ハノーバーメッセレポートの第六弾はシーメンスについてだ。
昨年Ver3をリリースしたMindsphereだが、国内ではどのくらい広まっているのだろうか。
まず、今年のシーメンスのMindsphereブースだが、「パートナー・エコシステム」という考え方が大きく打ち出されていた。
Mindsphereは、「IoTのOS」を標ぼうしているので、AWSやAzureといった様々なプラットフォーム上で動く必要があるし、その上では多くの他社製のアプリケーションが動かなければならない。
ところで、シーメンスは、「Connect & Monitor」「Analyze & Predict」「Digitalize & Transform」と製造業におけるIoTを3つのステップで区別している。
まずは、つなげるというフェーズ、そして、分析及び予測、最後が、デジタルツインを完成しビジネスモデルも変えていくというステップだ。
「可視化の先にあるもの」という意味では、第三ステップがこれに当たるが、展示ではSKFという軸受けモーターのサプライヤーのビジネスが紹介されていた。
個々の部品にセンサーを取り付け、Mindsphereにつなげることで故障予測が実現できるため、顧客に対するメンテナンス計画を事前に立てることができるというもので、「予知保全をサプライヤー側が利用した新しいサービス」という位置づけとなる。
このような単なる「モノ売り」からの脱却した事例は、「まだそれほど多くはない」ということだ。
現在、Mindsphereに乗るアプリケーションとしては、様々なパートナー企業の分析系のアプリケーションが乗ってきているということだが、その中でも、「ブレインキューブ」という企業の分析モジュールは、単にMindsphere上にアプリケーションを展開するだけでなく、シーメンス製のPLCへのAIモジュール搭載にも一役買っているのだという。
このエッジデバイスへのAI搭載については、現状Mindsphereからのデプロイはできないということだが、近々Dockerを使ったコンテナベースでのデプロイも可能となるということだ。
日本企業でもMindSphere対応アプリを作っている企業があり、数か月後にはリリースも予定されているということだ。
フォルクスワーゲンがIoTクラウドにMindsphereを採用
ハノーバーメッセの期間で発表された大きなニュースとしては、フォルクスワーゲンが、自社の工場をMindsphereをつかってつないだというものがある。
1年間で20-30の工場をつなぎ最終的にはすべての工場を接続、さらには自社の工場だけでなくサプライやーもつないでいくということを実現していくのだ。
シーメンス デジタルファクトリー/プロセス&ドライブ事本部の角田裕也氏によると、「国内では、2018年は多くの大企業が調査をしていて、接続検証を始めている状況。2019年は方向性を決めていく企業がふえてきて、2020年には導入してみた結果がでてくる」という流れがあるという。
以前より課題となっていた、製造現場のデータをクラウド上で管理するということについても、「IT部門がMindsphereについて、自社のセキュリティ・ガイドラインに準拠しているかをチェックして、問題がなければクラウドでもデータ収集可能となってきている」ということだ。
つまり、企業による温度差はあるものの、「データ収集はエッジでないといけない」という状況ではなくなってきているように見える。
「エッジ側のソリューションを提供する企業が生産技術の担当者と話す一方で、シーメンスはIT部門と話している。IT部門を巻き込んだ、工場全体のインフラとしてMindshpereを利用する」アプローチをとっているのだと角田氏はいう。
本来価格も安いMindsphereの良さは中小企業で生きる、しかし、よほど先進的な経営者でなければ「大企業のやっていることを真似しよう」と考える傾向もあるため、現状では大企業中心の導入となっているようだ。
角田氏は、「産業領域としては、まず自動車産業で方向性が決められて、電気系が追い、現在はフードビバレッジ系で検討が始まっているという状況」だと述べた。
シーメンスFA CEO Ralf-Michael Franke氏へのインタビュー
シーメンスのFactory Automation CEOであるRalf-Michael Franke氏に直接お話を伺う機会があった。(以下意訳)
小泉: シーメンスは、「Connect & Monitor」「Analyze & Predict」「Digitalize & Transform」の3つのステップを提示されているが、ドイツでは3つ目のステップを実現できてる企業はあるのでしょうか。
フランケ氏: 日本とドイツであまり差はないと思います。ただし、「攻めのデジタル利用」と「守りのデジタル利用」という考え方があって、3つ目のステップは「攻め」となります。私は、自社の顧客に対しては、「守りではいけない」「デジタライゼーションやアナリティクスが今後の強みなります」と説明しております。
小泉: Field Systemのようなエッジでの制御プラットフォームについてどう思われていますか。
フランケ氏: 非常に答えるのが難しい質問です。アプリケーションの数だけ異なる答えがあるからです。顧客の環境では異なるレベルでのオートメーションが実現されていて、利用すべきテクノロジーの利用もバラエティに富んでいるからです。
現在、AmazonやMicrosoftといったITプレーヤーも存在する中、製造業におけるオートメーションの市場の重要性は増すばかりで、シーメンスのような典型的なオートメーション企業はディスラプテション(破壊的イノベーション)をスタートしています。
トヨタのような企業は生産性をよくするための取り組みを進めていて、新しい技術を取り込もうとしています。これは大きな変化であり、数年後ITテクノロジーとの融合が見えてくるでしょう。
小泉: ありがとございました。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。