日本ナショナルインスツルメンツ株式会社(以下、日本NI)は、本日4月12日、米ナショナルインスツルメンツ(NI)が、テキサス大学オースティン校のSAVES(Situation-Aware Vehicular Engineering Systems)イニシアチブと新たに提携したことを発表した。
この提携に基づき、NIは、同イニシアチブによる自動運転車/自律走行車の研究を促進するために、ミリ波に対応するリアルタイムテスト技術を提供する。その技術を利用するテストベッド(試験用のプラットフォーム)では、超低遅延、新たなレーダ波形、データ分析といったテーマに焦点を絞ってテストが実施される。
NIが提供するのは、76~81 GHz帯を使用し、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)や通信テストに応用可能な技術で、同社のミリ波フロントエンド技術と同社が最近リリースした第2世代のベクトル信号トランシーバ(VST)「PXIe-5840」を基盤とするもの。テキサス大学のテストベッドでは、第2世代のVSTと特定周波数帯向けのアップコンバータ/ダウンコンバータを組み合わせて使用する。両コンバータは、リアルタイム帯域幅が1 GHzの76~81 GHz帯レーダをテストするために設計されている。
システム全体としては、システム開発プラットフォーム「NI LabVIEW」とPXI(PCI eXtensions for Instrumentation)製品をベースとして構築されている。このシステムを使い、特定の物体に対するレーダ反射波のエミュレーションやHIL(Hardware-in-the-Loop)テストを実施することにより、車載のセンサとCPUを結ぶネットワークリンクの応答性を確認することができる。これらの作業は、車載の至る所に配備されたセンサに対し、ハードウェアとソフトウェアの両面でテストを行うものであり、自律走行車の安全性と信頼性を高めるうえで不可欠だという。
SAVESは、テキサス大学オースティン校のワイヤレスネットワーキング通信グループ(WNCG:Wireless Networking and Communications Group)が推進するイニシアチブ。テキサス大学オースティン校の交通研究センター(CTR:Center for Transportation Research)との密接な連携の下、自動車技術の先進的な研究を進めている。
このイニシアチブでは、車両に搭載された様々なセンサから得たデータを集約し、安全性や走行制御と関連するデータを見いだすとともに、センサから得た膨大なデータを、基地局を介してクラウドベースのインフラに伝送する取り組みが検討されている。そして、ディープラーニングや各種のデータ分析手法を用いて得られたデータを処理し、ドライビングエクスペリエンスの向上を図るというものだ。
SAVESの立ち上げには、NI、Huawei、トヨタIT開発センターの3社が参画している。Huaweiは、通信と道路交通の性能評価を行うための指標をいかに結び付けるかを中心に据えた研究プロジェクトを進めている。トヨタIT開発センターは、位置情報に基づくビームアライメント(Position-aided Beam Alignment)と低周波レーダの設計/試作をターゲットとしてプロジェクトを推進している。
SAVESイニシアチブ ディレクター兼テキサス大学オースティン校コックレル工学部 電気/コンピュータ工学教授Robert W. Heath Jr.氏は、「SAVESは、ワイヤレス通信、センサ、自動車といった技術が交わる「交差点」で、テキサス大学オースティン校の優秀な教員/学生と企業を引き合わせる役割を果たします。テキサス大学オースティン校は、ミリ波通信に対応するNIのプロトタイプ環境や、レーダ/LiDAR(Light Detection and Ranging)/カメラ/DSRC(Dedicated Short Range Communications)無線を備える3台のテスト用車両などを保有しています。NIの新たなADAS向けテストソリューションは、それらの装置を補完するものです。」とコメントした。
NIグローバル自動車戦略担当バイスプレジデントStefano Concezzi氏は、「NIの新たなADAS向けテストソリューションは、レーダの特性評価とテストに要求される、トレーサブルなRF計測とシステムシミュレーションの両方に対応できる拡張性を備えています。NIのアプローチは、オープンなプラットフォームの上で車載エレクトロニクスの検証とテストを実施するというものです。NIのプラットフォームを利用することで、レーダの活用シーンにおいて新たなシナリオ・課題が生じた際に、システムを即座に適応させることができます。また、NIのソリューションを採用することで、センサフュージョンがディープラーニングに対応したECU(電子制御ユニット)と協調するような複雑なシステムの検証にも対応できます。このように、NIのプラットフォームを利用することにより、ADAS用コンポーネントの開発/検証時間を短縮することができます。加えて、ADAS用のHILシステム/テストシステムの導入費用だけでなく、総所有コストを削減することが可能になります。」と述べた。
【関連リンク】
・ナショナルインスツルメンツ(National Instruments)
・テキサス大学オースティン校(The University of Texas at Austin)
・ファーウェイ(Huawei/華為技術)
・トヨタIT開発センター(Toyota ITC)
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