本稿は、本日、NVIDIAのブログ記事で発表された内容である。
「時は金なり」とすれば、路上試験による自動運転車の開発は苦難に陥っているだろう。
RAND の研究者チームによる計算では、自動運転車が人間の運転手と同レベルの精度を達成するには、110 億マイル (約 177 億 km)もの走行試験が必要になるとされている。
その観点から見ると、2016 年、カリフォルニアで自動運転車を手掛ける全企業の実績を合わせても、70万マイル (約 112 km) にしかならない。
イスラエルに拠点を置くスタートアップであり、NVIDIA の Inception プログラムのメンバーでもある Cognata は、仮想環境内での走行を可能にすることで、自動運転車の徹底したトレーニングにかかる時間を加速することを目指している。
同社は、AI、ディープラーニング、コンピューター ビジョンを組み合わせて利用して、人がハンドルを持たなくても A 地点から B 地点に連れて行ってくれる車両を開発するために、タイム マシンを想起させるものを制作した。
仮想世界での走行
自動運転車は、常に変化する環境でどのように行動すべきかを、十分な情報に基づいて合理的に判断できる必要がある。その理解を深めるには、自律システムが実際の路上で、実際の運転手の行動と実際の気象条件に基づいて走行を経験する必要がある。
多くの企業や研究者がトレーニング データを得るために路上で走行試験を行っているのはそのためだ。Cognata の仮想環境を利用すると、企業は自動運転車の試験を行う際に時間とコストを節減して、安全上の懸念を回避することができる。
そのテクノロジは、3 つの主なレイヤーに基づいている。1つ目は「静的」レイヤーだ。このレイヤーでは、コンピュータービジョンやディープラーニング アルゴリズムで地図や衛星画像のデータを利用して、実際の街のデジタル マップを 3D で自動的に生成する。
そして、Cognata が特許を取得した「TrueLife 3D Mesh」テクノロジによって、建物、道、車線、道路標識、さらには木の葉まで、都市のシミュレーションが行われる。
Cognata は、忠実度が高く、かつシミュレートされた静的レイヤー上に、トラフィックモデルの「動的」レイヤーを加える。これには、あらゆる形とサイズを持つ他の車両や、歩行者が含まれる。
その土地の過去の気象条件や光の当たり方の変化も加えられ、自律システムが膨大な量の変数を試し、テストすることが可能になる。
3 つ目は「検知」レイヤーだ。このレイヤーでは、静的レイヤーと動的レイヤーの両方を組み合わせて、シミュレートされた環境とその環境に含まれるさまざまな刺激に対して、レーダーやライダーなどのセンサーの相互作用がシミュレートされる。
これで、走行ごとに包括的な自律走行シミュレーションのフィードバックループが実現する。
他では得られない体験
その結果、Cognata のテクノロジによって、AI 運転システムは、現実世界での試験では絶対に経験できないと思われる多様なシナリオと出会い、学習することができまる。
雪が降り、道路が凍結した状況で集中的に試験を行いたい場合も、Cognata ならその環境を何マイルでも提供できる。
同社のテクノロジには、NVIDIA DGX Station が採用されている。NVIDIA DGX Station は、データセンターのディープラーニング能力を備えていながらも、きっちりと机の下に収まる AI スーパーコンピューティングワークステーションだ。
同社は DGX Station を利用してディープ ニューラルネットワークのトレーニングを行い、従来よりも 10 倍高速化した。さらに現在では、シミュレートされた環境で同時に 10 台の仮想車両を走らせることができる。
一連のカメラ、ライダーおよびレーダーのセンサーを装備した仮想車両は、1時間あたり数千マイルの走行データを生成できる。つまりこれは、Cognata が従来の手法よりも 1,000 倍高速に自律走行車のトレーニングを行うことができ、自動車業界がわずか数年で完全自動運転車を市場に投入するのに必要な検証目標を達成できるということだ。
【関連リンク】
・エヌビディア(NVIDIA)
・Cognata
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