IoTでは、リアルな世界とバーチャルな空間をつないだり、異業種間でのデータ連携が必要だったりする場合が多い。そこで、企業間連携をするための「共創」に取り組むことがある。IVI(Industrial Value Chain Initiative)は、様々な製造業が、いろいろなテーマに基づく取り組みを、企業の垣根なく行っている。そこで、今回は、IVIの福本氏と鍋野氏にIVIの取り組みと日本の製造業についてうかがった。(聞き手:IoTNEWS代表 / 株式会社アールジーン代表取締役 小泉耕二)
IVIについて
小泉:早速ですが、IVIについてご紹介いただけますか?
福本:もともと日本機械学会 生産システム部門の「インターネットを活用した「つながる工場」における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会」が母体でした。そこから、2015年6月に設立されました。
はじめは任意団体で設立をしたのですが、翌年の2016年6月に一般社団法人になりました。
ちょうど2015年は、「インダストリー4.0」という言葉が、日本で流行りだした頃です。日本は2014年ころまでは、ドイツやアメリカの標準化の動きに出遅れた状況であり、日本政府も日系企業もこれらの動きをまとめるには至っていませんでした。標準化活動に出遅れれば、日系製造業にとって不利なグローバル標準が策定される可能性があり、日系企業のモノづくりの強みが標準化の促進により失われる可能性もありました。その中で、日本の製造業の、現場や匠の技などの「強み」をさらによくしていきたいという思いで設立しました。
小泉:IVIってあまり会社っぽくないというか、個人的にやるっていうかというイメージがあります。
鍋野:経緯的に、もともとが学会組織で、かつ日本機械学会の中でも、たくさんある分科会のうちの一つだったっていうところが大きいのではないでしょうか。
2015年というタイミングで、任意団体という形で一つの組織になりましたが、やっている活動内容や、やり方に関しては、学会組織の分科会の頃とそんな変わっていないと思います。
現在、急激に会員が多くなり、「つながる工場」というテーマがトレンドの中に入っていますが、やっている内容や、主要な人たちは変わっていません。
福本:一方で、IVIに誰の推薦もなく正会員で入れるのは、「モノを作っている工場」を持つ企業だけなのです。
鍋野:製造業だけですね。
福本:コンサルティングファームとか、SI企業などのIT企業は推薦がないと入れません。そして、入れたとしても「サポート会員」という位置付けになります。
ただ、サポート会員だからといって、例えばワーキング・グループのリーダーになってはいけない、といったルールはありません。
小泉:製造業でも、工場を持たない製造業の方は、多くいらっしゃると思いますがそういう企業はどうなるのでしょうか。
福本:ファブレス企業は問題なく会員になっていただけます。そういう意味では、「モノを作る機能」を持っていればいいだけです。
小泉:なるほど。今でも、募集はされていますか。
鍋野:いつでも募集をしていて、結構出入りもあります。
活動の内容をうまく上席者に伝えることができない場合や、具体的な成果が出せないと、活動に対する理解がされないことで退会する企業もあります。
積極的に参加して、自分たちのやりたいことを、自分で実現していく、要はイニシアティブ取りながら、ちゃんと活動をしていかないと、「なんで参加しているの?」「仕事しているの?」「会社にどんな効果があるの?」と社内から言われてしまう場合があるようです。
小泉:現在、どういうワーキング・グループがありますか。
鍋野:現在22あります。
小泉:成果って一般の人でもみることができるのですか。
福本:サマリーだけ見ることができます。例えば実際の会員企業の工場からでてくる実証実験のデータなどは、参加企業間やワーキング・グループの中で、個別にNDAとか結んでいる場合もあるため、非公開なケースもあります。
鍋野:知財や、特許に絡む内容もあります。
IVIの過去のワーキンググループの活動内容。
過去の各ワーキンググループのサマリー資料を入手できる。・2017年度中間
https://iv-i.org/wp/2017/09/11/symposium171012/
・2016年度
http://iv-i.org/wp/2017/04/20/symposium170309/
・2015年度
https://iv-i.org/events/160310.html
ワーキング・グループでの活動の実際
小泉:ワーキング・グループでの取得データですが、取ってみたら案外使えないデータだったとこともあるのですか。
鍋野:それも一つの成果です。「やってみないと分からない」ということは、結構ありますから。
結局、ユースケースのほとんどは机上の空論です。「あるべき姿」が「本当に有効」なのかということは、実際にやってみないと分かりません。
IVIの一番の特徴は、会員がみなさん工場を持っていらっしゃるので、データが実際に流れる、そして、そのデータを使って評価ができる。実証実験ができる。ということでしょう。
小泉:実験の中で、何か設備を付けなければいけないという場合、皆さんで費用負担をするのですか?
