今年の国際ロボット展は東京ビッグサイトで612社・2775小間の史上最大規模で4日間行われている。産業用ロボットはもちろん、他に介護や福祉ロボット、災害対応ロボットや生活支援ロボットやその関連の要素技術が展示されており、興味深い展示会である。
大規模の展示会であるため、まとめて紹介したい。
今回のロボット展全体を見ると、いくつかの人気トレンドが明確である。ロボットの小型化も人気トレンドであるが、会場中によく見かけるのは協働ロボットだ。それはロボットに関する規制緩和や安全性技術の進化による作業員と共同作業が可能なロボットのことである。
IDEC社、 INABA社、 三菱電機社、Nachi社、スイスに本社を置くABB社など、複数の企業が今年協働ロボットを今回展示した。
また、人間とモノとぶつかる可能性があるため、協働ロボットは外力追従が大事であるため、トヨタの新しいT-HR3アンドロイドを始め、東京ロボティクス社など、数社が同技術を実現している。
ロボットが物流分野で積極的に使われてきたが、今回AIや高度なビジョンシステムによってピッキング作業や物流ソリューションが大きく改善されたソリューションが多数展示された。
もちろん、IoTやスマートファクトリー系ソリューションも紹介されている。しかし、IoTソリューション開発において、制御プロセッサーの違いによって他社メーカーのデータをとれないため、各メーカーは独自の制御システムに対応できるソリューションのみ開発できるそうだ。
KUKAの「KUKA Connect」、ABBの「ABB Ability」、ファナックの「FIELD」や「ZDT」ソリューション , 川崎重工の「K-Commit」 、安川電機の「i-Mechatronics」、Hirataの「Edge Connect」、三菱電機の「e-F@ctory」などの企業がIoTやスマートファクトリー関連ソリューションを紹介した。
今回展示されたIoTやスマートファクトリーソリューションは一般の工場向けIoTソリューションと似ており、見える化、ゼロダウンタイムや予知保全を実現する。
またARやVR技術をロボット技術に合わせる実例もあった。ABB 社はシミュレーションソフトRobotStudioによるVR対応バーチャル・コミッショニングを紹介した。
東芝機械株式会社はARを応用したタブレットによる保守作業の見える化とデータ蓄積による共有化ソリューションを公開した。川崎重工は「K-Roboride」というVR アトラクションを展示した。
生産力の維持やインフラの老朽化対策、または介護支援としてロボットやドローン開発をサポートしている政府イニシアティブは興味深かった。
NEDO が「Robots and AI for happiness」を掲げ、「災害対応」、「インフラ維持管理」、「ものづくり」や「サービス」といった分野に集中している。今回の展示会でNEDOが支援したプロジェクトとして水中点検ロボット、軽作業用のパワーアシストスーツ、インフラ点検検査ドローン(GPS環境が整ってない環境でも稼働可能)や飛行経路再生成・衝突回避ができる自立飛行ドローン、生活支援に応用する予定AI搭載ハンドリング・ロボットなど展示された。
経済産業省は「ロボット介護機器の開発・導入の支援」プログラムを推進しており、今回は同プログラム支援による開発された介護機器・ロボットを展示した。
その中は屋内ロボットウォーカーや屋外移動支援用のロボット・アシスト・ウォーカーRT.1、RT.2を始め、排泄支援ロボットやサンヨーホームズの開発中の転倒衝撃低減アクチュエーター「寄り添いロボット」を展示した。
会場の所々に他にもパワーアシストスーツ(ニッカリ社製)、東京理科大学のマッスルスーツ、やジェイテクト社のパワーアシストスーツという類似製品を見かけた。また、今仙技術研究所は無動力の歩行支援機アクシブと全身まひの介護用電動簡易移乗機[i-PAL] の展示と試着体験を行っていた。
もちろん、セミナーとデモは多数行われており、その中私は最近発表されたトヨタ自動車の第3世代のヒューマノイドロボットT-HR3のデモを見ることができた。操縦者と同じ動きをT-HR3にさせるデモもあったが、人込みでうまく撮ることができなかったため、下記は同ロボットの器用な動きの動画である。他のアンドロイドと比べて、実用性が明確である。
https://youtu.be/GWKIcQqjjVs
さらに、エンターテインメント用のロボット展示が注意を引いた。その中、大阪のMUSCLE社とソフトウェア開発を担当したMPLUSPLUSが数種類のダンスロボットを紹介した。黒子ロボットはティーチング機能により教えた動きを起動データとして保存し実行する。ロボティック・コレオグラファーと呼ばれるロボットはパフォーマンス専用ロボットアームプロジェクトであり、ユーザー自身がモーションデータを作製できる。
産業技術総合研究所はヒューマノイドロボットを研究しており、今回は働く人間型ロボットの実現を目指すHRPシリーズロボットを展示した。そのうちHRP-4Cが日本人女性の平均寸法に近い外見で作成され、エンターテインメント応用に開発された。HRP-4Cの新しい振り付けをしたい場合、すでに設定された動きから選択し、曲に合わせることができる。
https://youtu.be/kfGKN1vYpeY
もう一つ目に触れたロボットはパンゴリンロボットジャパン社だった(親会社は中国にある)。展示されたロボットの中、国内でよく見かけるPepperロボットを思い出させる外見のAliceとAmyロボットだが、Amyはレストランで注文を届けてくれるロボットだ。
二つのトレイが設置されたAmyは自立歩行ロボットであり、フール充電で8時間稼働可能だという。
https://youtu.be/D4tBxnM6_hE
レストランの面積を事前にマッピングし、各テーブルの位置情報を登録することで、Amyが注文を届けてくれるという仕組みだ。もし、人間にぶつかりそうになった場合に、Amyが一時的に停止し、「すみません、道を開けてください!」と声かける。注文が届いたら、顧客が独自で皿を受け取り、ロボットの手を触ると、ロボットが設定された位置に戻る。
今回の展示会でロボットが機能性面でますます実用的になっていると実感した。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。