内田洋行ビジネスITフェア2024

シュナイダーエレクトリック、ソフトウエア中心の制御へ ーHannover Messe 2023レポート④

ハノーバーメッセレポートの第四弾は、シュナイダーエレクトリックだ。

シュナイダーエレクトリックは、EcoStruxure Automation Expert(エコストラクチャ・オートメーション・エキスパート)というソリューションを中心に展示していた。

エナジーマネージメントとインダストリーソリューションを包括したブランドがエコストラクチャで、その商品群の一つとして、オートメーション・エキスパートというものが位置付けられている。

EcoStruxure Automation Expertとは

この製品は一言で言うと、ハードウエア依存の制御方式をソフトウエアを中心としたものにしようとするものだ。

例えば、生産現場では、設備が様々あるが、各々の設備にPLCがついていて、制御を行なっている。そのソフトウエアは、ハードウエアに準拠したソフトウエアなので、結果的にハードウエア依存の状態だと言える。

この状態では、例えば昨今の半導体不足において、ハードウエアが調達できなければソフトウエアを組んでも仕方がないとなったり、ハードウエア同士の処理は現場でのすり合わせが重要となるケースが多い、と言う課題があった。

それに対して、オートメーション・エキスパートでは、各々の機械を制御するプログラム全体を作ることができる。そして、それぞれのハードウエアにプログラムを流し込む、と言う考え方だ。

このコンセプトは、「IEC61499」というPLCのファンクションブロックを規格化、抽象化する中で生まれた規格に基づいて作られているため、対応したハードウエアであればこの利用方法を活用することができる。

シュナイダーエレクトリック エコストラクチャー・オートメーション・エキスパート ファンクションブロックを作る
オートメーション・エキスパートでは、ファンクションブロックを先に作っておき、最適なハードウエアにデプロイすることができる
IEC61499準拠のハードウエアだけでなく、既設のハードウエアに関しても統合管理が可能
IEC61499準拠のハードウエアだけでなく、既設のハードウエアに関しても統合管理が可能

この規格は、UNIVERSAL AUTOMATION.ORGという業界団体が規格を作っていて、シュナイダーエレクトリックはその規格に準拠したソフトウエアやハードウエアを提供しているということだ。

もちろん、他のメーカー製であっても、IEC61499に準拠していれば、ハードウエアに依存せず動かすことができる。

この結果、デジタルツインも簡単に作れるのだと言う。

これまでであれば、ハードウエアデータをそれぞれ集めてきて、合わせないとデジタルツインを作ることができなかったが、もともとソフトウエアで全体の動きを実現してからハードウエアにデプロイすると言う考え方なので、当然デジタルツインを簡単に作ることができる。

実際、シュナイダーエレクトリックの上海工場では、デジタルツインを構成する際に、工数が30%削減された実績もあるのだという。

シュナイダーエレクトリック エコストラクチャー・オートメーション・エキスパート
シュナイダーエレクトリックの上海工場では、デジタルツインを簡単につくることができ、工数も30%削減することができた

既設の設備がたくさんある工場では、装置等がIEC61499に準拠していないものも多い。その場合でも、プログラムの制御の中身までは介入できないものの、全体を取りまとめる役割は可能だ。

死活監視をはじめとして、IoTとして取得できるデータを活用したり、動作指示や終了信号だけ受け取って、次の処理に進めるといった、全体の制御を統合することができる。

また、エンジニアは、コンベア用、包装機会用、水処理用など、様々なファンクションブロックをあらかじめ用意していることで、制御プログラムを簡単に書くことができる。

しかし、ソフトウエアで制御しようとすると、シビアなタイミング制御できないのではないか、と言う懸念を持つ方もいるだろう。

理想的なケースとしては、心臓部となるコンピュータが配置されていて、それが全てのハードウエアを制御するという利用シーンだ。しかし、実際は既存設備があるので、いきなりそういうことにはならない。

