2020年2月7日、ビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)はVR学習システム「mcframe MOTION VR-learning」における、HTC NIPPON(以下、HTC)との協業を発表した。
人の動きに着目したVR学習システム
B-EN-Gの提供する「mcframe MOTION」シリーズは、製造現場における人の動きのデータを収集し、戦略層・管理層での意思決定に活用する事を目的としたソリューション群である。
B-EN-G デジタルサービス本部 志村健二氏は「製造業の戦略層・管理層における意思決定を行うためのデータは、実行層である現場にある。しかし、人の動きの情報については置き去りにされたままである。したがって、意思決定のための正しいデータが集まっていない」と、人の動きのデータに着目した理由について説明した。
「mcframe MOTION VR-learning」は、その「mcframe MOTION」シリーズの1つ。VR(バーチャルリアリティ)を使って、作業者の訓練や教育を行うというソリューションだ。
ユーザーは360度カメラを使うことで、現場の状況を簡単にVR素材として撮影することができる。そして、VR化したデータに指導コメントなどを加える事で、作業訓練・教育のための教材を作成する。
作業者はヘッドマウントディスプレイを装着し、VR教材を通して、ベテラン作業員の動きを疑似体験し、作業の訓練・学習を行う。
視線分析で作業者の訓練・教育を行う
今回の協業によって、「mcframe MOTION VR-learning」がHTC提供のヘッドマウントディスプレイ「VIVE Pro Eye」に対応することとなった。
「VIVE Pro Eye」の大きな特徴は、ユーザーの視線を分析できる事だ。この機能は、単に視線の動きを確認できるだけではなく、ヒートマップの感覚でユーザーがどの部分を重点的に見ているのか、という事がチェックできるという。
この視線分析によって、製造現場における作業手順の訓練を、よりクリアに、かつ効率的に出来るようになる。
例えば、ユーザーの視線の動きを動画データとして記録する。そのデータを再生し、視線の動きを確認する事によって、正確に作業手順を追うことが出来たのか、という事をチェックできる。また、動画データを使うことでベテランと新人の目の動きを比較する事もできるそうだ。
会見内では、実際に「mcframe MOTION VR-learning」によるデモンストレーションが行われた。
視線の動きで作業手順をチェック
デモンストレーションで映し出されたVR教材は、B-EN-G本社ビル地下の状況をVR化し、その設備の点検作業を想定したものだ。
ユーザーは「VIVE Pro Eye」内の映像に表示されている「トレーニング」というアイコンを選択し、教材によるトレーニングを開始する。トレーニングがスタートすると、確認すべき箇所に上記写真のようなダイアログが現れる。ユーザーは、このダイアログの指示に沿って確認のトレーニングを進めていく。
写真に見える緑の点がコントローラーのポインター、赤い線がユーザーの視線の動きだ。ユーザーは確認箇所にコントローラーのポインターを合わせて、スイッチを押す。確認が完了すると、その箇所が黄色い枠で囲われる。
トレーニングが終わると、教材内のチェック項目が一覧となって表示される。そして、トレーニングにおいて視線や行動を取得した動画データを再生すると、正しい作業手順を踏むことができたのかを確認することができる。
また、今回のデモンストレーションでは、非常用の発電機の点検作業を学習するVR教材も映し出された。このVR教材では、ベテラン作業員が新人に作業を指導する様子が収められていた。つまり、ユーザーはこのVR教材を利用することで、ベテラン作業員によるOJT指導を受けるように、作業訓練を行うことができるのだ。
現実世界のOJTは、ベテラン作業員の空き時間にしか行えないなど、トレーニングできるタイミングが限られてしまう問題がある。また、新人がベテランに対して質問がしづらい、といったコミュニケーションの障壁もある。しかしVR教材を使えば、そうした問題に悩むことなく、すぐに新人教育に着手できるという。
海外販路の拡大、法人のVR活用促進を目指す
なお、今回の協業によって、B-EN-Gは
- アジアパシフィック地域における販路の拡大
- 法人のVRソリューション活用促進
を目指しているという。
B-EN-Gは、グローバルにヘッドマウントディスプレイを展開するHTCの販売体制・サポート体制を活用し、海外販路を拡大する。
法人向けVRソリューション活用の促進について、HTC 代表取締役社長 児島全克氏は「360度カメラで撮影すれば簡単に教材を作れる「mcframe MOTION VR-learning」を提供する事で、法人におけるVRソリューション導入のハードルをより下げていきたい」と語った。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。