ハノーバーメッセレポートの第三弾は、シーメンスのブースから。
持続可能性を全面に打ち出したシーメンス。この間、製造業は生産拠点をオフショアに移していた数十年だといえるが、昨今のサプライチェーンの問題や、地政学的なリスクなどの中で、現在生産現場の国内回帰が進んでいる。
特に半導体などは顕著だ。
そういった背景の中、単純な製造機器の展示ではなく、データをどう活用するか、AIを使った予測や生成AIやメタバースを使った新しい取り組みなどを、コアテクノロジーと産業分野別ソリューションという形で両方展示していた。
また、そういう取り組みを通してサステナビリティも実現するとしていた。
インダストリアルメタバースを実現する、ヘッドマウントディスプレイ
まずはコア技術から。
CES2024でも発表された、ソニーと共同で開発したヘッドマウントディスプレイが展示されていた。
MXでつくられた3DCADを用いて、よりわかりやすく実物に近い形でのデジタルツインを再現しているものだ。
コントローラーが変わっていて、リング型のコントローラーと枝のようなコントローラーを使って操作する。
近い将来、発売される予定ということだ。
マイクロソフトと提携した産業向けAI
シーメンスは、Siemens Industrial CoPilotを提供開始を発表。幅広く産業に浸透させるため、シーメンスとシェフラーは覚書を締結した。
また、社内外のデータを参照することで、次に何をすべきなのかということを教えてくれるのだという。
また、マイクロソフトとの提携により、PLMのTeamcenterとマイクロソフト Teamsの統合が始まることで、産業用メタバース実現への道がさらに開かれる。
これにより、複数の業務部門を横断した、設計エンジニア、現場作業員、およびその他のチームのバーチャルコラボレーションが簡略化されるとした。
産業を軸に、垂直統合型の展示をすることで、その業界でできることを明確化
これまでシーメンスの展示というと、PLCのコーナー、PCのコーナー、CADのコーナー・・・といった感じで、製品軸で区切られていた。
しかし、今回の展示では、産業を軸に「その業界でできること」を明確に打ち出していた。
現場の足回りからクラウドサービスまでさまざまなソリューションをもつシーメンスでは、こういった展示をした方が見やすいのだろう。
一例を挙げると、ドイツではビール工場が多いのだが、そこで使われるMESのソリューションが展示されていた。
このソリューションは、ソフトウエアでビールの醸造をコントロールするものだ。単なるMESの機能だけでなく、データを可視化するなど、生産パッケージのような仕立てとなっている。現場では、1500ものコントローラーがあるのだが、それを制御しながらビールを作るのだという。
また、ここでいうデータは、ビール製造に関わるものだけでなく、エネルギーの使用容量なども可視化できるということだ。
他には、自動車産業の分野では、デジタルツインを活用したデータドリブンな製造による、品質を損なわずに生産性を高める取り組みを、半導体産業の分野でもデジタルツインとバリューチェーン全体を横断した最適化のソリューションを展示していた。
パートナーと共に、競争軸を意識したソリューションを展開
最後に、シーメンス株式会社 代表取締役社長兼CEO 堀田邦彦 氏にお話を伺うことができた。
ー今回のハノーバーメッセに関する所感を教えてください。
堀田氏: 今回日本の企業の参加がすくなかったと感じました。日本の製造業のことについていうと、シーメンスはクラウド化やDXを日本で進めていますが、その中で、日本企業は実行力がすばらしいと感じています。これは、ドイツやアメリカなどと比較しても日本は優れていると思います。
ー今回のメッセは、プロダクトの展示というより経営者向けのメッセージになっていると感じたのですがその点いかがですか?
堀田氏: インダストリー4.0からはじまり、DXは以前から始まっていました。当初、試作段階だったものが、現在では実際の生産現場で実行されるの状況となってきたと思います。さまざまなソリューションに関しても、みなさんが使える状況になってきていると思います。
ーシーメンスは川上から川下まで製品やソリューションのラインナップがありますが、パートナー企業との取り組みをどう考えていますか?
堀田氏: いろんな組み方があると思います。シーメンスは、ITとOTの両方をやっているので、ITであればパートナーにはいろんなサービスを提供していただく、パッケージ化、商品化してタッグを組む取り組みが考えられます。一方、ハードウエアについては、まだまだだという感触ですので、ぜひハードウエアを売っていただくパートナーがもっと増えてほしいと思います。
ー今回、産業軸でパッケージされている展示が見られましたが、今後産業向けソリューションを展開していく予定があるのでしょうか?
堀田氏: その予定があります。ソリューションはスケーラブルでないといけないと考えております。一件ずつカスタマイズやチューニングを行うのもよいのですがが、基本的な部分は共通化してソリューションとして利用し、クリエィティブな部分で競争すべきだと思います。
ーありがとうございました。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。