平成の苦しい時期を駆け抜けた製造業 ーものづくり白書2019

製造業は平成に入ってから、バブルの崩壊や世界金融危機、中国をはじめとする新興国の成長や、1995年頃や2008年頃に起きた急速な円高方向への動き等、我が国製造業を取り巻く事業環境は悪化し、厳しい時代が続いた。

さらに就業構造の変化や若者のものづくり離れ、熟練技能者の高齢化や生産拠点の海外移転等による産業空洞化といった課題もある。

しかし日本の経済成長の歴史を見ると製造業が果たしてきた役割は一貫して大きく、明治期には繊維産業が経済の基礎作りに大きく貢献したほか、第二次世界大戦後は、造船、鉄鋼、電気機械、自動車など様々な製造業が次々と成長し、我が国の経済成長を支えてきた。

[p5-1]業種別GDP構成比の変化
ここでいうサービス業とは、「宿泊・飲食サービス業」「専門、科学技術、業務支援サービス業」「公務」「教育」「保健衛生・社会事業」「その他サービス業」とする

製造業のGDP構成比は平成に入ってから徐々に減少し、2009年には19.1%まで低下したものの、足下では20.7%まで回復している。そして業種別GDP構成比を見ても、依然としてGDPの2割以上を占め、大きな役割を担っている。

第一期:バブル崩壊まで

内需が低迷しデフレが進行する厳しい時代、日本の製造業はコスト削減努力などを通じて収益を改善させたが、利益の相当部分は財務体質 改善のための債務返済に充てられた時代だった。

「就業構造の変化」、「海外地域における工業化の進展に伴う競争条件変化」、「若者のものづくり離れ」、「熟練技能者の高齢化」といった課題認識の下、現状や展望を分析し、研究開発の促進や、大学との連携の重要性が語られていた。

第二期:小泉改革からリーマンショックまで

小泉政権時代を通じて景気は回復に向かい、景気拡大の期間は73か月を記録。日本の製造業は物価が緩やかなデフレ状況にある中でも生産や収益を回復させ、企業債務や過剰設備といったバブル期以降の負の遺産を解消し、新たな展開に向けた基盤整理を進めた。しかし、2008 年後半より米国の金融危機に端を発した景気後退(リーマンショック)の影響により、幅広い業種において生産活動が大幅に低下する深刻な状況となった。

海外での旺盛な需要拡大や設備投資の回復を背景として、日本の製造業の海外展開状況や国内拠点の強化、IT投資による生産性向上が必要だと述べられている。

リーマンショック後は、不況期にこそ設備投資を積極的に行うことの効果を述べ、世界的な景気後退下での国際分業戦略の重要性
があるとしていた。

第三期:リーマンショック後からアベノミクスまで

2009 年春頃より徐々にリーマンショックの影響からの持ち直しが見られていたものの、2011 年3月、東日本大震災が発生すると、その影響により自動車製造でのサプライチェーンの途絶による長期にわたる生産停止や、電力供給の不安定化が生じ、特に輸送機械工業において記録的な落ち込みとなった。さらにタイの洪水なども発生し、世界全体の製造環境が変化した、

2013年以降は、安倍内閣の経済政策(アベノミクス)の効果があらわれはじめ、企業収益や賃金引き上げなどの好循環が生まれた。

デジタル化、モジュール化がすすみ、特に自動車産業では従来のピラミッド構造からグローバルサプライチェーンを意識したビジネスモデルの再構築が必要となってきた。
(参考:ものづくり白書2019)

INSIGHT

先日リリースされたものづくり白書2019年度版。冒頭、平成の製造業を振り返り、その浮き沈みを浮き彫りにしている。

度重なる大きな外部要因を乗り越えてきた製造業。現在米中貿易摩擦でスマートフォン部品などを中心に問題が発生している状況だが、GDPに締める製造業の割合も20%を超えている現状、早期の対応が必要になる。

グローバルサプライチェーンが広がる中、日本だけの都合で産業を上向かせることは難しい。2019年版のものづくり白書を通して、今後日本の製造業がどうあるべきかを浮き彫りにしてしていきたい。

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