生産設備は既存のものを使うが、搬送はオートメーション・エキスパートでやる、といった棲み分けをすることとなる。

そこで、制御可能なものは制御も行い、シビアなタイミング制御が必要なものは従来のやり方を踏襲しつつ統合管理するということになるのだ。

シュナイダーエレクトリック エコストラクチャー・オートメーション・エキスパート
デプロイ先のハードウエアを、プログラム後に変えることができるので、規格にあっていれば他社製のものでも簡単に入れ替えることができる

また、オートメーション・エキスパートでは、ファンクションブロックごとにデプロイ先を選ぶことができるため、全ての設計とプログラミングを終えた後、好きなハードウエアにデプロイすることができる。

制御したいことの全体像を先に考えた上で、必要なハードウエアを選択できるということが新しい。

極論すれば、複数のハードウエアで実行するであろう全ての動作を一つの高性能なサーバで制御してもよいともなるわけだ。

リニアモーションコントロール Lexium MC12 Multi Carrier

続いて、リニアモーションコンロールだ。最近よく見かけるようになったが、「キャリア」と呼ばれる台を自由に、高速に動かすことができるのが特徴だ。

プリンやヨーグルト、牛乳、マスクなど、同じものをたくさん作る現場で使われることが多く、タクトタイムを縮める効果がある。

シュナイダーエレクトリックの場合、楕円の中は空洞になっているので、中のスペースを自由に使うことができる。

また、通常コーナーの部分での発熱が大きく、スピードを落とさないといけない製品も多いが、シュナイダーエレクトリック製では、キャリアの構造がシンプルで接触面積が小さく、レール部分に金属のプレートを引いており、その板に冷却効果もあるため、発熱が少なく、コーナー部分でも早いスピードで動かすことができるということだ。

さらに、モーションコントロール一台で、ロボットも動かすことができるので、プログラム開発工数の削減やシンプルな制御が可能となる。

PC一台で、ロボットとリニアモーションコントロールを動かすことが可能
PC一台で、ロボットとリニアモーションコントロールを動かすことが可能

また、ハードウエアとしては、実際に導入する際には、プラレールのように組み合わせて利用するこができる。組み立てが顧客の工場でできるということで輸送や組み立てでのメリットも大きいと言うことだ。

リニアモーションコントロール
プラレールのような部品が運ばれてきて、現地で組み立てることも可能

さらに、マシンエキスパート・ツインと呼ばれるソフトウエアを活用することで、デジタルツイン上でシミュレーションや動作の確認も可能になる、と言うことだ。

マシンエキスパートツイン
マシンエキスパートツインを使うことで、簡単にデジタルツインを構成し、シミュレーションや検証を行うことができる

AIを使ったオートメーションの未来

オートメーション・エキスパートの未来に関して、AIの活用シーンの展示があった。

例えば、搬送において画像検査を行う際、オートメーション・エキスパートにAIのアルゴリズムをのせて、融合するということができるのだという。

カメラをベースにコンピュータで画像認識をする処理について、モジュール化して、他のPLCなどと連携する「ビジョンセンサー」として活用することができる。

他にも、先ほど紹介したリニアモーションコントローラーのエンジニアリングに関して、どれくらいのものをどのくらいのスピードで運びたい、電力消費をどのくらいにしたい、ということを伝えると、AIがエンジニアリングしてくれるといったことにも取り組んでいるということだ。

デジタルツインとAIを活用した、MC12の最適化
デジタルツインとAIを活用した、MC12の最適化を実現するデモ

AIのラーニングをデジタルツイン上で行うので、最適な組み方をAIが教えてくれることとなる。トレーニングの回数とパラメータを設定することで、キャリアの移動速度やエネルギー利用料などの最適解を見つけることができる。

シュナイダーエレクトリックは、単純な生産性改善だけでなく、効率化を追求することでサステナビリティにも寄与している。

通常、実機で試してみながら実験をしてみる必要があることも、デジタルツインとAIを使うことで、消費電力のことも考えつつ、生産性向上を狙うことができるのだ。

こういった考え方は、次の時代には必須となるだろう。

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