製造業において、昨今の労働人口の減少による人手不足や、生産性の改善などを目的として、IoT化を検討している、もしくは既に活動を始めている企業も多いのではないだろうか。
今回は、SCADAを活用した製造業のIoT化について紹介する。SCADAと言うと、いわゆるパネコンなどで利用される表示系のソフトウェアと認識されるかもしれない。ただし、PLCなどと通信を行い、生産設備のデータを収集し、表示系により可視化するなど、IoTとの親和性は高い。また、最近では、クラウド環境やIT基盤、さらにはエッジAIとの連携も考慮したソリューションも登場している。
30年近く製造業で利用され、進歩を続けるSCADAであるが、その一方で、国内企業での利用は限定的となっていないだろうか。
アドバンテックのWebAccess/SCADAは、PLCやセンサーなどの情報を集めて、生産現場で可視化することができるだけでなく、上位のシステムと連携をしたり、複雑な組織階層における管理にも対応した製品だ。
ITとOTの間のデータ流通などを考慮する際も、様々なプロトコル、データベース、生産機械との接続性が高いため、IT目線で見ても、OT目線でみても、必要なデータのやりとりがスムーズになるのだ。
具体的な使い方をみながら、実現できることを解説していく。
WebAccess/SCADAの構造
WebAccess/SCADAは、2つのノードからできている。一つが「SCADA」ノードで、もう一つが「プロジェクト」ノードだ。
プロジェクトノードでは、SCADAノードにおいて「何のデータ」を「どのタイミングと周期」で、「どのように」取得するか、そして、収集したデータをどこに蓄積し、どういう条件でアラートを発報するか、どういった上位システムにデータをつなげるかといった各種設定をブラウザベースで行うことができる。
そして、後述するダッシュボードの機能を使うことで、収集したデータをわかりやすく表現することもできるのだ。
SCADAノード
SCADAノードの役割は、生産現場におけるPLCやセンサーのデータを収集することだ。
IPC上で動作し、IPアドレスやホスト名、ポートなどを使ってアクセス先のPLC等の機器を指定し、取得したいデータを設定することで、IPCのバックグランド上で処理を実行する。
ちなみに、WebAccess/SCADAにおいて対応しているPLCのドライバの数は450種類ということだ。MQTT, BACnet, OPC UA, Modbusなど多数利用可能だ。もし、対応していないPLCなどがあった場合でも、ニーズに応じて開発することができる。
そして、取得したデータは、リレーショナルデータベースにも、リアルタイムデータベースにも格納することができる。
特に、下位の設備データをログとして履歴管理をしたい場合には、リアルタイムデータベースを利用できることが利点となる。障害発生時や稼働状態を把握するのに必要となるからだ。
一方、ODBC経由でリレーショナルデータベースとの接続が可能になる。(もちろん、ファイアウォールなどがある場合は、設定によりデータ通信可能な状態にしておく必要がある)
ERPなど各種IT系の情報システムとの接続性が高いことは、高度な情報管理を行い、生産データを現場に止まらせることなく、経営情報としても利用できるという利点がある。
さらに、SMTPなどIT系のプロトコルにも対応しているため、アラートの発報や上位システムの接続も簡単に行うことができる。
SCADAノードの階層化とSuper SCADA
例えば、生産ラインが複数ある場合などで、一つのライン単位でSCADAを一つ設置するとする。そうした場合、工場全体での生産状態を知ろうとするとSCADAを階層化する必要が発生する。
その場合、上位のSCADAをSuperSCADAとして設定することで、複数のSCADAからデータを取得し、選択的なデータを収集することができる。
この設定も、SCADAノードがPLCのデータを取得するための設定と同じく、SuperSCADAが管轄するSCADAのIPアドレスやホスト、ポートなどの設定を行い、自身がSuperSCADAであることを設定することだけで実現されるのだ。
こういったSCADAノードの設定は、プロジェクトノードで行うことができる。
プロジェクトノード
プロジェクトノードは、パソコン上のブラウザで操作することができる。SCADAノードの設定や各ノード間の関係をGUIベースで設定することができる。
また、独自にプログラムを追加開発することもでき、表示系のユーザインタフェースも開発することができるため、ブラウザベースのHMIとして利用することも可能だ。
設定画面で、SCADAノードを設定したら、プロジェクトノードから起動処理を行うだけで、SCADAノードはバックグランドプロセスとして動き始める
冗長化構成
PLCからのデータ取得を保証したい場合、SCADAノードを二重化する必要がある。その場合、設定により冗長構成をとることができるが、その場合はバックアップノードという位置づけになるため、切り替えが完了するまでの時間に関しては2重化が実現できていたとしてもデータが欠損してしまう。
そこで、大規模システムの場合、Hiper-Vなどの仮想化システムを利用することで、ハードウエアの耐障害性を高め、切り替えのスピードを高速化するという手段を利用することもできる。
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