日本では、労働力不足が深刻化する中、将来の競争力強化に向けて、効率的な設備保全の実現が課題の1つとして挙げられる。従来の設備故障の兆候検知は、定期検査で、高速フーリエ変換(FFT※1)やウェーブレット変換(※2)といった従来技術や、熟練技術者の聴覚や触覚などの感覚的なノウハウに頼って行われてきた。
しかし、定期検査では、故障の兆候が発生してから検知するまで時間があき、現場でのすばやい兆候検知に至らない場合がある。また、従来技術では複雑な設備状態の認識は難しく、熟練技術者のノウハウは次代を担う人材への技術継承が困難となっている。
これらの課題に着目し、沖電気工業株式会社(以下、OKI)は、昨年10月に販売を開始した波形解析ソフトウェアライブラリー「ForeWave」に、振動や音響といった波形データをリアルタイムにエッジ領域でAI解析する商品メニューとして「ForeWave for AE2100」を追加し、11月30日から販売を開始する。
同商品は、振動や音響といった波形データをエッジ領域でリアルタイム解析し、設備などの異常兆候を検知するソフトウェアだ。これにより、設備故障による振動や音響の変化をいち早く検知し、管理者、現場オペレーター、保全技術者などにリアルタイムに通知することができる。特長は以下の通り。
- 音響データ解析に対応
従来「ForeWave」が対応してきた振動データに加え、新たに音響データにも対応。指向性のあるマイクなどを利用し、振動センサーの取り付けが難しい高温部や湾曲部の異常検知にも対応する。 - 高いレスポンス要望に応えるエッジ活用
サンプリング周波数50kHzまでという高い周波数帯の振動や音響のデータ検知および解析に対応。これは、熟練技術者の聴覚による故障兆候の検知に匹敵するレベルだ。ここで発生する大量のデータはエッジ領域でリアルタイムにAI解析され、高いレスポンスで正確な検知を実現する。 - データ収集からAI解析・見える化までのオールインワン提供
「ForeWave for AE2100」により、波形データの取り込みから解析、判別結果の表示まで、振動や音響のデータ解析に必要な一連の機能を「AE2100」へ搭載することができる。
また、「ForeWave for AE2100」は、顧客設備への適用条件や精度を検証し、異常の閾値となる判別モデル(※3)を作成するモデル生成サービス、およびシステム導入後の運用を支援するキットなど、従来の「ForeWave」の商品メニューと組み合わせて導入するサービスやソフトウェアをラインナップしている。
一般的なAI解析技術では、対象設備や検知したい異常ごとに、解析手法そのものと、異常の閾値となる判別モデルを準備する必要があるが、「ForeWave for AE2100」は、解析手法として、機械学習をベースにしたOKI独自の波形データ解析向けAI解析技術(※4)を搭載しており、判別モデルの入れ替えだけで、さまざまな設備の異常兆候検知に利用できる。
「ForeWave for AE2100」の販売標準価格は、800,000円(税抜)からだ。「AE2100」および関連するハードウェアは別売りとなる。
※1 単位時間あたりの時系列信号を、高速で周波数成分に変換する符号化アルゴリズム。
※2 時系列信号を、周波数成分に変換する符号化アルゴリズムで、時間的変化も同時に抽出できるアルゴリズム。
※3 正常と異常を区別する閾値が格納されたファイルで、「ForeWave for AE2100」の導入に必須のコンポーネント。モデル生成サービスや、運用支援キットの利用により生成する。
※4 「非負値行列因子分解」と「機械学習」を組み合わせた、OKI独自の高パフォーマンスなアルゴリズム。
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