本記事は、アドバンテック株式会社の協力のもと制作しております。
その1で紹介したゴム工場、本稿では、タイヤ工場での加硫工程の課題と解決方法について紹介する。
加硫工程のポイント
加硫工程では、上流の成型工程である程度の形状が作られた状態の仕掛品に対し加工を行う。
金属の型に入れて熱と圧力を掛けながら化学反応をさせることで、滑り止め用の溝などの最終形状を作り込み、弾性や強度といったような実運用に耐えられる特性を付与するための工程である。
加硫工程では、大きく2つ気をつけるべきポイントがある。
設備を複数台管理する必要がある
加硫工程では、生産する製品の厚みや形状に応じて加硫条件が決まる。タイヤが大きくなるとその分加硫を行う時間は長くなる。大きなものだと、1日掛けて加硫を行うタイヤもあるという。
工場では1日の計画生産数は決まっていて、生産計画を達成するために様々な工夫を行っている。
例えば、3000本のタイヤを24時間で生産する必要がある時、単純計算で1時間で125本生産する必要がある。30秒で1本以上作るペースだ。
しかし、加硫工程のように、1つの工程で時間がかかることがわかっている場合、設備を複数台設置し対応する必要がある。例えば、タイヤ1本が加硫工程を完了するのに1時間かかる場合、30秒に1本タイヤを作成していくためには、120台の加硫機が必要になる。
こうした複数台の設備を同時に動かす場合、設備を動かすオペレーターや装置の保全状態を管理する担当者は、通常、1人で何台かの設備を担当している。そうすると各設備の稼働状態を一度に把握したいというニーズがあるが、老朽化した設備では、設備をコントロールするためのユーザーインターフェースは付いていても、リアルタイムの稼働管理ができていないケースがある。
硫黄を使用する
加硫工程では、加硫剤として硫黄を使用することが多い。硫黄を使用し化学反応をさせた結果、現場には硫化水素が発生する。
硫化水素には、金属と反応し腐食させる特性がある。加硫工程で基板が腐食してしまうと、通電が起きてしまい基板が壊れてしまい設備が故障してしまうリスクがある。
そのため、加硫工程で使用する機器は硫化水素対策を行っているものを選定する必要がある。
ポイントへの対応方法
では加硫工程のこのようなポイントにどの様に対応すべきだろうか。
複数台設備の管理にはデータを収集し稼働を可視化する
複数台の設備を一度に管理するためには、それぞれの設備からデータを収集し、稼働状況を可視化する必要がある。
SCADAなどのソフトを使用しPLCからデータを取得したり、外付けのセンサーを設置しデータを収集したりするなど、稼働状況を可視化するために必要なデータを収集する。
稼働状況を可視化する時によく使用されるのは、OEEを算出する方法だ。OEEは、設備総合効率と呼ばれ、可動率、性能稼働率、良品率というデータを掛け合わせることで算出できる。
しかし、いきなりOEEを独自で算出することは難しい。BIツールやSRPなどを使用し、データを集めてきたら簡単に可視化できて確認できるようにすることも重要だ。
※SRPとは、アドバンテックが用意する現場に必要なソフトウェアが一体になったパッケージのことである。SRPを購入することで、設定済みのソフトウェアを利用してデータを可視化することができる。
硫化水素対策がされた機器を使用する
硫化水素から設備を守るためには、設備メーカーが硫化水素対策を行っている機器を使用する必要がある。
一般的な硫化水素対策として、基板をエポキシ樹脂などでコーティングするという方法がある。コーティングを行うことで空気中の硫化水素と基板上の金属が反応しなくなる。
アドバンテック製品を用いた加硫工程全体の管理方法

WebAccess/SCADAを使用することで、設備の稼働を監視することができる。
WebAccess/SCADAはPC上で利用することができる。従来のSCADA同様、PLCからのデータやセンサーのデータなどを収集することができる。また、収集したデータを保管し可視化ツールを使用して可視化するということも可能だ。
WebAccess/SCADAを使用することで、多数ある加硫機を、数台を1セットとしてまとめて管理するということが可能である。現場にモニターとしても利用できるPCを設置し、そのPCでWebAccess/SCADAを使用できるようにすることで、複数台を1人で管理している担当者は、そのPCを見に行くことで一度に複数の設備の状態を見ることができる。
また、WebAccess/SCADAは階層構造を設定することもできる。加硫機何台かごとにまとめられているデータから必要なデータだけを抽出し、ライン全体の稼働状況を監視することができる。
現場にPCを設置するメリットは他にもある。不具合発生時に各加硫機を動かすラダープログラムを横並びに確認することや、PDF形式のマニュアルをPC上に表示させその場で確認しながら調整を行うことなど、PCであれば簡単に対応することができる。
この時、このPCが硫化水素対策されている必要があるが、アドバンテックの製品にはコーティング対応PCがある。防塵防水が保証されており、更に要望することで、基板をエポキシ樹脂でコーティングを行う事ができる。
WebAccess/SCADAで構築したデータはクラウド上で使用することもできる。この場合、WISE-PaaS/APMを使用することになる。WISE-PaaSにはOEEを可視化するSRPもあるため、データを収集したあと複雑な演算の設定などをする必要がない。
WebAccess/SCADAに関する記事はこちらから。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。