NECは、対象物から視線を外さないアイズフリーでの操作を実現する「ARmKeypad(アームキーパッド)」の新たな機能を用いて、製造・物流、その他の分野でのピッキング業務をAR(拡張現実)で支援するソリューションを開発した。
なお、同社は病院の薬剤部や工場の現場で同製品を用いた実証実験を行い、作業ミスの改善や作業時間の短縮などの効果を確認した。
今回の新たなアームキーパッドでは、腕に表示される選択画面をタッチ(振動)することで入力可能とするこれまでのアームキーパッドに対し、スマートグラス上に表示される選択画面を腕の傾きと腕へのタッチにより入力可能にすることで、対象物から視線を外さないアイズフリーでの操作機能が追加されている。
これにより、視線移動により取り間違いなどが想定される現場や、作業のスピードが求められる現場での活用に有効となる。
背景
昨今、現場業務をハンズフリーで行うためのスマートグラスの導入が進んでいる。NECは、2015年11月、スマートグラスとスマートウォッチを用いて作業者の腕を仮想キーボード化するアームキーパッドを開発し、実証実験を進めてきた。
アームキーパッドは、腕に表示される画面をタッチ(振動)することで入力を判別する技術だが、視線移動により取り間違いなどが想定される現場や作業スピードが求められる現場などでは、対象物から視線を外さないアイズフリーでの操作が求められていた。
アームキーパッドを用いたARによるピッキング支援ソリューションの特長
1. 作業手順を見える化
アームキーパッドでは、作業手順がスマートグラス上にARでガイド表示される。ピッキング業務では、棚に保管されている対象物の位置をARでガイドすることにより、経験が浅い作業者や作業内容の変更が頻繁にある現場でも、ミスなく効率的に作業を進めることが可能になる。
2. アイズフリーでの操作を実現
腕にとりつけたスマートウォッチの加速度センサを活用し、腕の傾きでスマートグラスに表示される選択画面から選び、腕へのタッチ操作による入力が可能。これにより、視線を対象物から外すことなく確認登録ができる。
また、視覚による操作フィードバックのほか、体性感覚による操作フィードバックを活用できるため、感覚的な操作が可能だ。
同ソリューションを用いた実証実験例
現在、病院の薬剤部や工場の現場で本製品を用いた実証実験を行っており、作業ミスの改善や作業時間の短縮などの効果を確認した。
1. 病院の薬剤部での実証実験
病院の薬剤部にて薬剤ピッキングの作業ミスを防止する実証実験を行っている。グラスカメラで処方箋バーコードを読み込み、薬剤ピッキングリストをグラスへ表示、薬剤棚をみるとどの棚からどこにある薬をピッキングすればいいのかがARでガイド表示されるというものだ。
実際に薬剤を取り出し、腕を傾け確認登録をすると取り出した薬剤がピッキングリストから消去される。同実証実験では、従来1日の業務300件に対し、約5件の発生が想定されるピッキング時の取り間違いを0件にできることが確認された。
2. 製造現場での実証実験
NECネッツエスアイ株式会社のsDOC埼玉センターで、ICT機器の修理業務における物品管理作業を効率化する実証実験を行っている。
修理見積時や修理作業の際、預かった機器を一時保管している棚から探す作業を、ARによるガイド表示により作業を支援するものだ。同実証実験では、従来に比べ作業時間を18.2%削減できることが確認された。
【関連リンク】
・日本電気(NEC)
・NECネッツエスアイ(NESIC)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。