マイクロソフト、GPTを活用したソリューションを展示 ーハノーバーメッセ2023レポート②

ハノーバーメッセレポートの第二弾は、マイクロソフトブースから。

今回のハノーバーメッセでは、現在話題の自然言語AIに関連するソリューションが目玉となっていた。

Azureに組み込まれたGPTでの取り組み

マイクロソフトは、ChatGPTを作っているOpenAIに巨額の投資をしたことで、話題にもなっていたが、実は、この技術はすでにAzureに組み込まれ、いろんなシーンで利用可能になっているのだという。

今回の展示では、その一端を見ることができた。

設備保全のユースケース

MicrosoftのERPソリューションとなる、「Dynamics」のフィールドサービスのモジュールには、フィールドサービスが行った過去の対応の記録が残っている。

このモジュールにGPTを組み込むことで、新たなサービスが実現されている。

例えば、なにか新しいトラブルが起きた際、過去のナレッジをベースに、「今起きていることが、どういう事象なのか」を教えてくれる。しかも、GTPなので、自然な言葉で、先輩に質問するような感じで聞くことが可能だ。

これは、昨日入社した新人に対してもサポートしてくれるありがたいソリューションとなる。

さらに、GPT4.0からは、テキストだけでなく映像も取り込めることから、例えばある設備から煙が上がっている場合に、その様子を撮影し、システムにアップロードすると、障害状況の切り分けに役立つ情報を教えてくれるという。

GPT4を使っていると、映像を解析することもできる
まず、GPT4のインプットとして、現場で起きている状況を撮影する

仕組みとしては、アップロードされた映像に近しい過去の状況を探索、最も状況に近いものを探し出し、Dynamicsから作業をするべき指示を明確にして、対応するというプロセスに反映させるのだ。

GPT4を使って過去事例を解析、対応案を提案する
GPT4を使うことで、映像を解析し、過去の事例ととらし合わせて対応案を提案することもできる。

マイクロソフトでは、Azure上のGPTがもともと持っている学習データに対して、クライアントの所有するデータを追加学習させることができるため、この仕組みは実現される。

また、追加したデータは、他の企業に提供されることはないということだ。

さらに、従来のアノテーションとの違いについて伺ったところ、「自律的な学習ができることが違う」のだという。

周辺で起きているデータ(この例ではDynamicsの中の過去のサポートデータ)を融合して学習するところが大きいのだ。

ここで、注意が必要なのは、GPTによって、主にユーザインタフェースのところが自然言語対応となるため、コンテキストに沿った表現でやりとりができるということが重要なのであって、ビジネスロジックを実現するためのAIということではないという点だ。

スマートファクトリーのケース

次の例は、マイクロソフトのパートナー企業出る、「サイトマシーン」の事例だ。

サイトマシーンは、もともと製造業のさまざまな情報をマッシュアップして、そのデータに対して使う側の用途に応じたコンテキストにブラッシュアップしなおすサービスを提供している。

今回のGPTを利用したソリューションとしては、人間が自然な聞き方をした時、自然な情報として返してくれるというものだ。

従来は、定型的な帳票等をBIツールで作る必要があったが、これを言葉で指示することができるところが新しい。

自然言語で聞いたことを、教えてくれる
自然言語で聞いたことを、教えてくれる
必要なメールを自動生成することも可能だ。
必要なメールを自動生成することも可能だ。

例えば、「今日メンテナンスすべき機械はどれ?」と聞くと、「この機械だ」と教えてくれたり、「必要なデータを提示」してくれたりする。

レポートに添付データをつけることも可能だ。
レポートに添付データをつけることも可能だ。(リンクが数字を押すと、したのようなデータが表示される)
エビデンスとなるデータ
エビデンスとなるデータ

従来のように、データクレンジングやデータの生成などにおいて人がやっていたことを、AIが代わりにやってくれるようになるのだろう。

サプライチェーンのユースケース

次の事例は、サプライチェーンにおけるユースケースだ。

仕入れ業務において、台風、地震、ストライキなどが起きた時、仕入れが滞ったり、価格が変わったりするケースがある。

そういった際、どういうリスクがあるのか、調達先を変えるべきなのか、どんな依頼をかけるべきなのか、など人が行う業務は多い。

そこで、GPTが活躍するのだ。

まず、GPTは、こういった状況について、ネットからさまざまな情報を探してきて要約してくれる。

社内データベースにデータが存在していれば、該当地域に関係するロジスティクスの状況や、サプライヤーにどんなオーダーが出ているかがわかる。

こういった情報を活用して、調達部門がやるべき交渉文やメールの文面の作成を手伝ってくれる。

GPTの活用事例をみていて、単純な自然言語での文書作成や、要約などの利用にとどまらず、自社のデータと合わせることで、これまで部下に依頼してきた、状況の評価やまとめ、などの業務、取引先との連絡の業務など、かなりの業務をAIが肩代わりしてくれる可能性を感じた。これにより、ホワイトワーカーの生産性向上が一気にすすみそうだ。

一方、よりデータの重要性が増す。

データが取得できていない、整理されていないという状況では、高度なGPTの活用は、なかなか難しい。そこで、企業は、こういったソリューションをみて、「データをもっと取ろう、整理しよう」というモチベーションをもってほしいということだ。

日本企業との取り組み例

AI以外にも、マイクロソフトのブースには製造業関連展示があったので紹介する。

デジタルツインを構成するAzure Digital Twins

川崎重工x三菱電機xロボットOS
Azure Digital Twinsで、異なるモジュールを統合制御

川崎重工のアームロボットと川崎重工の制御システム、ガイドレールとガイドレールを制御する三菱電機のシーケンサー、ロボットOSで動く人型ロボットが協調して動作している展示だ。

こういった異なるコンテキストからなる情報モデルを、異なるプロトコルで動かすべきものは、以前であれば個別に制御していたところだ。

しかし、この展示では、「Azure Digital Twins」というサービスでマージされ、一体のデジタルツインとして表現されていた。

次に、Azure Digital Twinsにある、3Dシーンという機能を使い、3D化しているデジタルツインの例だ。

デジタルツインズは、情報モデルを持つことができ、そのモデルと映像を重ね合わすことができるというソリューションになる。3DCADのデータがあれば、デジタルツインは構成できる。

遠隔地のデジタルツインも統合的に管理することが可能となる
遠隔地のデジタルツインも統合的に管理することが可能となる
右側が、ハノーバーのデジタルツインで、左側は羽田にある検査場のデジタルツインだ。

複数の情報モデルを統合してデジタルツインを構成する。さらに、複数拠点にまたがって構成することができるというデモだ。Azure Digital Twinsの場合、CADデータなどがあれば、このように現場の状況をデジタルツイン上で簡単に再現できる。

これを活用することで、どこかで何かが起きると、アラートを表示することができる。そして、なんらかの対策に関してはHoloLensなどを活用して、一人のエキスパートが複数拠点をサポートしていくことができるのだ。

ソニー セミコンダクタ ソリューションズのAITRIOS

ここで撮影した情報をイメージセンサーとして捉えている
ここで撮影した情報をイメージセンサーとして捉えている

ソニー セミコンダクタ ソリューションズは、イメージセンサーとAI処理ができるロジックチップをワンチップにしたイメージセンサを開発し、これだけで、物体認識などができるものを展示していた。

AIのモデルを追加学習したり、そのモデルをカメラにデプロイしたりするサービスを、「AITRIOS」という名称で展開している。

このサービスは開発環境をAzureで作っており、共同のラボを通じてユーザーのアジャイル開発を支援しているということだ。

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