ハノーバーメッセレポートの第二弾は、シュナイダーエレクトリックのブースからだ。
シュナイダーエレクトリックはAVEVAを買収、昨年の展示でも共同展示をしていたが、今回の展示ではブースのど真ん中で、トップ画にあるように「CONNECT」というコンセプトを打ち出し、グループ全体でのデータの統合と利用、AIを使った推論を訴求していた。
また、同社は川上から川下まで対応可能なこともあり、足回りのデバイスソリューションからクラウドソリューションまで幅広く展示されていた。
AVEVA Unified Operation Center
まず、正面に目に入るのが、AVEVAの大画面だ。中東の石油精製の現場などで、それぞれの様子を大きな画面で可視化しているデモになる。
最終的にこのような可視化を実現するにも、CONNNECTというコンセプトのように、足回りのデータ収集や、制御、分析といったさまざまなことを実現することが必要になる。
シュナイダーエレクトリックはAVEVAデータハブを使い、その上にソフトウエアサービスを構成し、シュナイダーグループのソフトウエア全体を有機的に統合しているのだという。
様々なエンジニアリングデータとOTのデータ、CRMのデータ、プロパティのデータなどを生成AIを使って、何が起きているか?問題が起きている原因がなにか?どういう対応ができるか?といったアシストをしてくれる、AIアシスタントの機能も実現しているということだ。
食品や薬品、化学に特化したDCS/MESソリューション、ProLeiT
昨年、ProLeiTと呼ばれるソリューションが展示されていて、ビールの展示について説明を受けた。
今回は、同じ製品ではあるが、化学に用途を特化したアプリケーションが展示されていた。
ProLeiTの特徴は、DCS(Distributed Control System:分散制御システム)とMES(Manufacturing Execution System: 製造実行システム)機能をもったProLeiTと接続できるのは、これまでシーメンス、ロックウエル、シュナイダーのPLCだけだったが、Automation Expartと接続可能となったことで、この3社以外でも接続可能になった。
また、材料調達から出荷といったサプライチェーンの機能も持っているので、食品・薬品・化学といった業界を業界特化する代わりに、水平方向に広がるソリューションとなっている。
業界で同じような作り方をしているモノに関しては、あらかじめソリューションとして準備していれば、すぐにつかえ、競争領域に注力可能となるソリューションとなる。
Industrial Digital Transformation Service
シュナイダーエレクトリックは、自社工場をスマートファクトリーを実現している。
同社では、生産性を向上するためのツールやデータ分析をする仕組み、サイバー攻撃への対策やエネルギーマネージメントなどいくつもの項目についいて、合致しているものをスマートファクトリーと定義し、そのノウハウをクライアント企業でもアセスメントを実施し、実現に向けた提案が可能としている。
これは、シュナイダー パフォーマンスシステムと呼ばれる、シュナイダーエレクトリック独自のスマートファクトリーの指標を一般化した形になる。
利用企業にとってのメリットは、机上の空論ではなく、実際の工場でやってきた実績をもとにアセスメントされるため、一般のスマートファクトリーのコンサルタントとは大きな差がある点だ。
この、産業向けDXサービスには、上の図にあるように「ガバナンス」という切り口が入っていて、現場からではなく、トップダウンなアプローチをスマートファクトリーの前提としていることも興味深い。
気になる具体的にどうやって運営して、どう改善しているか、といった点については、工場見学も始めているということだ。
PLCの二重化
一般的に、PLCを二重化するのはコストが高い。そこで、インテルとレッドハット、シュナイダーがコラボして、仮想化技術を使うことで安価に二重化を実現をした。
例えば、二重化されているPCが停止した場合、上位のシステム(レッドハット)を用意して、それを検知、シュナイダーエレクトリックのコントローラーとやり取りをしてPLCの切り替えを行う。
生成AIを活用してプログラム作成をサポート
話題の生成AIについてもオートメーションマネージャという製品に組み込みを始めている。
オートメーションマネージャは、マシンエキスパートやオートメーションエキスパートといったソフトウエア製品を包括するような位置付けのソフトウエアとなる。
具体的には、GitHubのようなクラウドにおけるコード管理や共同編集機能、バージョン管理、作業履歴なども残るものとなっている。
現地では、オートメーションマネージャを使って、自然言語で問い合わせをかけると、コードを作ってくれるデモが展示されていた。
実際には、何かをしたいとチャットに書き込むと、ライブラリの候補が出てきて、そのライブラリを実際のプログラムの状況に合わせてカスタマイズした上で、組み込まれる。
要求仕様書やIOマッピングがあれば、それを読み込ませるだけで、初期のプログラムを生成してくれるという機能も搭載されている。
これによって、初期のプログラミングコストが大きく下がるということだ。
また、実際に構築した環境に関しても、テストすべき内容のおすすめが出てきたり、シミュレーターを活用して問題がないかの検証をしてくれる機能もある。
PLC、モーションなどを同期して一つのコントローラーで制御
さまざまなロボットやリニアなどを同期して1つのコントローラーで制御できるデモが展示されていた。
キャリアがどの位置にいて、どこにいたら、ロボットが振っている瓶を取るといった同期した制御ができる。
何十軸という包装機などの制御で、シュナイダーエレクトリックは、サーボを精度よく動かす実績があったことが、こういったことが実現できている理由なのだという。
国内メーカーだとそれぞれの事業部が異なっていることがあり、独立した制御は素晴らしいものの、このような「統合制御」は、できていないのではないかと感じた。生成AIの利用やデータの統合も含め、ソフトウエア目線で製造をどのようにみていくのかが重要な時代に入ってきている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。