福本:そうです。基本的には参加企業が持ち出してやるかたちになります。
例えば、実証実験をやるためのプラットフォームが必要な場合、いくつかの企業がプラットフォーマーとして名乗りをあげて、実証実験用に提供していくことになります。
他にも、実証実験のためにセンサーを付けるとか、工作機械に手を入れるといった場合、実証実験の場を提供している企業が持ち出しでやっている場合もあります。
そして、実証実験の結果、実務において本当に役に立つならよいのですが、そうではないケースもありえます。
鍋野:IVIはたぶん、ほぼ手弁当で運営されています。当社も、毎年持ち出しています。
小泉:そうなのですね。私が、取材した企業では、実際にIVIの実証実験で使った結果、「そのデータを取るプラットフォームがどうあるべきか」という検討から生まれたものを製品化して最近リリースされたと伺っております。
福本:そうです。まず業務シナリオを作ります。それを、20個なら20個のモデルとしてつくっていくのです。その20個のモデルを1個にまとめてみたときに、その中で共通なものがある。それを「リファレンス・モデル」としてフィードバックして、プラットフォーム・リファレンス・モデルを作り出します。
これを毎年繰り返すと、「リファレンス・モデル」が成長していくわけです。
それで、プラットフォーム・リファレンス・モデルに対して、実際の現場とのマッチングやギャップの検証をしていくことになるので、プラットフォーマーから見ると、ユーザ企業が実データでプラットフォームの有用性を検証してくれるという状態になります。これって、すごいメリットですよね。
小泉:実際には、なかなか試せないですものね。
鍋野:通常は、新しい製品だとか、試してみたいことを、そのままテストできる環境を持っている企業はないものです。
小泉:一方で、実際、協力してくださる工場をお持ちの企業にとっても、ある意味チャレンジングですよね。
鍋野:最初は結構ネガティブな場合すらあります。
福本:ただ、メリットもあると思っています。
そんなに大量の費用を捻出しなくて、いろんな企業の意見を聞きながら、具体的な実証実験の場を得られるからです。
実証実験の場を提供する企業から見ても、逆にプラットフォーマーや、SIベンダーから見ても、生のデータを使った、あまりリスクのない実証実験ができるというメリットがあります。
ワーキング・グループに参加している人にとっても、「あるべき姿」のモデルに対して「実現性があるか」という現場がリアルに見ることができる。
鍋野:実際の実証実験では、実験に使ったソリューションについて、かなりシビアに「使える、使えない」の判断を下されます。
小泉:例えば、工作機器の性質によって、「このソリューションテストした工作機器では使えるけど、違う工作機器だったら全然使えない」といったことはあるものでしょうか?
