製造大国から製造強国へ 中国の掲げる中国製造2025とは

2011年、ドイツが「インダストリー4.0」を打ち出し、2014年はアメリカがIoT関連技術の標準化団体である「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」を設立した。

そして、中国が2015年に「中国製造2025」を発表、次いで、2017年に日本が「Connected Industries」を公表する。

これらは一見似たような政策にみえるが、中国の製造業と、アメリカ・日本・ドイツの製造業は背景が大きく異なるということに注意したい。

本記事では、中国の製造業の現状と課題に簡単に触れて、中国製造2025を打ち出した中国の狙いを整理する。

製造大国の課題

中国は安い労働力を武器に「世界の工場」となり、製造業を発展させてきた。そして、現在では、中国の製造業の付加価値額はドイツ、日本、アメリカを抜き去り、トップとなった。

中国製造2025工業付加価値
THE WORLD BANK 2017年Manufacturing, value addedデータより日立製作所が作成。2014年,2015年の中国の数字は,中国国家統計局の公開データより日立製作所が計算・作成。

しかし、経産省の資料によれば、4カ国の「1人あたりの労働生産性」では、中国は最も低い生産性を示している。

中国製造2025労働生産性

つまり、中国の製造業はアメリカ、日本、ドイツの製造業と比べて人手に頼った労働集約型の産業となっており、効率的な生産方式という点では、他国に後塵を拝しているということがわかる。

また、中国の賃金は上昇している状況にあるため、これまで武器としていた安い人件費を競争優位性の源泉とし続けることに限界が訪れている。

したがって、このまま脆弱な生産方式を取り続けると国際的な競争力を失いかねない。

そこで、中国はIoT、AIなど次世代情報技術と製造業を融合させることで、製造大国から製造強国へ転換することをスローガンとした経済政策「中国製造2025」を打ち出したのである。

中国製造2025のゴールは2049年

中国製造2025は段階的に製造強国(アメリカ・日本・ドイツ)のトップグループに仲間入りすることを目指している。

それまでは以下の通りのステップを踏む。

  1. 2025年までに製造強国のグループに入る。
  2. 2035年までに製造強国のグループの中堅ポジションに到達する。
  3. 2049年までに製造強国のグループのトップに到達する。

なお、2049年は中華人民共和国建国100周年の年だ。

中国製造2025のミッション

中国製造2025に盛り込まれた戦略任務をかいつまんで紹介したい。

  1. 製造業のイノベーション力向上
  2. 国家のイノベーション体系を整備するため、製造業イノベーションセンターという研究基地を2020年までに15箇所、2025年までに40箇所設立する。

  3. 情報化と工業化の一層の融合
  4. 製造業に次世代情報技術を取り入れ、インテリジェント化を進める。IoTの研究開発も行う。2025年までに製造業の重点分野において、インテリジェント化を全面的に行い、実証プロジェクトの運営コスト50%低減、製品のリードタイムを50%短縮、不良品の割合50%低減を実現する。

  5. 工業基盤強化
  6. 中国の製造業を発展させるにおいて、制約要因となる基礎部品、基礎工程、基礎材料、基礎技術の改善に取り組む。2020年までには基礎部品および基礎材料の国内自給率40%を目指し、外国の影響を受けづらくする。2025年までには自給率70%を実現するとしている。

  7. 品質・ブランドの強化
  8. 品質管理の技術を引き上げ、製造業の大幅な品質向上に務める。また、独自の知的財産権を有するブランド製品を確立する。品質ブラックリスト制度というものを設立し、品質基準違反や偽ブランドがあれば、取り締まりし、処罰を行う。

  9. グリーン製造の推進
  10. 低炭素化・循環化・集約化を推進し、製造業における資源利用効率を引き上げる。また、鉄鋼や非鉄金属、化学、建材、軽工業、プリントなどの伝統的製造業の改造を全面的に進める。

  11. 重点分野での飛躍的進歩
  12. 戦略的に重要な分野を定める。重点分野である10分野はつぎのとおり。次世代情報技術、航空・宇宙設備・先進軌道交通設備、電力設備、新素材、CNC工作機械・ロボット、海洋工程設備・ハイテク船舶、省エネ・新エネ自動車、農業設備、バイオ医薬・高性能医薬機器。

  13. 製造業の構造調整の推進
  14. 生産過剰問題の解決を進める。たとえば、生産力の過剰が深刻な産業に対しては、監視を強化する。また、革新的な競争力を持った企業集団を育成し、イノベーションの活力を引き出す。

  15. サービス製造と生産型サービスの振興
  16. 生産型製造からサービス型製造への転換を促進する。政府は製造業企業がサービスチェーンを拡張し、製品の提供からサービスの提供へ転換することを誘導、支持する。

  17. 製造業の国際化レベル向上
  18. 国際協力を強化する。たとえば、海外の企業や研究機関が中国に研究開発機関を設立することを奨励する。また、企業が海外で合併・買収を実施し、グローバル産業チェーン体系を構築、国際的な経営能力とサービスレベルの向上を図ることを支援する。

中国製造2025が発表されたのは2015年で、それから4年が経過している今、アメリカは中国のハイテク製造業をターゲットに排除を行っている。

これは2015年当時、予想し得なかった事態と思われる。

そのため中国製造2025は計画の修正を行う必要があるかもしれない。しかし、注目したいのは中国製造2025は中長期にわたる、具体かつ明確な国家戦略であるということだ。

仮に中国の製造業が「中国製造2025」を実現すれば、量と質どちらも備えることとなり、これまで以上に驚異的な存在となる。

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