OKIグループの設計受託事業会社である株式会社OKIアイディエスは、半導体や組込み分野で事業を展開する技術商社のアヴネット株式会社と、AIを搭載し「SAE Level4-5(※1)を実現する次世代の高度自動運転技術」の開発向けに新型の開発プラットフォームを共同開発したと発表した。
2018年2月よりアヴネットから国内販売を開始し、次いでアジアにも販売を広げていく予定だとしている。
新型のプラットフォームは、自動車メーカーやサプライヤーが自社の独自機能を開発して搭載することや、官民で進める次世代ITS(高度道路交通システム)との連携を可能としたオープンプラットフォーム設計となっている。
現在の高性能GPUと同等の処理速度を持ちながら5分の1の消費電力(ザイリンクス社調べ)で稼動する、FPGA(※2)とARMコアから構成されるザイリンクス社製の最新デバイス「Zynq UltraScale+ MPSoC」(※3、以下MPSoC)を2個搭載したA4サイズで、今後のSAE Level4-5自動運転に必要になる大容量データを高速処理することができるという。
また、高速走行時、安全に停止するために必要な約800メートル先の障害物情報を検知することが可能な前方監視用8メガピクセル以上の高精細マルチカメラや、周囲監視カメラ、イメージセンサーなど、最大12個を接続可能な高速インターフェースを持っている。
従来のADAS開発プラットフォームは、搭載されるMPSoCが1個で、インターフェースも汎用的なものが多いため、開発目的に応じて拡張ボードを別に用意したり、独自に開発する必要があった。
今回開発されたプラットフォームでは、高度自動運転技術開発にターゲットを絞り必要な機能をA4サイズにコンパクトにまとめたことと、車載バッテリー規格電圧と同じ12ボルト稼動としたことで、実車への搭載による評価・検証を可能としており、技術開発のスピードアップに貢献するという。
新型プラットフォームは、「AD(自動運転)はADAS(先進運転支援システム)の単純延長ではない」、かつ「コンパクト設計」の実現というコンセプトのもと開発された。
車載電子システムの機能安全要求レベルASIL-C(※4)に対応したMPSoCを2個搭載し、1つ目で多数のセンサー情報を処理して人物、車両、障害物の検出を行い、2つ目で地図データ、地形情報、風景情報を高速に処理する。
2つのMPSoCで自動運転に必要な大量データを瞬時に処理し、最適な走行ルート選択やエンジンコントロールを行う。顧客の技術資産やAI、ディープラーニング技術、オープン化されているセンサー・地図情報、ザイリンクス社が保有する技術資産を容易に組み合わせることが可能で、現在の自動運転車の先のレベルSAE Level4-5の自動運転車の早期開発に寄与するという。
開発にあたってはコンセプト作成をアヴネットが行い、実際の設計製造はOKIアイディエスが担当。両社に加えて多くのサプライヤーとも連携し、自動運転機能実現に必要なコンポーネントをフルスペックで実装したことで、SAE Level 4-5の自動運転の実現を目指す、自動車メーカーの研究・開発者を強力に支援する商品となっているとのことだ。
プラットフォームの特長は以下の通りだ。
- 約800メートル先の情報を処理できる。前方監視用8メガピクセル以上の高精細マルチカメラ、周囲監視カメラ、イメージセンサーとの複数の高速インターフェースを接続可能(VITA FMC HPC コネクターをそれぞれに用意)。
- 搭載可能なザイリンクス社製「Zynq UltraScale + MPSoC」はXCZU11EG、ZU7EVという大容量メモリーUltraRAMと外付けの広帯域 DDR4 SDRAM(w/ECC)対応のデバイス。スループットが高く、アルゴリズム開発や画像圧縮・伸張にも対応しており、広域通信対応も可能な構成となっている。
- 将来高性能ビジョンセンサ・インターフェースも考慮した、2ch x OpenLDI対応FMCコネクターを2ch実装しており、周囲環境の高解像度・高速キャプチャや後段システムへの拡張インターフェースを提供。
- ザイリンクス開発環境「reVISIONスタック」を用いて、機械学習ベースの画像認識アルゴリズムを組込み機器で容易に活用する組込み環境を提供。
- 車載インターフェースや、組込み機器との接続性を考慮し、業界標準のPCIe Gen3.0 x4 lane, USB3.0, Ethernet 10,100,1000Mbps, CAN2.0B, HDMIを複数搭載。コンパクトでありながら、拡張性の高いシステム構成となっている。
- 2つのMPSoCは完全に独立したシステム電源をもち、外付けのASIL-Dマイコンで監視されているため、故障時には故障したデバイスのみを安全に停止し、正常なデバイスで動作継続が可能。
※1:SAE Level 4-5
SAE(Society of Automotive Engineers:自動車や航空機、宇宙事業などの製品についての標準規格を提案するアメリカの非営利団体)が定義している自動走行レベル(Level0-5までの6段階に区分)で、Leve4は高度な運転自動化、Level5は完全運転自動化と定義されている。
※2:FPGA
FPGA(field-programmable gate array)は、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であり、広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種である。現場でプログラム可能なゲートアレイであることから、このように呼ばれている。
※3:Zynq UltraScale+ MPSoC(Multi-Processing System on Chip)
最大64ビットまでのプロセッサースケーラビリティを提供し、ソフトおよびハードエンジンの連携によるリアルタイム制御によって、グラフィックス、ビデオ、波形、およびパケットの処理を実行。共通するリアルタイムプロセッサとプログラマブルロジックを統合したプラットフォーム上に構築された3種類のデバイス(デュアルアプリケーションプロセッサ (CG) デバイス、クワッドアプリケーションプロセッサとGPU (EG) デバイス、ビデオコーデック(EV)デバイス) は、5Gワイヤレス、次世代ADAS、およびインダストリアルIoTなどのアプリケーションに対応。
※4:ASIL(Automotive Safety Integrity Level:安全性要求レベル)
各車載電子システムで起こり得るさまざまな障害(ハザード)を避けるのに達成しなければならない安全性のレベルを、A~Dの4段階で表現したもの。Aがいちばん低く、Dがいちばん高い。
【関連リンク】
・OKIアイディエス(OKI IDS)
・アヴネット(AVNET)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。