ルネサスエレクトロニクスとASTC、ならびにASTCの子会社であるVLAB Worksは、ルネサスの車載情報・ADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)用SoC (System on Chip)「R-Car V3M」をPC上に再現し、組み込みソフトウェアをPCのみで開発できる仮想環境「VLAB/IMP-TASimulator」を共同開発した。ASTCおよびVLABWorksが2018年1月~3月期から提供を開始する。
同仮想環境は、ルネサスが提供するR-Car V3M向けソフトウェア開発環境の一翼を担う開発ツールであり、ルネサスが本年4月に発表した「Renesas autonomy」コンセプトに基づく一連のソリューションのひとつだ。
自動運転システムにおいては、例えば自車の位置を推定するための物体検知、認識などのアルゴリズム開発はより複雑かつ大規模なものとなり、PCによる開発が主流となっている。
一方、実際に自動運転車で動作するソフトウェアはハードウェアアーキテクチャを前提とした組み込みソフトウェアで、従来から評価ボードなどのハードウェアによる開発が中心だ。
そのため、PCで開発したアルゴリズムをハードウェアアーキテクチャに深く依存する組み込みソフトウェアに移植させることが大きな課題となっており、2つの開発フェーズ間のスムーズな移行、もしくは一体化を実現する開発環境が強く求められている。
このような要望を満たすため、ルネサスとASTCは、組み込みソフトウェアへの移植を前提としたR-Car V3M向けソフトウェア開発を可能とする仮想環境VLAB/IMP-TASimulatorを共同開発した。
ASTC独自の仮想化技術である「VLAB」が対象のハードウェアをPC上に正確に再現することで、これまでハードウェアを使って開発していた組み込みソフトウェアをPCのみで開発できる。
この仮想環境の上で、開発者はハードウェアの動作を確認・制御することが可能なため、ソフトウェアの不具合も効率的に検出することができ、品質の高いソフトウェアを従来の半分以下の期間で開発できるという。
VLAB/IMP-TASimulatorの特長は以下の通りだ。
- R-Car V3M内蔵の画像認識エンジン「IMP-X5」をPC上に再現し、ソフトウェアの開発期間を大幅に削減
IMP-X5の64スレッド並列プロセッサをPC上に再現。マルチスレッドプログラミング専用のC言語で作成されたソフトウェアのステップ実行、ブレーク、変数参照などのデバッグが可能であり、この仮想環境を使用しない場合と比べてIMP-X5向けソフトウェアの開発期間を削減する。 - ASTC独自の「タイミング相関型シミュレーション」搭載によりハードウェアの処理時間見積もりを高速化
「タイミング相関型シミュレーション」を搭載し、IMP-X5のキャッシュ、バス、プロセッサおよびその他機能ブロックの複雑なタイミング動作のモデル化にあたり、ハードウェア動作の主要なタイミングを把握・反映し、効率的なシミュレーションが可能。これにより、ハードウェアの処理時間見積もりで一般的に使用されるサイクルベースシミュレータと比較して100倍以上高速に実行できる。
【関連リンク】
・ルネサス(Renesas)
・オーストラリア・セミコンダクタ・テクノロジ・カンパニ(ASTC)
・VLAB Works
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。