生産計画の適正化・自動化
「簡易デジタルデータ活用システム」の説明後、今度はさらにもう一段階ステップを上げて生産計画の適正化・自動化について紹介があった。
まず講演では「生産計画案の難易度が年々高まっている」ことが指摘された。大量生産から少量多品種へと切り替わる一方で、大元の基幹システムから落ちてきた1日の生産計画を原料の残量、前日の生産状況、バッファの状況、作業員の配置状況やスキルなどを考えあわせ、アナログで生産する指示を組み替えることは困難になりつつあるというのだ。

効率のいい生産計画の作成がしたい、生産計画の修正・更新にかかる時間を減らしたい、とう課題にどう答えるのか。そこで貴田氏は「シミュレーションソフトを使い、生産計画の適正化を図って、現場にフィードバックをする実例に多く関わっている」ことに触れる。
つまり、生産計画のデータと各工程のデータをミックスさせて生産計画を立て、この計画をシミュレーションで実行し、その生産計画で期待通りのスループットが出て、期待通りの生産量が上がるのかどうか検証した上で現場に導入する、という仕組みが実践されているということだ。
このシミュレーションソフトは可能性のある組み合わせのロジックを回し、その中で一番スコアが良いものを回答する最適化機能が付いているという。その機能を使って、様々な組み合わせをシミュレーションし、最適解を出してフィードバックするそうだ。
また、このシミュレーションソフトは当然データがあればあるほど生産計画の精度は高まっていく。作った計画に対してシュミレーションモデルを回すだけではなく、リアルタイムで電力・資材・原料・設備の状態をデータとして収集することで、シミュレーションモデルのなかに入れるパラメータがどんどん現場に即したものになり、出される解が正解へと近づくそうだ。
振動予知保全システム「Siluro(シルーロ)」
最後に講演内で紹介されたのは、菓子製造会社に導入された振動予知保全システム「Siluro(シルーロ)」の実例だ。
これは簡単に言うと「センサーを取り付け、AIボックスを取り付けて「そろそろ壊れます」という信号を受ける」というシステムだそうだ。
ポイントは振動とジャイロ、2つの種類のセンサーを採用したことだという。XYZの直線方向の振動だけではなく、それぞれのXYZの回転方向の軸、合わせて六軸のセンサーを設定することでもれなく予知を掴むそうだ。
ただ振動の量、強さだけで判断することは出来ない。まずは周波数分析をして、どの周波数の振動帯を見れば良いのかを決めなければならず、その部分については人間が行う。そして決まったポイントに対してどのように監視をしていくのか、という部分にAIを使うそうだ。
しかしディープラーニングによって正常なデータから壊れたときのデータまでを大量に集めて覚えこませていくのは費用がかかる。そこでFAプロダクツでは正常値の値だけ覚えこませて、そこから判断が出来るようにすることで現場にシステムを素早く導入できる様にしたそうだ。
この予知保全の事例で一番多いのはポンプやモーターとのこと。食品業界だと包装機などに多いそうだ。センサーの取り付けについては大きな制約はなく、テープでくっ付けてしまうものもあるという。
最後に貴田氏は「IoT化はパッケージを活用したスモールスタートから初めて、そこから大きく育てていくこと。そして横展開がしやすいツールを選ぶこと重要だ」と述べて講演を締めくくった。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。