多種多様な電子機器に半導体を提供するSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、性能とセキュリティ機能を強化し、より充実したコネクテッド・ドライビング・サービス向けに最適化された、最新のTelemaco3を発表した。
オンボード・センサのモニタとクラウドとのデータ通信を行うテレマティクス・システムは、車両の遠隔診断、ロードサイド・アシスタンス、OTA(Over the Air:無線通信)によるソフトウェア更新などの高付加価値サービスに対応するため、ますます高度化している。また、各種インフォテインメント機能(位置情報に基づいたサービス、個人のコンテンツの閲覧、連絡先との通信など)が、エンド・ユーザのメリットをさらに大きくする。
ABI Researchによると、2021年までに世界中で72%以上の新車にテレマティクス・システムが搭載されることが考えられている。これは、OEM企業やテレマティクス・サービス・プロバイダのほか、アフターマーケットのベンダーにとってもビジネス・チャンスとなる。
STのTelemaco3は、テレマティクス・プロセッサ、セキュアな車載通信、およびサウンド拡張機能をコスト効率に優れた1チップに統合しているため、先進的なコネクテッド・ドライビング・サービスの利用拡大に貢献する。一般的なアプリケーション・プロセッサや、CPU(中央処理装置)を統合したGSMモデム製品と異なり、Telemaco3は、テレマティクス・アプリケーションに特化しており、通信方式(2G、3G、4G)を選択できる拡張性を持っている。
同時に、ハードウェア処理による暗号化アクセラレータと、拡張された通信機能(ギガビット・イーサネット対応、Wi-Fiモジュールを車内ホットスポットとして使用するオプション)により、車載ネットワーク用のセキュアなインタフェースを強化している。
Telemaco3ファミリは、STA1175、STA1185およびSTA1195で構成されている。CANインタフェースの数やDSPサブシステムのオプションなどを選択できるため、柔軟な設計が可能。同ファミリは現在サンプル出荷中で、2017年12月に量産が開始される予定だという。
Telemaco3ファミリは、前世代品(Telemaco2ファミリ)と比較した場合、電力効率と面積当り効率に優れたメイン・プロセッサの処理速度が3.5倍以上(700 DMIPSから2500 DMIPS)向上しており、テレマティクスおよび通信アプリケーションの性能を強化する。
車載ネットワークのCANインタフェースを制御するARM Cortex-M3マイコンは、最新の可変データレート規格であるCAN-FDに対応しているため、データ通信の高速化と高効率化が実現。加えて、新たに追加されたハードウェア処理による暗号化エンジンにより、OTAによるシステム更新時のデータ認証が強化される。
DSPサウンド・サブシステムは、ノイズキャンセリングなどにより、音声通信時の音質を向上するオプション機能だ。
また、外部インタフェースにより、高性能化され、柔軟な設計が可能になる。これには、通信インタフェース(CAN-FDドライバ、ギガビット・イーサネット、Bluetooth、Wi-Fiワイヤレス・モジュール)、アナログ・パワー・アンプ出力、および外部メモリ用インタフェース(Flashメモリ、DDR3 SDRAM)が含まれる。DDR3コントローラを内蔵しているため、PC市場のスケール・メリット(規模の経済)を活かして、コスト・パフォーマンスに優れた高性能なストレージを使用することができる。
パワー・マネージメント機能は、設計の簡略化と外付け部品点数の低減に役立つため、部材コストを低減できる。さらに、基本機能が常に使用できる状態を維持する常時オン回路と、CANの割り込みイベントなどに高速応答するスマート・ブートが、自動車の電装系かかる負担を最小限に抑えながら、急なイベント処理を確実に実行する。
充実したLinuxカーネルとボード・サポート・パッケージ(BSP)を含むソフトウェア開発サポート、通信スタックやナビゲーション・ソフトウェアなどのミドルウェア、およびCortex-M3サブシステム用FreeRTOSカーネルが用意されているため、製品開発期間の短縮や、Linuxの広範なオープンソース開発エコシステムの活用が可能になる。
【関連リンク】
・STマイクロエレクトロニクス(ST)
・ABI Research
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