2019年9月4日~6日、横浜にて高精度・難加工技術展が開催された。これは製造業における高度な加工技術とその関連機器を展示するイベントである。難易度の高い加工に特化したものづくり関連の展示会は珍しい。
会場内では微細な加工を実現する技術として、3Dプリンタの展示が多く見られた。その中でも別領域で得た技術を活かした装置や、造形方法の工夫によって他社にはない強みをアピールするプリンタに本記事では注目した。
半導体事業のノウハウを活かす光加工機
ニコンが展示していたのは、光加工機「Lasermeister 100A」である。「Lasermeister 100A」は2019年4月に発売された、レーザーによる様々な金属加工を高精度に行うための機械である。3Dプリンタの造形技術を有しており、3D測定によって対象を座標化し、付加積層造形を行うことができる。
「Lasermeister 100A」の特徴はニコンが半導体事業で培ってきた、半導体露光装置の技術を高精度加工に応用した点にある。半導体露光装置とは、複雑で微細な電子回路のパターンを描いたフォトマスク(ガラス乾板)を、極めて高性能なレンズで縮小して、シリコンウェハと呼ばれるシリコンの板に焼き付ける装置のことだ。
この細かな回路パターンを転写するための光利用技術と精密制御技術を、難度の高い金属加工に応用したのが「Lasermeister 100A」だという。半導体事業で蓄積したノウハウを、3D造形技術という別の事業領域で活用した点が「Lasermeister 100A」の特長だと言える。
ブースでは現在開発中の超短パルスレーザーによる高精度な除去加工(金属を削って加工する方法)ができる「Lasermeister 100A」第2弾も展示されていた。

第2弾の特徴は3D計測と加工を自動的に繰り返す機能。このフィードバック機能によって、サブマイクロメートルレベルまで平面を揃える加工を行うことができるという。
ニコンはイベント内でブースでの展示以外にも無料セミナーを開催。ニコン・次世代プロジェクト本部の江上茂樹氏が登壇し、「Lasermeister 100A」の性能や開発中の第二弾を使って試作した金属加工の例を紹介した。トップ画像は、ブース内に展示されていた共通平面加工の例である。
LCD方式で時間短縮を図る3Dプリンタ
3Dプリンタ製品「FAST System」シリーズを提供するエフティ・ファインテックプロダクトは、LCD方式の光造形3Dプリンタ「FAST System Pro Series FS-240LCD」を展示していた。

LCD(Liquid Crystal Display)方式とは、液晶パネルとLEDを利用した技術。紫外線で硬化する液体樹脂の入ったタンク下に液晶パネルが入っており、その画面に映像を映し出しLEDを照射して樹脂を硬化させることで造形を行う、というのが「FAST System Pro Series FS-240LCD」の仕組みである。
これは熱溶解積層法(主に熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、積み上げてモデルを造形)に比べ、一度に樹脂を露光し硬化させるために造形時間の短縮が出来る、というメリットがあるそうだ。一括露光による造形を活かし、積層法による造形との差別化を図った点が「FAST System Pro Series FS-240LCD」の特長である。
「FAST System Pro Series FS-240LCD」は最大250℃まで耐えられるため、高温による処理を必要とする加工が出来ることも特長の1つだという。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。