ルネサス、産業ネットワーク機器の開発を加速する「RZ/Nシリーズ」を発売

ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、新しい産業ネットワーク用通信プロセッサ「RZ/Nシリーズ」3品種を開発した。日本国内では本年8月(注1)より順次サンプル、ソリューションキットの出荷が開始する。

新製品は、ネットワークスイッチ、ゲートウェイ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、オペレータターミナル、リモートI/Oユニットなどの産業ネットワーク機器に向けたものであり、様々な産業ネットワークプロトコルと冗長ネットワークプロトコルに対応する機器の開発期間を短縮することが可能になる。

同社は、RZ/N1SグループとRZ/N1Lグループのサンプルおよびソリューションキットを2018年前半に提供開始する計画。サンプルソフトウェアとプロトコルスタックは評価ボードとともに提供される。ソフトウェアパートナから提供されるプロトコルスタックは、2017年の後半より提供予定だという。

昨今Industry4.0の進展とともに、生産効率向上を目的としてネットワーク接続された工場を実現するため、ネットワーク機器には、リアルタイム処理用の産業ネットワークプロトコルのサポート、プロトコルゲートウェイ機能、保護されたネットワーク機能、さらには、信頼性が高くかつ効率的な通信を保証するために、冗長ネットワークプロトコルのサポートなどが求められている。

工場の既存ネットワークにおいては、要求される時間制約やネットワーク制御技術の差異により、制御装置と機器間の通信を担うフィールドネットワークおよび制御装置間の通信を担うコントロールネットワークが存在している。

リアルタイム制御が必要とされる前者ではEtherCAT、EtherNet/IP、ETHERNET Powerlink、PROFINET、Sercos、CANopenなどを含むリアルタイム産業ネットワークプロトコルが使用される一方、信頼性が求められる後者ではRSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)、PRP(Parallel Redundancy Protocol)、HSR(High-Availability Seamless Redundancy)などの冗長ネットワークプロトコルが使用される。

これまでは両ネットワークの技術の統一化は進展しておらず、ネットワーク機器を開発するためにはそれぞれのプロトコルに対応したデバイスを採用する必要があったが、新製品は、このような状況に応えるために開発されたもので、フィールドネットワークとコントロールネットワークを同時にサポートできる、ワンチップソリューションとして、産業ネットワーク機器の開発を容易にするという。

新製品の特長は以下の通り。

  1. 同社独自のイーサネット通信用IP(Intellectual Property)であるR-INエンジン(注2)と、5ポートのイーサネットスイッチの内蔵により主要な産業ネットワークプロトコルおよび冗長ネットワークプロトコルにワンチップで対応
    新製品は、ARM Cortex-M3プロセッサを採用するR-INエンジンと、5ポートを有するギガビットイーサネットスイッチを組み合わせた構成となっている。これにより、通信データのリアルタイム処理と低消費電力を実現するとともに、様々な産業ネットワークプロトコルと冗長ネットワークプロトコルにワンチップで対応可能。
  2. エコシステムの提供により効率の高いソフトウェア開発を支援
    ルネサスは、ユーザの評価用に、新製品を搭載するCPUモジュール、各種周辺機能を搭載したボード、パートナ製プロトコルスタックの試作版を含む汎用APIで構成されるソリューションキットを準備している。

    同社は、EtherCAT、EtherNet/IP、ETHERNET Powerlink、PROFINET、Sercos、CANopen、CC-Link IE フィールドネットワーク Basic(注3)などの産業ネットワークプロトコルを機器へ導入する作業を支援するため、プロトコルベンダと協力しており、PORT GmbH社、TMG Technologie und Engineering GmbH社、CANNON-Automoata、Net Module社などの企業がプロトコルスタックを提供する。

    ルネサスは、性能のトレードオフなしに様々な産業ネットワークプロトコルを統一してサポートする汎用APIを提供。これに、対応するプロトコルを組み合わせることにより、ユーザは産業ネットワーク機器の開発時間を最大50%短縮できる(注4)という。

    さらに、高度なアプリケーション開発をサポートするために、ユーザはIAR SystemsのコンパイラであるEmbedded Workbenchや、Linux、Wind River社のVxWorks、Express Logic社のThreadXといったリッチなOS環境を利用可能(注5)。

  3. ハイエンドからローエンドまで3つのラインアップでスケーラビリティを提供
    新製品は、スケーラビリティにより、幅広い性能レンジの産業機器を統一アーキテクチャでサポートする。これにより、ソフトウェア資産の再利用が容易となるため特定のニーズに合わせたプロセッサの選択が可能となる。

    RZ/N1Dグループはネットワークスイッチ、PLC、ゲートウェイなどのハイエンドアプリケーションに適している。RZ/N1SグループはナノPLCやオペレータターミナルなどのミッドレンジアプリケーションに適している。RZ/N1Lグループは主に産業機器の通信部およびリモートI/Oユニットなどのスレーブ機器のアプリケーションに重きを置き、コンパクトで低コストな機器開発が可能になる。

ルネサスは、新製品を、工場ネットワークにおいて主要な産業ネットワークプロトコル、最新の冗長ネットワークプロトコルに対応可能なワンチップソリューションと位置づけ、拡販活動を展開していくという。

注1:販売開始日程は国や地域により異なる。
注2:R-INエンジンは、32ビットマイコンとリアルタイムOSアクセラレータ、イーサネットアクセラレータを統合した、ネットワークのソフトウェア処理を効率的に実行する同社独自のIP(Intellectual Property)。
注3:順次対応予定。
注4:ルネサス調べ。
注5:ルネサスは、Linuxのサンプルコードを提供しているが、すべてのオペレーティングシステムはそれぞれの所有者から提供されている。

【関連リンク】
ルネサス(Renesas)

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