製造業の海外進出
小泉: 現状の国内のスマートファクトリーでは生産性改善の話題が多いです。もちろん、発注がある前提ではあれば、生産性のことを考えればよいのですが、そもそも発注がなくなると生産性を改善しても仕方がない。
強みをもっと生かしていく必要があるのではないかと思っております。
木村: 私もその危機感を感じています。しかし、実際には目の前の業務が忙しかったり、なんとかなるという楽観的な考え方、また危機感を持ったからといってどうしてよいかわからないという人が多いのだと思います。
小泉: 危機感はわかるが、どうしたらよいかわからないという人になにかできることはありますか。
木村: 答えがないのですが、「自分の会社の強みがなにか」を考えてやるしかないと思います。
大抵は、その手前で止まっているという感触があります。これまで何とかなったという経験があることや、社長の高齢化なども問題になるかと思います。
小泉: 由紀精密などを見ていると、社長も若いし、どんどん企業を買収していて、宇宙や医療にこだわってどんどんビジネスを伸ばしているという例もあります。
木村: 素晴らしいですよね。ほかにできないことをやろうという考え方が素晴らしいと思います。
八子: イタリアやフランスなどのハイブランドの会社などでは、馬具から宝飾品に作るものを変えて成功しているという例もあります。マルチポートフォリオに行ってもよいはずなのに、日本だと金属加工だと金属加工しかやらないという風に、領域を決めすぎているという傾向があると思います。
どんどんピポットして強みが発揮できる領域を見つけていくべきだと思います。
また、iSTCのように、モノづくりからITまで全部できるというソリューション会社をやってはいけないという決まりはないので、自社のできることをバリューチェーン全体に伸ばしていくことが重要です。
まじめにやりすぎて、目先の守備範囲にこだわりすぎているのではないかとも感じています。
小泉: 旭鉄工からiSTCが生まれたことで、かなりのユニークな会社ができたと感じております。
そういう会社が出てくると、周りの企業も「なにかやらなきゃ」ということになるでしょう。これは一つの形です。みんながITをやるということではなく、別の形もあるということです。自分たちで商売を替えていかないとじり貧になっていくはずです。
八子: ハードウエアだけでは生きていけない時代がきているので、データに基づいたアルゴリズムで判断するということが可能なビジネスには手を出さざるを得ないと考えています。
製造業のグローバル化
小泉: 売上比率がグローバルのほうが多い製造業があるものの、全体的には日本が世界に出ていかなくてはいけないと言われています。しかし、実際には出ていないという実感があります。
先日のハノーバーメッセでも木村さんとばったりお会いしましたが、そんな場所であれば、もっといろんな人と会っていてもおかしくないと思うのです。
iSTCのように世界から引き合いを得られるようになるにはどうしたらよいと思いますか。
木村: 世界に出て行く企業が少ないのは、止める人や、やらない理由を挙げる人が多くいるからだと思います。失敗するかもしれないからやめておこうという人が多いと思います。
たとえば、iSTCのソリューションであれば年間50万円ですむわけです。失敗してもたいしたことではないと思います。どんどんやっていくことが重要だと思うのです。
そういう考え方が、結果世界に出ていかないという傾向にも表れているのだとおもいます。
例えば、アフリカで巨大なマーケットが立ち上がってくるという話がありますが、「それはいつの話だよ」となり、担当している本人からすればいつ結果が出るかわからない、となりがちです。
小泉: 実際には、アフリカにチャレンジする会社もあって、終わってみると、「単身でいってすごかった」という話はでるけど、いっている途中には、なにをやっているかという話は出ませんよね。
木村: そういう意味で、iSTCのお客様は先進的なことが好きな会社が多いです。
顧客企業の一例では、モノづくり日本大賞を取っていたり、社長が講演をしたりしている方が多いので、先進的なマインドを持っている会社にiSTCのソリューションを使っていただいているというケースが多いなと感じていて、経営者のマインドが重要だなと思います。

八子: 日本企業は、「困っている企業」と「困っていない企業」に2分していると思います。
設備産業系は好景気になっている。その状態で、もっと作ってくれと言われている一方で、投資はしたくないから生産性改善に走った会社もあれば、ラインを増産する投資をして人を増員する会社もあります。
それが、将来のことを考えていることなのか、それとも、目先のニーズに対応するためにやっているのか、ということまで考えている会社が少ないことが問題なのだと思います。
世界の展示会で、現地に日本人があまりいないのは、増産に忙しくて、行くことができないという状況もあるのだと思います。
もっと将来性を見据えて新しいことに取り組んだり、ビジネスモデルの転換を考えたりするためには、そうした情報収集はもちろんのこと、直接商談を行う視点をもった経営者や中堅幹部などが、現地に赴く必要があるのだと思います。
小泉: 本日はありがとうございました。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。