日産自動車株式会社は5日、完成車を専用埠頭まで無人牽引車で搬送するシステム「Intelligent Vehicle Towing(インテリジェント ビークル トーイング)」を同社の追浜工場に導入したと発表した。
日産は、「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」という構想のもと、人とクルマ、そして社会との関係をよりワクワクするものに変えていくべく、様々な取り組みを行っている。今回の取り組みは、地図や通信等の技術を活用し、電動化・知能化されたクルマとインフラをつなぐことにより新たな価値を創造するもので、「ニッサン・インテリジェント・インテグレーション」の実現に向けた一つアプローチだ。
同システムは、自動運転機能を備えた電気自動車「日産リーフ」ベースの牽引車と台車で構成されており、一度に最大3台の完成車を無人で搬送することが可能だ。
従来から部品搬送に使用している無人搬送台車は、磁気テープやレールを辿って走行しているが、今回のシステムは、こうしたインフラを敷設する必要が無いため、生産工程や物流動線の変更に柔軟に対応しながら、経路を設定する事が可能。牽引車には、複数のカメラとレーザースキャナーを搭載しており、そこから得た白線、路肩、障害物などの情報と地図データを組み合わせ、自車の位置を正確に把握することで、目的地までのルートを工場内の制限速度で自動走行する。
先行車両や人に接近した場合には、自動で停止し、一定以上の距離が確保されたと判断すると自ら再発進する。それぞれの牽引車の位置、車速、作動状況やバッテリ残量は、管制センターにてモニタリングすることができる。また、牽引車同士の進行ルートが交差する際は、管制センターにて優先順位を決定するほか、緊急時にはシステムを遠隔で停止させることも可能だという。
これまで完成車は、組立工場から専用埠頭まで専門のドライバーが完成車を1台ずつ運転して搬送していたが、将来の日本における労働人口減少の対策の1つとして、日産では搬送業務の合理化に向けた方策の検討を進めてきた。
今回の追浜工場における試験運用は、その取り組みの一つで、1年前から開始している。既に累計1,600回に渡る試験走行を実施しており、この間に得られたデータに基づき、構内での特定条件下における無人走行時のリスクに対応できる安全機能やフェールセーフ機能、天候や日照といった周辺環境の変化の中でも安定的に走行できる信頼性を確立してきた。今後、追浜工場で更なる技術検証を重ねるとともに、将来的には国内外の他工場への導入も検討していくという。
日産は長年自動運転技術の開発に取り組んでおり、今年8月にはミニバン「セレナ」に高速道路の同一車線で使える自動運転技術「プロパイロット」を実用化するなど、同技術の普及に積極的に取り組むとともに、個人ユース以外の幅広い活用についても研究開発を続けてきた。
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