ビジネス環境の変化認識と事業展開の積極性や業績・投資等との関係
日本の製造業における、足下の状況認識としては、以下の傾向がある。
まず、冒頭の円グラフにあるように、ビジネス環境に関して、半数超の企業が今後大きな変化があると見込んでいる。
この傾向を産業分野別に見てみると、特に輸送用機械分野でこの傾向が強く出ている。
さらに、大きな変化を見込む企業ほど、営業利益が増大すると見込んでいるようだ。
また、大きな変化を見込む企業は、足元の業績や今後3年間の営業利益見通しを良好としている。
さらに、大きな変化を見込む企業は、設備等投資意欲も高く、積極的な経営姿勢であることがうかがえる。
(2018年ものづくり白書「概要」より抜粋)
INSIGHT
一般的に、ビジネス環境の変化があれば、追い風の場合もあれば、逆風の場合もある。そういう意味では、ビジネス環境の変化歓迎し、営業利益の見通しも良好と考えられるかどうかはわからない。
一方で、このアンケートに回答した企業には、ビジネス環境の変化をポジティブに捉えている企業と、ネガティブに感じている企業の両方が含まれていると考えられる。
輸送用機械や電気機械の業界のように、変化をポジティブに捉えている業界ではビジネスチャンスだと考えていて、逆にネガティブに感じる企業が多いのが化学工場なのだと読み取れる。
今後3年間の国内営業利益見通しと他の図表の相関を見ると、上2つの「大規模な変化が見込まれる」「これまでよりは大きな変化が見込まれる」と考える企業は、変化をチャンスと考えているので、営業利益を増やせると見込んでいる。一方で、変化を嫌う企業は「これまでと同程度の変化を見込む」ことを願っていながらも、当然利益は増えないとダメだと考えているだろう。
ここで、輸送用機械や電気機械は、製品サイクルが短いので新しい事業や取り組みに積極的となりやすい。
これに対して化学工場などは、設備産業で設備更新サイクルが長い産業(工場設備は稼働30~40年でも現役)とえいる。その結果、化学工場などにおいては、10年程度では設備の一部更新は出来ない(やらない、やりたくない)ことから、「変化」は「リスク」だと考えることになる。
化学工場は、今後3年間で設備投資(新設、改修)をしても、すぐに投資回収出来ないので、「変化して欲しくない、チャンスというよりリスク」ととらえ、利益の回収にはもっと時間が掛かるはずだ、と感じているはずだ。
このようにして、投資回収のスパンを考慮し、ネガティブ派とポジティブ派を分けて分析すると、意識のギャップがさらにクリアになるのだ。
(IoTNEWS製造領域エバンジェリスト 鍋野)
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。