AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは？

データ主導の今日の世界では、人工知能（AI）とモノのインターネット（IoT）の融合が、あらゆる産業に革命をもたらしつつある。デジタル時代に成功を収める企業にとって、AIoTの導入が極めて重要である理由とは？　世界的なテクノロジー・リサーチ企業であるOmdia（オムディア）とTelenor IoT（テレノールIoT）が作成した「IoT Prediction Report 2024」から、IoTに関する最新予測を紹介する。

IoTの膨大なデータをどう活用するか

デジタルトランスフォーメーション（DX）の成功のカギは、高品質なデータへのリアルタイムのアクセスだ。このデータを活用することで、より多くの情報に基づいた意思決定が可能となり、高度な自動化や業務効率の改善、顧客体験や生産性の向上が実現できる。

したがって、接続された様々なデバイスや機器から信頼性の高い情報が提供されるIoTの成長は当然のことといえる。IoTとDXのこの相関関係は、Omdiaによる2023年のIoT企業調査からも明らかになっている。回答者の88％が、IoTは組織の複数の分野で導入されているか、DXの重要な要素を担っていると答えている。

DXの加速により、全世界のIoTデバイスの設置台数は2023年末に約380億台となり、2030年には820億台を超えるとOmdiaは予測する。しかし、それに伴う課題も生じている。その最たるものが、IoTアプリケーションが生成する膨大なデータとその処理の問題である。世界のIoT市場は現在、毎日約10億ギガバイトのデータを扱っているという試算もある。

その結果、多くの企業は膨大なデータからビジネス価値を生み出す有意義な情報を効果的に分析・抽出することができず、データの海に溺れてしまうことになる。この問題はIoTプロジェクトの規模が拡大し、エンドポイントやデータ数が増えるにつれて大きくなる一方である。

単にデータを収集するだけでは、その潜在的な価値を引き出せないことは明らかだ。しかし、情報量が膨大なため、人間が分析するのは現実的ではない。その代わりに、企業はアプリケーションをより効率的で持続可能なものにする分析ツールを導入する必要がある。それを可能にするのがAIだ。

IoTにAI機能を統合すること、一般にAIoT（Artificial Intelligence of Things）またはAI4IoTと呼ばれるこの動きは、2024年にはもはや特別なものではなくなる。むしろ、AIoTはデジタル時代の成長企業にとって必須のものになる、とOmdiaは分析している。

2024年はAIoT元年

AIを使用する本質的な目的は、データからパターンを見つけ、ビジネスにとって意味のある洞察を得るための分析を行うこと、あるいはタスクを自動化し、意思決定プロセスを改善することである。簡単に言えば、AIoTは、生データを具体的なビジネス価値を持つ強力なアクションに変換することができる。

別の言い方をすれば、IoTはデータを提供し、AIはレスポンスを引き出す能力を提供する。人体にたとえると、IoTは中枢神経系であり、データの収集とネットワークを通じて情報発信を担う。AIは脳であり、収集した情報を受け取り、分析して重要性を判断し、どのように対応するかを決定する。それぞれのシステムは特定の機能を持つが、それらはすべて相互に関連し、依存し合っているのだ。

Omdiaは、2024年がAIoTの導入にとって極めて重要な年になると考えている。生成AI技術の急速な発展と、それに伴う多くの企業の危機感は、IoT展開におけるAI/ML（機械学習）の重要性を示し、AIoTの普及を加速させる。さらに、より強力で小型かつエネルギー効率に優れたデバイスによるハードウェアの進歩、AIモデルにおけるブレークスルー、デジタル技術の持続可能な利用を要件とするAI規制などがこの勢いに拍車をかけるとOmdiaは予測している。

各業界におけるAIoT導入の主なメリット

AIとIoTの融合は、漸進的なアップグレードではない。製造業から運輸業、公共事業に至るまで、様々な分野で業務効率の改善や顧客体験の向上を引き出すカギを握っている。例として、製造業、自動車産業、スマートシティの3分野でのAIoT導入例を見ていこう。

