【概要】
■3社の強みを融合し、高性能・安全・セキュアな車載用組込みシステム開発に向けた画期的なパッケージ
■自動車の電子制御ユニット(ECU)を悪意ある攻撃から保護し、ECUとクラウド間のセキュアな通信を可能にする包括的ソリューション
■AUTOSAR準拠の使いやすいソフトウェア・プラットフォームにより、車載用機器メーカーが直面する製品開発期間の短縮や標準化への準拠にともなう課題解決に貢献
多種多様な電子機器に半導体を提供する半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、車載用マイクロコントローラ(マイコン)、ソフトウェア・ツール、セキュリティ・ソリューションからなる完全なプラットフォームを提供するため、車載用組込みシステム開発の革新的ソリューション・プロバイダであるETAS、および同社の子会社で組込みソフトウェア向けのセキュリティ・ソリューションを手がけるESCRYPTと協力することを発表した。このプラットフォームは、コネクテッド・カー時代に向けて、新しい車載制御機器の開発を加速させる。
現在、車載機器の設計は、ブレーキ・バイ・ワイヤ、オートマチック・トランスミッション、複数の点灯モードを持つ灯火類、パーキング・アシスト、衝突防止などの複雑なアプリケーションを管理する電子制御ユニット(ECU)への依存度が高くなっている。これらのECUは、車載サブシステムを相互接続する通信ネットワークを介してコマンドを送信することで、車載機器のデジタル制御を実現している。さらに、クラウドに接続される自動車の増加に伴い、OTA(Over the Air:無線通信)によるソフトウェア更新、遠隔診断、V2X通信(1)なども可能になる。
このようなトレンドに安全に対応するため、自動車の耐用年数全体を通じて管理される、堅牢なハードウェアおよびソフトウェアのセキュリティ・プラットフォームの採用が加速している。
STは、ETASおよびESCRYPTと共に、コスト効率の高い車載サブシステム開発用プラットフォームの提供に向けた取り組みを行っている。このプラットフォームは、自動車所有者のプライバシーおよび車両メーカーの知的財産の保護、ECUの機能保全統合の実現、ECUとクラウド間のセキュアな通信を確保するためのものだ。
STがETASおよびESCRYPTと開発するこのソリューションは、低消費電力でリアルタイム性能に優れた車載用マイコンのSPC58を採用している。この車載用マイコンは、最先端のCAN FDの他、LIN、FlexRay、およびタイムスタンプ機能をサポートしたイーサネットといった複数の通信インターフェースに加え、組込み型のハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)を実装することで、ECU間での機能検証や暗号通信による車内ネットワークを構築する。このアプローチはコネクテッド・カーの保護に向けたSTの製品サービスを拡大するもので、個人情報漏洩や重要な車載システムへの侵入につながるインターネットを介した攻撃からECUおよびゲートウェイを保護するためのセキュア・エレメントまたは組込みSIM(加入者識別モジュール)も対象となる。
STのオートモーティブ & ディスクリート・グループ、戦略的ビジネス開発 / マイクロコントローラ・ビジネス・ユニット ディレクターであるLuca Rodeschini氏は、次の様に述べている。「車載用マイコンのSPC58は、業界で求めらる基本的な堅牢性とハードウェア・セキュリティを競争力ある価格で提供します。既に大手車載機器メーカーが、ソフトウェアの修正やアップグレードをカーディーラーの工場へ持ち込むことなくリモートで実行できるセキュアなOTAアプリケーション向けに、この車載用マイコンを採用しています。」
ESCRYPTは、OTAソフトウェア更新の配信を含むセキュアなECU通信に関する専門技術で貢献するほか、ECU開発者向けにSPC58のHSMを利用するためのファームウェアおよびミドルウェアを提供する。このHSMとESCRYPTのセキュリティ技術を組み合わせることにより、信頼されたソースに対する必要な全ての認証を行い、権限のないエージェントによるアクセスを阻止することができる。
このソリューションは、ECUのプログラムコード開発をサポートするETAS社のRTAソフトウェア製品を活用している。RTA-BSW(基本ソフトウェア)は、Rev4を含むAUTOSARに完全準拠しており乗用車(ISO 26262)およびオフ・ハイウェイ車(ISO 25119)向けのセーフティ・クリティカルなECUをサポートする。また、仮想環境で完全なECUソフトウェア・スタックを作成・テストするためのISOLAR-AおよびISOLAR-EVEで補完されている。
AUTOSAR(AUTomotive Open Systems Architecture)は、拡張性と相互運用性を有し、かつ標準化された組込みシステムのためのフレームワークとして、自動車業界で認められている。開発者はこれを活用することで、新製品の開発期間を短縮し、コストを抑えながら、差別化機能の開発に注力することができる。
(1) V2X:安全性の強化、渋滞の緩和、燃費向上などを目的としたV2V:Vehicle-to-Vehicle(車車間)およびV2I:Vehicle-to-Infrastructure(路車間)通信
【関連リンク】
・エス・ティー(ST)
・イータス(ETAS)
・ESCRYPT
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