2015年にフォードがキーノートでスピーチをして以来、2020年にかけて自動運転が話題となり、その実現技術がCESの会場で発表されることが多くなった。
実際に自動運転カーが街をテスト走行するようになり、実車にも搭載されたり、その技術が物流ロボットやサービスロボットなどに転用されるなかで、精度や性能は向上しているものの、参加者が驚くような新しい技術は発表されなくなった。
2023年大きな話題となったBYDも展示なし、いつも大きなブースをとっていたアウディも展示なし、トヨタ、日産もなし、とお馴染みのメーカーは展示がなく、参加していたホンダやメルセデスなどは、コンセプトモデルを中心に据えるという状況に変わってしまっていた。
そんな中、私が興味を持ったのは、AGCと住友ゴムの展示だ。
自動運転やコネクテッドカーに必要なガラス
AGCは国内のガラスメーカーだが、2022年から展示をしている。
今年の展示では、赤外線を通すガラスを展示していた。
自動運転の車は、いわゆるカメラで周囲の状況を把握するが、それ以外にも赤外線を使って暗闇でも温度を識別することができるため、自動運転の安全性能には欠かせない。
しかし、実際の走行時には、雨が降ったりするし、そもそもガラスが邪魔でうまく赤外線が飛ばないということが起きるということだ。
そこで、自動運転のために特別なガラスを開発、赤外線を通しやすい製品として「ワイドアイ」を展示していた。
また、撥水に関しても、撥水効果を高めるとガラスの透明度が下がるということで、透明度を下げずに撥水効果を高めるガラスを展示していた。
さらに、コネクテッドカーが当たり前となりつつある中、どうやって5Gの通信を実現するのかということに問題が出るのだという。
そこで、AGCは、5G通信に対応したガラスを開発した。デザイン性を損なわず、コネクテッドや自動運転の性能を引き出す努力は、ガラスでも行われている。
タイヤの摩耗状況をITSから取得
また、初出展となる住友ゴムのブースでは、クルマが発する情報から、タイヤの摩耗状況を類推するソリューション「センシングコア」が展示されていた。
タイヤの回転により発生する車輪速信号を使って、それを解析する「デジタルフィルタリング技術」を使用することで、タイヤ空気圧、路面状態、タイヤ荷重、タイヤ摩耗、車輪脱落予知の5種類の情報を検知できる。
6種類目、7種類目の情報も「具体的に検討に入っている」ということだ。
CASEというキーワードが話題になってからおおよそ10年が経過し、コネクテッドも、自動運転も、シェアリングも、EVも、それぞれの分野で具体化されすでに市販車として走り出している。
まずはこの4分野について、技術の成熟度をどのように実現していくのか、特にコネクテッドに関しては、それが移動空間にどう影響を与えるのか、といった進化についても一定具体化され始めている。
ここ数年、一見しただけではなかなか驚けないクルマの進化だが、こういった技術の成熟度をCESで見せていくのか、それとも自動車の展示会に回帰していくのか、今後この辺りも注目をしていきたいところだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。