製造業において、センサーから収集した、膨大なデータをネットワークを通して収集、解析し、それらをビジネスや製造現場に活用するためには、よりインテリジェントなプラットフォームが必要となる。
IoTプラットフォームというと、「デバイス(モノ)側を制御するためのプラットフォーム」「デバイス(モノ)とクラウドをつなぐためのネットワーク・プラットフォーム」「クラウド上のデータ収集に特化したプラットフォーム」「クラウド上で動くアプリケーションまで含めたプラットフォーム」と様々なレイヤーがあるといえる。
今回は主に、クラウド上のIoTプラットフォームについてだ。
製造業の現場において、製造機械のチョコ停(短期間の停止)やドカ停(長期間の停止)を防ぐために、自社工場のIoT化を考える際、なるべくIoTのために時間とコストを取られたくないと考えるだろう。
そこで、他社が提供するプラットフォームを活用することは、「自前で作る必要がない」という意味でメリットのある選択といえる。
また予兆保全以外にも、クラウド上にあるIoTプラットフォームにつなぐことで、デバイス同士をネットワーク化することができるし、デバイスの状態やファームウエア、ソフトウエアなどを遠隔で管理・監視することもできる。また、リアルタイムでオペレーションを最適化することや、収集したビッグデータを活用した新たなビジネスチャンスをも実現することができるのだ。
SEMIジャパンは、2016年12月14日~16日に開催される「WORLD OF IOT」で、IoTプラットフォームに関するフォーラムの時間を設ける予定となっている。
詳細はこちら >> https://semi-reg.smktg.jp/public/session/view/289?lang=ja
12月16日(金)12:50-14:30 製造業のためのIOTプラットフォーム活用術 | |
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フォーラム概要紹介 モデレーター 一般社団法人 インターネット協会 副理事長 兼 IoT推進委員会副委員長 木下 剛 |
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SAPが提案する製造業IoTプラットフォーム SAPジャパン インダストリークラウド事業本部 IoT/IR4 ディレクター 村田 聡一郎 |
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インダストリープラットフォームの必要要件 (株)インフォコーパス 代表取締役社長 鈴木 潤一 |
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“i”が織りなす オムロンの製造現場革新 オムロン(株) インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 企画室 拡業推進部 部長 本条 智仁 |
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いよいよ実現するIoTが創る新たな世界 インテル(株) アジアIoTセールス 事業開発部 ダイレクター 佐藤 有紀子 |
以下、IoTプラットフォームに対してフォーラムの登壇者にインタビューした。
SAPジャパン
インダストリークラウド事業本部 IoT/IR4 ディレクター 村田 聡一郎氏は、デジタル(ソフトウェア)はフィジカル(ハードウェア)と違って、一度開発したものを再利用するコストが極めて低いため、できる限り自社開発は避け、可能な限り他社が開発したものを利用すべきだという。
また、プラットフォームとして必要な要件を聞いたところ、
- 基盤と呼ぶに足りるスケーラビリティがあるか?
- 国内限定サービスでないのであれば、グローバル展開に耐えうるものか?
- 自社開発が最小化されるくらい、必要な機能と拡張性が提供されているか?
を挙げた。
SAPのグローバルでの事例については、独シーメンスとのインダストリー4.0や、旧イタリア国鉄のトレニタリアの状態基準保全、コンプレッサーの予兆保全、フリートマネジメントなど、様々あるということだ。
インフォコーパス
インフォコーパスは、クラウド上のIoTプラットフォームを提供する企業で、代表取締役社長 鈴木 潤一氏によると、IoTプラットフォームは、デバイスを利用した様々なサービスを行う上で、そのデバイスの稼働状況の確認、不具合等の監視のために利用されるものと考えているということだ。
同社のIoTプラットフォームの特徴でもある、デバイスメーカーの製品情報があらかじめIoTプラットフォームにプリセットされていることで、IoTプラットフォームが広く使われていけばデバイスの普及にも貢献してくと考えている。また、プラットフォーム上でのユーザの利用状況がデバイスメーカーにフィードバックされることで新製品の開発へのヒントにもなるということだ。
工場のラインの稼働状況の監視、工場の消耗材の劣化監視、工事現場の騒音監視等様々な利用事例があり、最近特に問い合わせが多いのは、建物や施設の設備、工場設備に様々な機器を納入しているメーカーのリモート監視およびリモート制御だということだ。
また、同社のプラットフォームは接続や検証が簡便・迅速であることから、上記以外の分野でも、デモや、クイック&スモールスタートの依頼が急拡大しているという。
オムロン
インダストリアルオートメーション ビジネスカンパニー 商品事業本部企画室拡業推進部部長 本条 智仁氏によると、オムロンの考えるIoTプラットフォームは以下の利用シーンを想定しているということだ。
- 工場間でデータの利活用を行う
- 長期間データからの知見獲得
前者については、工場間でロットトレースや装置の異常情報を共有化し、生産性向上のための改善手法、対策を他工場にも展開し、シナジー効果を狙うものだという。
具体的には、ICT各社と共働で日本と中国で基盤製造ラインの見える化ソフトを活用し、双方で製造ラインの生産性を比較。日本での対応策を中国でも展開することで、双方の生産性を上げているということだ。
また、同様のIoTプラットフォームを同社センサー製造装置の予防保全にも活用しているとのことだ。
後者については品質の安定化のために役立つという。具体的には、製造ラインで起きた不良品の因果を特定するために生産パラメータや画像データを長期間保存し分析、活用することで不具合発生要因の特定で良品製造につなげるということだ。
また、生産ライン内にある制御機器の寿命を予測したり、異常発生前に予兆保全を行うことでチョコ停やドカ停を防ぐということも可能となる。
同社では制御機器メーカとして製造現場のIoT化に必要な制御機器を商品化し、製造業ユーザーとして自社の生産ラインに自社商品を使用することで顧客価値検証を進め、製造現場のIoT革新や進化に貢献していくと述べた。
インテル
アジアIoTセールス 事業開発部 ダイレクター 佐藤 有紀子氏によると、IoTプラットフォームにより、コスト削減や予防保全、安全性や信頼の向上、効率と収益性の向上が図れるのだという。
また、デバイス企業にとってみるとIoTプラットフォームによって、安全性や信頼性が獲得でき、非競争領域がオープンなシステムとして提供され、競争領域における差別化ができるということがいえる。
特に製造業においては、詳細なデータを活用してコスト削減や労働者の安全性を向上し、装置の予防保全が可能となるということだ。
インターネット協会 副理事長 兼 IoT推進委員会副委員長 木下 剛氏
本フォーラムのモデレータを担当する木下氏によると、今回のフォーラムに際して、製造業におけるIoT活用対象領域は、コネクテッドファクトリーにおけるロボット、AIと組み合わせた生産管理の高度化にとどまらず、サプライチェーン、サービスビジネスモデルをなどバリューチェーン全体にわたる幅広い応用が想定される。
そこで、製造業向けIoTプラットフォームは、開発の生い立ちの違いや製造業務対象の軸足の置かれ方により利点を的確に把握しておくことの重要性を改めて確認しながら、第四次産業革命の”デジタルマニュファクチャリング”のもたらすロードマップや将来姿について伺ってみたい、と述べた。
IoTプラットフォームの最新情報はWORLD OF IOTで!
WORLD OF IOT(12月14日(水)~16日(金)、東京ビッグサイト)では、展示と
フォーラムの両面でIoTプラットフォームの情報を発信します。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。