTNEWSは、上に書いた「あったらいいな」を紹介すつつ、サービスをIoT/AI導入企業がどう利用していくかについて以後の記事で考察していく。
AWS re:Invent2017記事
コネクテッドホームなどIoTで使えるAWSのコンポーネント アクセンチュアの旅行をスマートにするソリューション AWSは、 IoT/AIの「あったらいいな」を全部実現するサービスへ
無料メルマガ会員に登録しませんか?
![IoTNEWS代表 小泉耕二](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2a6acab4699b4d8f1bd680d2c83361d4-e1714715519254.jpg)
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。