GEは、カスタマーがアセット戦略を構築するためにデザインした同社のスイート製品を、エッジtoクラウドの技術とインダストリアル・アプリケーションにおいて拡張させることを発表した。
これらの追加は、インダストリアル・インターネットのアプリケーション開発プラットフォームであるPredix(プレディックス)を通じて産業における生産性向上に寄与するGEデジタルの主要なソフトウェア・アプリケーションのポートフォリオを補完し、Predixの導入メリットを高めるものだ。
GEデジタルは、エッジ側でのコンピューティング能力を加速させるPredix Edge、企業向けのクラウドであるマイクロソフトAzure と連携したPredixプラットフォーム、アセットからオペレーションへと生産性向上の橋渡しをおこなうソフトウェア、オペレーション・パフォーマンス・マネジメント(OPM)、ユーザーエクスペリエンスを向上させるフィールド向けサービスマネジメント・ソリューション、産業向けアプリ開発をシンプルに実施するための新たなプラットフォームツールを発表した。
あらゆる場所の、あらゆるアセットに’エッジ to クラウド’のインテリジェンスを
ガートナーによると、2022年までにエンタープライズ系のデータの75%はデータセンターまたはクラウド環境以外で生成・処理されることが予測されている。従ってオペレーションを最適化するためには、エッジ側とクラウド環境の両方でコンピューティングをおこない、情報を管理する能力がインダストリアル企業にとって重要になる。
顧客のエッジ戦略を加速させ、あらゆるアセットをインテリジェントにするために GEデジタルはデータを生む機器の可能な限り近くでアナリティクスを実行させるため、Predix Edgeを性能向上させた。Predix Edgは、コネクティビティ、遅延時間、規制やその他の制約などの諸条件がある顧客にデータが生成される環境の近く、またはエッジ側でアプリケーションの展開を可能にする。
主な機能拡張は以下となる。
- Predix Edge Management:1台のコンソールから最大20万台のエッジ・デバイスに接続し、サポートを実現
- Predix Machine:マイクロサービスを利用したアプリをユーザーの仮想化されたデータセンター、またはGEやパートナー企業のサーバークラスの機器にあるエッジ側で実行。従来まではクラウドサービスとしてのみ利用可能であった
Predix Edge Managerをサポート。 - Predix complex event processing (CEP):より速く、効率的なアナリティクスを実施し、遅延時間が少ないイベント処理を実現。2018年第1四半期から提供開始
これらのエッジ・ソリューションは、企業がインテリジェントなアセット管理から自動化、分散システム全体にわたるインサイトに基づいた機械学習に移行するのに役立つ。
事例としては、EdgeLINCがある。これはGEトランスポーテーションで開発された包括的なエッジtoクラウドなソリューションと Predix Edge Manager、Predix MachineとAsset Perfomance Managemment(APM)を組み合わせたものだ。
EdgeLINCは鉄道事業向けアセットなどのように絶えず通信・稼働しているような機器においても効率的なデバイス管理、設定、ストリーミングアナリティクスを可能にしている。
マイクロソフトAzure上でのPredixプラットフォーム
GEデジタルとマイクロソフトは、先進的な産業向けPredixプラットフォームサービスをマイクロソフトAzure上で提供する。
2017年第4四半期に北米から提供を開始し、2018年にはグローバル展開を予定しているという。このパートナーシップにより、Predixの利用顧客に、マイクロソフトのグローバルなクラウド環境とともにデータ環境、ハイブリッド機能、先進的な開発およびデータサービスを提供することでき、世界中の利用顧客が産業用機器からのインテリジェンス取得を可能とする。
両社のパートナーシップによりITシステムとOTを結びつけ、企業システムとデータを共有された環境にひとつにすることができる。ITとOTは伝統的に分かれていたが、マイクロソフトとGEはこの両者をつなぎ、顧客がより手軽に性能を向上させ、運用上の効率性を高め、自動化からインテリジェンスへと移行させることを実現させる。
インダストリアル・インターネットをアクショナブルにする先進的なアプリ
リスク低減のため、そして生産性向上のためにアセットの運用や、機器のメンテナンス・ニーズについて理解することが必要だ。そして産業用機器から価値を導き出すアプリケーションであるAPMと一緒に、GEデジタルはポンプやバルブ、熱交換器といった機器のオペレーション上のパフォーマンスを向上させる補完的なアプリケーションを導入し、包括的なアセットマネジメント戦略をさらに促進させる。
