ソニー株式会社は、AI×ロボティクスの取り組みを加速しており、その一貫として新たな移動体験の提供を目的としたNew Concept Cart(ニューコンセプトカート)SC-1を試作開発した。SC-1は乗員の操作による運転に加え、クラウドを介して遠隔からの操作でも走行が可能だ。
SC-1は、人の視覚能力を超えるイメージセンサーを車両前後左右に搭載していることから、人が視認しながら運転する一般的な自動車と違い、360度全ての方向にフォーカスが合された映像で周囲の環境を把握できる。
また、搭載したイメージセンサーの高感度な特性と内部に設置された高解像度ディスプレイにより、乗員が夜間でもヘッドライトなしに視認が可能だ。
イメージセンサーで周囲を捉えていることから窓が不要となり、代わりにその領域に高精細ディスプレイを配置することで、様々な映像を車両の周囲にいる人に対して映し出すことができる。
さらにはイメージセンサーで得られた映像をAI(人工知能)で解析することでインタラクティブに発信する情報を変化させることができる。この機能により、車両周囲にいる人の性別・年齢などの属性を判断して、最適な広告や情報を表示することなども可能だ。
そして、SC-1は自社開発の融合現実感(Mixed Reality)技術を搭載している。乗員がモニターで見る周囲の環境を捉えた映像に、様々なCGを重畳することで、従来の自動車やカートでは景色を見るだけであった車窓がエンタテインメント空間に変貌し、移動自体をより楽しめるようになる。
なお、SC-1にはイメージセンサーと共に、超音波センサーと二次元ライダー(LIDAR:レーザー画像検出と測距)を搭載。ネットワーク接続されたクラウド側には走行情報が蓄積され、ディープラーニングで解析することで、最適な運行アシストに繋げるとともに、車両に搭載した複数のセンサーからの情報をエッジ・コンピューティングで判断し、安全な走行へサポートする。
ソニーは、本年9月より学校法人沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)のキャンパスにおいて、SC-1の実証実験を開始。この実証実験はOIST Integrated Open Systems Unit(北野ユニット※)との共同研究であり、各種走行試験に加え、太陽光など自然エネルギーの利用も含めた電力利用や、走行時の消費電力の低減及び最適化の考察などを行うものだ。
※OIST教授の北野宏明氏が推進する再生可能エネルギーによる自律分散マイクログリッド・システムやモビリティ・システムなどの統合を基盤としたサステイナブル・アーキテクチャのプロジェクト。
SC-1の主な仕様は以下の通りだ。
全長: 3140mm
全幅: 1310mm
全高: 1850mm
乗車定員: 3名
走行速度: 0~19km/h
車内搭載機器: 49インチ 4K液晶モニター 1台
車外搭載機器: 55インチ 4K液晶モニター 4台
イメージセンサー: 35mmフルサイズ Exmor R CMOSセンサー5台
【関連リンク】
・ソニー(Sony)
・沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。