製造業

工場環境にIoTを導入することで、製造業者は様々な工場資産をリアルタイムでモニタリングできるようになる。さらに最新のAI/MLテクノロジーを導入すれば、ダウンタイムが発生する前に異常を特定し、機器の故障を予測することが可能になる。質の高いデータに基づいて学習させることで、AIシステムが自動的に適切なアクションを起こして部品の故障を防ぐだけでなく、手動での検査を必要なときだけに限定することもできる。したがって、設備や人件費の削減が可能になる。

AIoTによるロボット工学の改善は、製造業にとって重要だ。すでにティア1メーカーでは、効率的な識別、検索、パレット化のためにロボットと無人搬送車（AGV）を統合した自律型工場や倉庫を強力に推進している。今後はこれらのロボットと人間との間のコミュニケーションも、自然言語処理技術を使って改善されていくだろう。

自動車産業

流通している自動車の5分の1以上がすでにコネクテッドカーになっており、2030年には100%に達すると予想されている。次のステップは、これらの車両にAI/ML技術を組み込み、このデータを利用して車両性能や安全性を向上させ、より豊かな顧客体験を提供することだ。

すでにAIoTは、音声アシストを通じて車内体験の一翼を担っている。新世代のモバイルおよびIoT接続とAIを利用して、これらのシステムはドライバーの合図や発話を認識し、それを推奨行動に変換する。自然言語処理技術の進歩に伴い、これらのシステムの機能性と信頼性は向上し続けている。AIはまた、潜在的な障害物が近くにある場合にドライバーに警告するブラインド・スポット・モニタリングなど、ドライバーアシスタントシステムにも貢献している。

今後、AIoTは完全自動運転車の目標達成においても中心的な役割を果たすだろう。自動運転車には、IoT接続を通じた継続的で中断のないデータストリームと、道路上の車両、人、物体を即座に正確に識別し、ラベル付けし、行動で応答できる高度なAIモデルが必要になる。これらのソリューションは複雑で、あらゆるシナリオを瞬時に処理して対応できるよう、幅広いデータセットに対する膨大な量のトレーニングが必要になる。

多くの研究結果により、自動車事故の90％以上はヒューマンエラーによるものだとわかっている。自動運転車の実現により、そうした事故は減少するだろう。Omdiaは、自動運転車が今後数年間で最もインパクトのあるAIoTソリューションの一つになると考えている。

スマートシティ

世界中の企業や政府が、2015年に国連が定めた持続可能な開発目標（SDGs）に向けて都市の変革に注力していることから、AIoTは持続可能なスマートシティを実現する上でも重要な役割を担っている。IoTはここでの基本技術の一つであり、センサーやデバイスが必要なデータや情報を収集することで、都市計画担当者は、エネルギー効率の改善、汚染の削減、交通網の最適化など、持続可能性のKPIに対する進捗状況を監視することができる。

都市環境内でセンサーや生成されるデータの量が増えるにつれて、プロセスを自動化し、これらのデータからより多くの価値を生み出すためにAI/MLが重要になる。例えば、AIoTソリューションは、過去の交通データとリアルタイムの交通データを組み合わせることで、渋滞エリアを予測し、緩和することができる。製造業における予知保全と同様に、AIは、都市サービス（廃棄物処理や給水など）における潜在的なダウンタイム・故障や、自然災害などのリスクについて、より正確な予測を可能にする。

AIoTに欠かせないセルラー接続

2023年11月、テレノール（Telenor）とエリクソンは、電気通信業界におけるAIとMLの領域、特に接続品質を損なうことなくエネルギー効率を向上させることを目的とした覚書の締結を発表した。このパートナーシップは、AIを活用した意思決定や運用サポートなどに向けたモバイルネットワークの明確なトレンドに基づいている。

