「MX-System」、生産現場で制御盤がいらなくなる日 ーベッコフオートメーション 川野氏インタビュー

ベッコフオートメーションは、ドイツに本社がある産業用PCメーカーだ。パソコンを使った制御機器専業メーカーでは世界で唯一の企業でもある。同社は、EtherCATというネットワークを生み出したり、独自性のある製品で生産現場を変えていく企業としても知られている。

そんな、ベッコフオートメーションの日本支社を任されている、ベッコフオートメーション株式会社 代表取締役の川野俊充氏に、最近のベッコフの製品についてお話を伺った。

前編は、「生産現場で制御盤がいらなくなる日がくる」という興味深いテーマについてだ。

後編は、「ロボットの部品をモジュール化、IT技術でも制御可能なロボットATRO ーベッコフオートメーション 川野氏インタビュー

IoTNEWS 小泉(以下、小泉): 最近、制御盤がいらなくなる製品を販売されていると伺ったのですが、詳しく教えてください。

ベッコフオートメーション 川野氏(以下、川野): 生産現場の制御盤は、一般的に場所をとります。また、設備上部に制御盤を置きたいと思っても、天井高がある程度必要だったり、メンテナンスの際にはしごを立てないといけないという問題があります。

また、制御盤は、案件毎に設計しなければいけない都合上、フレキシブルとは言えないものです。また、環境面に関しても問題があります。

亜熱帯地方の工場では、制御盤を例えば40度以下にするために空調が必要となる場合があり、電気代がかさむという問題もあります。

ベッコフオートメーション MX-System 制御盤の課題
これまでの制御盤における課題

そこで、ベッコフでは、制御盤をモジュール式のプラットフォームにおきかえるコンセプトの新製品を発表しました。

それが、制御盤レスソリューションの「MX-System」です。

小泉: MX-Systemの概要を教えてください。

川野: 「ベースプレート」に必要なモジュールをはめ込むだけで、制御盤の機能を実現できるというソリューションです。

制御盤の中に入っているものを、柔軟に変える必要がある場合や、決められたサイズの制御盤の中に必要なものが入りきらない場合があります。

ベッコフオートメーション MX-System コンパクトなシステム
左がこれまでの制御盤。同じ内容のものが右側の省スペースなモジュールに置き換えることが可能になる。

ベッコフでは、それぞれの機能モジュールを小さく設計し、ベースプレートに挿入するだけで、制御盤はもちろんのこと、配線も不要にすることができます。

機能モジュールは、IP67に対応する耐環境性能があり、薬品で滅菌したいという要望にも対応できます。また、耐環境温度は50度なので、亜熱帯地域でも、機械に直接取り付けが可能です。

小泉: 直接つけるというのは、産業機械などに貼り付けるという意味でしょうか。

川野: ベースプレートを産業機械に固定するという意味です。

通常、産業機械を制御するには制御盤を別途準備し、そこにさまざまなモジュールを設置、ケーブルを通して産業機械を制御することになりますが、MX-Systemの場合は、制御盤部分を直接産業機械の隙間などに設置することが可能になるので、省スペースにできますし、制御盤の置き場に困るといった問題も軽減されます。

用途としても、産業用ロボットや射出成形機などさまざまな産業機械で使えます。

小泉: ベースプレートに設置するモジュールにはどういうものがあるのでしょうか。

川野: いくつかのサイズのベースプレートがあります。

ベッコフオートメーション MX-System システム構成
MX-Systemのシステム構成
  • システムモジュール(電源、ヒューズ保護などシステム全体に必要な基本機能)
  • IPCモジュール(コントローラー):Windowパソコンなので、TwinCATを入れると機械制御できる
  • リレーモジュール
  • モーションモジュール
  • I/Oモジュール

上記が現在提供を予定しているモジュールの種類です。

ベッコフオートメーション MX-System モジュール
MX-Systemのモジュール群

モジュール間は、EtherCATで通信をしているので、高速通信が実現できます。

小泉: これまでのあたりまえを変えるような面白い製品ですが、それだけに制御盤メーカーの方やインテグレーターの方からの抵抗はないものでしょうか。

川野: これまでの制御盤づくりにおいては、インテグレーターが制御盤を設計、設置、インテグレーションをやることで使えるようになっていました。

MX-Systemを使うことで、設計や設置の工数が激減するため、インテグレーターの仕事の生産性が高まります。そして、作り出した時間を他の重要な仕事に振り返ることも可能になります。

小泉: そんなに手軽に設置できるのですね。

川野: はい。人手が足りない場合や、海外の立ち上げなどでも、手順書に従うことで、誰でも立ち上げが可能になります。

しかし、全ての制御盤がMX-Systemに置き換わるとも思っていません。

現実的には、現状の制御盤ありきのものとのハイブリッド構成が主流になるとみていて、MX-Systemを正しく理解していただくことで、仕事の範囲が増え、武器にもなると考えています。

小泉: MX-Systemを利用するメリットは、他にはどういうことがありますか。

川野: これまでの制御盤の設計は、設計図が300ページくらいありました。そして、セットアップにも24時間はかかっていましたが、MX-Systemでは、セットアップは1時間くらいに短縮されます。

また、設置に電気工事士の資格が必要であったケースでも、資格なしでの設置が可能になります。

部品も共通モジュール化されているので、在庫も減るし、サービスマンが故障時に駆けつけた際も部品の交換だけで完了するので、メンテナンスの工数が下がります。

小泉: モジュール部分を作りたいというメーカーは現れてこないものでしょうか。

川野: 実際に、そういうお声がけはいただいています。

まだ、製品発売前なので、まずは自社製品の構成のみで実績をつくることを優先しています。

例えば、ケーブルが不要になる一方で、接触不良などが起こり、コントローラーとの通信がうまくいかない場合にトラブルシューティングがしづらくなる、という課題も想定されていて、まずはEhterCATを開発した時と同様に、自社製品だけで徹底的に市場と向き合っていきたいという考えです。

小泉: 興味深い製品をご紹介いただきありがとうございました。
(後編に続く)

後編は、「ロボットの部品をモジュール化、IT技術でも制御可能なロボットATRO ーベッコフオートメーション 川野氏インタビュー

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