ワイヤレス給電技術は、コネクタの安全性・防水性・防塵性の向上が図れるため、スマートフォンなどのモバイル機器を中心に採用が進み、ホテルや空港、カフェ、自動車のセンターポケットなどインフラへの導入も加速している。
現在、最も普及が進むWPC(※1)のQi規格は、欧州の自動車規格団体「CE4A(※2)」で車載向け充電の標準規格に採択されている。一方で、非接触通信のNFC(※3)は、その認証機能を活かして、Bluetooth/Wi-Fiへのペアリングによる車内インフォテイメント機器との連携、ドアロック機能やエンジンスタート、カーシェアリングシステムなどへの活用が期待されている。
こうした中、ローム株式会社は、NFCに対応した車載向けワイヤレス給電ソリューションを開発した。同ソリューションは、ロームが開発中の車載対応(AEC-Q100準拠※4)ワイヤレス給電制御IC「BD57121MUF-M」(送電側)と、STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)のNFCリーダライタIC「ST25R3914」、制御用8bit マイコン「STM8A シリーズ」で構成されている。
WPCのQi規格EPP(Extend Power Profile)に準拠し、15Wを供給可能で、車載向け充電として要求される広範囲な充電エリアを可能にするマルチコイルタイプ(シングルコイルに比べて給電可能範囲約2.7 倍)に対応している。
両技術を組み合わせることにより、スマートフォンをはじめとするモバイル端末への充電と、車内のBluetooth/Wi-Fiネットワークへのペアリング動作を同時に1つの動作で実現できるようになる。
同ソリューションでは、Qi規格で課題だったスマートフォンケース内などに挿入されたNFCカード(Suica等)の検知が可能になり、磁場による破壊を未然に防止することができる。将来的には、NFCシステムで車とスマートフォンを結び、従来のキーや専用カードに頼らないシェアードカーシステムを実現することが期待されている。
今後、同リファレンスボードのサンプル販売が計画され、Qi認証済み受電用ボード「BD57015GWL-EVK-002」と組み合わせることで、WPC Qi規格EPPに準拠した車載向けワイヤレス給電を簡単に実現することができる。
※1 WPC(Wireless Power Consortium) Qi規格:WPCは、電子機器のワイヤレス給電技術に関する国際標準規格「Qi(チー)」の策定と普及を目的として設立された標準化団体。2019年1月現在654社が加盟。
※2 CE4A(Consumer Electronics for Automotive)は携帯電話機や携帯型音楽プレーヤー、ナビゲーションといった携帯機器と車載電子制御ユニット(ECU)とのインタフェースの標準化を進める団体。
※3 NFC(Near Field Communication)は、13.56MHzで動作する無線・非接触通信を利用して、新たなアプリケーションの導入を促進するテクノロジー。
※4 AEC(Automotive Electronics Council)-Q100 は、大手自動車メーカーと電子部品メーカーが集まって作られたオートモーティブ集積回路(IC)のための各種信頼性試験の規格。
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