この新しいオペレーション・パフォーマンス・マネジメント(OPM)によって売上と利幅を向上させ、プロセスのスループットを最適化し、工場や現場の収益性を向上させる。OPM はリアルタイムデータとヒストリカルデータを利用し、先進的なアナリティクスを活用することで、顧客のオペレーションに関する意思決定をサポートする。
このソリューションは、プロセスが計画とは異なっている場合等に早期にアラームを発信し、オペレーターに情報を提供し、問題解決のための時間を提供し、ビジネスゴールを達成するための予防保全的な行動を促す。
GEデジタルのOPMソフトウェアは当初は鉱山事業を目的として、そして2018年早期に他の顧客に展開予定だ。OPMソリューションはすでに以下のような顧客に利用されているという。
- プラチナ鉱山の事業会社は全体のスループットを10%向上させ、継続的に設計上のキャパシティに達するようになり、回収量を1.5%増やした。
- 鉱山事業会社ではスループットを5.5%増加させ、電力消費を2%低減させた。
- 金の鉱山事業会社では回収量を1.5%増やし、プロセス効率の向上により、機器コストを低減させた。
フィールドサービスマネジメント・ソリューションを強化
生産性を向上させ、顧客によりよいエクスペリエンスをご提供するためのテクノロジーを探しているサービスにおいて、GEデジタルの傘下に加わったフィールドサービスマネジメント(FSM)のServiceMax from GE Digitalはフィールドサービス・マネジメント(FSM)スィート製品にサービスオペレーションの効率向上と先進的なアナリティクスを提供する複数の機能向上を発表した。
サービス回数を予測することができる人工知能(AI)は Apache Spark AIエンジンと統合し、サービス時間の見積もりを向上させることができた。加えて、新たなアプリケーションはサービスプロバイダーにFSMデータを同じデバイスにインストールされているサードパーティのモバイルアプリと共有することが可能となった。
スケジュール最適化の新たな機能によって、複数訪問時のワークオーダーで独立したジョブスケジューリングを可能にし、これは初回解決率の向上を目的とした機能となる。GEデジタルのFSMポートフォリオの一部として、これらの新機能によって、事業者はダウンタイムを最小化させ、コストを最適化し、リスクを削減し、サービスチームの生産性を向上させることができるという。
先進的なアプリとデジタルツイン・ソリューション
GEデジタルはインダストリアル向けアプリを構築し、アセットパフォーマンスマネジメント(APM)スイートを拡張するためにPredix Studioを発表した。
2018年第1四半期に、Predix Studioはカスタマーにアプリを拡張させる能力を与え、産業分野の専門家や一般の開発者に少ないコードで高い生産性の環境においてもアプリ開発をおこなうために開発プロセスをシンプルにする。
市井のソフトウェア開発者は、信頼のおけるエンジニア、OTオペレーターとドメインの専門知識はあるが、コーディング経験はほとんどないビジネス専門家で構成されている。AIと機械学習を組み合わせたPredix Studioは、産業用IoTアプリケーションの開発を自動化し、アプリケーション開発を新たな種類の開発者に開放する。
顧客が新しい成長機会を活用するために、GEはデジタルツイン・アナリティクス・ワークベンチを開発した。これは、Predix上で独自のデジタルツインを素早く簡単に構築するためのアルゴリズムとテンプレートのライブラリを活用するソリューションだ。
産業用機器のマネジメントにおけるGEの経験は、数百万時間の機械データを生成し、様々な条件で機械がどのように稼働するのかを深く理解している。物理データをデジタルツインモデル化することで、GEは物理マシンのパフォーマンスをよりよく予測し改善するアプリケーションを提供できる。
アナリティクス・ワークベンチを使用して、新しいデータストリームで既存のデジタルツインを強化することができる。 例えば、ドローンを使用して風力タービンブレードやパイプライン、燃料貯蔵庫を検査する発電事業者は、取得した目視検査データを発電機器や系統インフラを管理するためにすでに使用しているデジタルツインに統合することが可能だ。
アナリティクスワークベンチは、ユーザーが機械学習機能を実装するのに役立ち、時間の経過とともにそれらのモデルを改善することができる。
【関連リンク】
・GE(General Electric)
・マイクロソフト(Microsoft)
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。