半導体材料メーカーのレゾナックは2月15日、VR(仮想現実)技術を半導体の材料開発で活用することに成功したと発表した。VRを使って分子レベルでの解析を行い、3次元表示を行った。同社によると、半導体材料の開発分野でVR技術が導入されるのは国内初という。
半導体の材料開発では、これまで無機基板と有機分子の吸着性や接着性など、異なる材料の界面に対する相互作用について、分子動力学計算を実施し、計算結果をグラフソフトなどでPCのディスプレイ上に2次元的に映し出して解析を行っていた。
しかし、結合などの挙動メカニズム解明は、熟練の計算科学の専門家でも、統計的な解析にとどまることが多く、材料開発につながるレベルの直接的な解析は非常に困難だったという。
レゾナックでは、こうした複雑で困難な界面での分子挙動の解析を行うするため、半年前からヘッドマウントディスプレイを使ったVR技術活用の検討を開始。
VR技術を導入することで、1mの100億分の1となる0.1nmの「原子・分子レベルの世界」を眼前に表現し、分子と同じスケールで直感的に操作をしながら3次元的に基板・分子界面に近づいての観察をできるようにした。その結果、計算科学の専門家だけでなく、材料開発の専門家も、基板の原子と有機分子の分子鎖が結合する様子などの振る舞いについて詳細を解析することが可能になった。
分子レベル解析のVR技術活用は、CMPスラリー(研磨材料)を始めとした半導体材料や電子材料分野など、無機基板と有機分子の相互作用メカニズム解析に第1弾として使用する。
同社では、モノづくりの現場から見ると別世界と思われがちな計算科学の世界が、VR技術で誰にでも容易に体感できるようになり、現場の材料開発の専門家と、計算科学の専門家とのコミュニケーションが円滑になり、材料の研究開発の加速につながるとみている。
今後は、VR技術を活用し、現場で材料開発を担当する技術者を始め、多くの技術者が解析できるようにすることで、スピーディーな材料開発を実現するとともに、新たな材料・素材の発見を進めるという。
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