従来、生産ラインの生産性改善において、製造装置や棚などのレイアウトと製品の流れが最適になるよう、レイアウトと製品の流れを個別に設計していた。これにより、レイアウトと製品の流れを実際に組み合わせてみると、必要な作業エリアが抜けていた、工程間に長い経路ができていた、工程間の経路が交差していた、などの問題が発生することがあり、これらの修正に手間がかかっていた。
また、複数の改善案の比較検討に必要となる生産量は、勘や経験に基づいて算出しており、作業時間のばらつきや時間帯ごとの作業効率の変化が大きく、高精度に算出することが困難となっていた。高い精度を求めてシミュレーターを利用する場合には、作業時間のばらつきや時間帯による作業効率の変化を踏まえた生産ラインの製品の流れと各工程の時間の設定に多くの手間がか
かっていた。
このような中、三菱電機株式会社は、生産現場の改善活動を効率化する「生産ライン改善支援技術」を開発した。同技術の特長は以下の通り。
- 生産ラインのレイアウトと製品の流れの統合設計により、改善案の導出を効率化
生産ラインのレイアウトと製品の流れを統合設計することで、個別設計では気づかない矛盾や修正の手間を削減し、生産ラインの改善案を効率よく導出できる。また、レイアウト・製品の流れ、運搬速度などのデータから算出したDI分析(※)結果など、生産ラインの良否判断に用いる情報を分かりやすく可視化して、改善検討作業の質を向上する。 - AIを活用し改善案における生産量を高精度・高効率に算出
生産ラインの各工程で計測した作業時間から、同社AI技術「Maisart」を用いて作業時間のばらつきや時間帯による作業効率の変化を分析し、生産量算出用データを生成する。このデータを用いて、改善案における生産量を90%以上の精度で算出する。また、生成したデータと設計したレイアウト・製品の流れをシミュレーターに自動反映することで、改善検討者の勘や経験に基づき人手作業で行うシミュレーターの設定を自動化し、複数の改善案の比較検討作業を効率化する。
同技術により、生産現場の改善検討工数を従来の2分の1に削減し、勘や経験に頼らない安定した改善検討を実現し、生産現場の生産性向上に貢献する。
なお、同技術は早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科 吉本一穂教授および研究室の協力を得て開発された。
今後、同社の生産現場へ試験導入し、実用化を目指す。また、作業分析ソリューション「骨紋」と併せた、生産工程における監視・分析・改善ツールとして実用化するために、さらに開発を進めるとした。
※Distance-Intensity分析の略。運搬物の重量と距離の関係を図示し、レイアウトを評価する分析方法。
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