AIoTに不可欠な要素の一つがコネクティビティである。AIoTは、信頼性の高いユビキタスな通信ネットワークにアクセスできなければ、インパクトのあるものにはならない。IoTを通じて提供される驚くほど大量のデータは、意思決定の精度とスピードを向上させるAI/MLアルゴリズムを推進する不可欠な燃料となる。端的に言えば、これらのAIシステムがより多くのデータ、より質の高いデータにアクセスできればできるほど、企業にとってより有能で強力なツールになり得るということだ。

IoT接続とAIの組み合わせは、本質的に相互に有益なループを生み出す。もちろん、このデータの送信に制限があったり、一貫性がなかったり、あるいは全く行われなかったりすれば、このループは完成しない。

今日、企業にはAIoTの展開に使用できる短距離、長距離、有線、無線の接続プロトコルが豊富にあるが、多くの場合、セルラー接続には、実証済みの拡張性、暗号化と確立された保護機能による固有のセキュリティなどの利点がある。また、多様なデバイスと環境に対応するため、複数の接続規格をサポートできるサービス・プロバイダーが必要となるが、セルラー技術はそうした要求も満たすことができる。

例えば、IoTデバイスはしばしば遠隔地に設置される。これは、ネットワーク・カバレッジの点で非常に大きな課題となるが、これらのデバイスは電源へのアクセスが限られていることも多い。このような場合、LTE-MやNB IoTなどの低消費電力無線セルラーネットワークの利用が不可欠となる。一方、高速かつ低遅延を必要とするIoTアプリケーションもある。その場合は、広帯域幅の接続性を提供する5Gのようなネットワーク規格が必要となる。

単一の接続技術がすべてのIoTアプリケーションに適していないことは明らかだ。実際、多くのIoTプロジェクトは複数のプロトコルを使用している。そこで重要になるのが、IoTに関して長年の経験を持つパートナーとの連携だ。企業が特定のプロジェクトに最も適した技術（コスト、カバー範囲、消費電力などに基づく）を選択する際や、複数のプロトコルを併用する場合の相互運用テストを行う際に専門家の支援が欠かせないからである。

今こそ、AIoT導入に向けて行動すべき時

AIとIoTの両方に詳しい専門家は希少な存在である。そうしたパートナーは、ユーザーが障害物を取り除き、共同でスキルアップを行い、プロジェクトを期限内に納品し、ROI目標を達成するのを支援してくれる。多くの企業にとって、信頼性の高いパートナーとの連携は、AIoTの導入を成功させるために不可欠である。

革新的なテクノロジーと同様に、AIoTの最終的なインパクトを測るのは難しい。しかし、Omdiaは、デジタル時代に競争優位性を獲得するにはAIoTの導入が必須であり、2024年はその重要な分岐点になると考えている。今こそ行動すべき時なのだ。

「IoT Prediction Report 2024（英語版）」の全文やテレノールIoTの詳細については、こちらをご覧ください。

オムディア（Omdia）

Omdiaは、Informa Techのリサーチ部門（Ovum、Heavy Reading、Tractica）と、IHS Markitのテクノロジー・リサーチ・ポートフォリオの合併により設立された、グローバルなテクノロジー・リサーチ企業。テクノロジー全般、150市場をカバーする400人以上のアナリストが在籍。年間3,000本以上の調査レポートを発行し、14,000人以上の購読者に届けている。

テレノールコネクション（Telenor Connexion）

テレノールIoTは、世界有数の携帯電話事業者であるテレノール・グループのIoTソリューション。テレノールは20年以上にわたり、あらゆる規模の企業にグローバルなIoT接続、クラウドサービス、専門家によるサポートを提供してきた。現在ではボルボ、スカニア、日立建機、Verisure Securitas Direct、Husqvarnaなどの国際企業向けに約200カ国で2,000万台を超える接続デバイスを運用している。テレノールIoT は、北欧ではテレノールの担当事業部を通じて提供され、日本をはじめとしたグローバルでは専門子会社のテレノールコネクション（Telenor Connexion）を通じて提供されている。