鍋野:環境はあると思います。しかし、「どんな資材を使うか」とか、「どんなシステムを使うか」といった環境面については、事前のシナリオとか検討段階のところで議論になっているはずです。
福本:でもやってみたら想定と違ったということは起きます。
鍋野:われわれのワーキング・グループで一番多いのは、やりたいことに見合ったシステムが見つからなかった。だから、実証実験できなかった。というケースです。
あるいは、やったのだけど、データが足りない。その結果、予測はつくのだけど十分なデータには達していなくて、継続でデータを取り続ける必要があるということは結構あります。
予知保全のワーキング・グループで起きたケース
福本:例えば、予知保全の実証実験をやろうとすると、日本の工作機械の性能が良いため、故障のデータが取れません。その結果、定常状態のデータのみをシステムに取り込むことになるので、定常状態からある一定値のズレがあったらアラートを発行するといったことしかできないのです。
そうすると、本当に定常状態からズレが発生したからといって壊れるかどうかは分からない、という状態で実証実験が終わってしまいます。
鍋野:去年、うちのワーキング・グループでWatsonを使ってみて、「トラブルが発生したときの正答率」を確認しようとする、QAデータベースを作ったのです。
キーワードや、言葉、状況から判断して、「たぶんこれが原因だろう」と推測するものです。
小島プレスの工場を使わせていただいたのですが、過去の問合わせ記録などが9千件ほどありました。
9千件をデータベースに読み込ませてみたのですが、9千件くらいだと正答率は高いものでも70パーセントくらいで、低いものになると5割を切ったりしてしまうのです。
「もっとデータを入れられないのか」という話にもなったのですが、さすがにトラブルが起きない以上、データは増やせませんでした。
また、Watsonの場合は、1回に投入できるデータが150件より少ないと入りません。だから、データをある程度ためてからじゃないと、投入できない。
そこで、同じデータを何回も食わせてみたらどうなるかについても試したのです。その結果、実際には12回目で正答率が1.2パーセント落ちたという結果になりました。
小泉:落ちたのですね。同じデータでは駄目なのですね。
鍋野:結果から見ると、「悪いデータに引きずられた」ということですよね。でもなぜ落ちたかは、誰も説明できなかった。
小泉:アノテーション(データベースを作るときの前処理)するところが、すごく工数がかかるじゃないですか。
日本の場合、アノテーションの作業も、コストの高いコンサルが一生懸命やったりしています。やっている人も、やらせている人も不合理というか。払っている方はお金だけ払わされて、やっている方も、「おれ、こんなことしに来た訳じゃないのに・・・」みたいになっています。
鍋野:だから、データをしっかり集めるということと、もう一つはそのデータを受け取るシステムをしっかり作らないといけないのです。
うちのワーキング・グループの場合、3年間かかっていますが、一番仕上がってきているのは、ウイングアーク1stが提供している、MotionBoardの可視化のところですね。すでにBIツールというカテゴリを超えています。
お客様から「こういうグラフが出したい」とか、「こういうトレーサビリティが見えないと嫌だ」とか、そういうのを受けて、どんどん開発してもらったという経緯はありますが。
福本:データも、ボリュームだけじゃなくてバラエティも必要だし、いわゆる消費データみたいなデータと違って、クレンジングもちゃんとしてあげないと使い物にならないのです。
インダストリアルなビッグデータを扱おうとするときは、それなりに前処理が必要になります。
IT企業のインダストリー分野への参入
鍋野:結局システムとデータがないと、現場で本当に使える道具立ては出てこないし、ITベンダーさんは現場分からないですから、「何が見たい」、「どう見たい」、「何が使えて、何が使えないか」、っていうことを一緒にやるという場が必要だと思います。
自社の中だけでやると、どうしても自社のルールが前提になるので、どこでも使えるというものは作れないと思います。
自社内で作った製品が使えるだろうということで、ある企業が作ったものを持ってこられることも始めは多かったのですが実際には使えない場合が多かったのです。
小泉:なるほど。
鍋野:あとは、結構大きいベンダー企業の場合、IT部門と製造部門、社内でも生産系部門と情報システム部門とだと、温度差や見ている目線が違うということもおきます。
小泉:可視化と予知保全以外のテーマはあるものですか?
企業間連携によって生まれる価値と課題
福本:中小企業では、IoTというより、「複数の企業が連携をして、デジタルの情報をやりとりできるようにしよう」という取り組みをされているケースがあります。
小泉:複数の企業が連携してというのは、「受発注」とかですか?
福本:はい。共同受注などです。
鍋野:システムを共通化しましょうという取り組みや、お互いに補完し合うってかたちで共同受注の仕組みを一緒に考えてみましょうというのがあります。
福本:共同受注をしたときに、お互いの工場の進捗度合いを共有できるようにしましょう、といった話もあります。
中小企業では1日単位で情報を見ているところがありますが、リアルタイムで見るという取り組みをされています。
小泉:そっちの方が、むしろデジタライゼーションっぽいですよね。
福本:ある意味そうですね。
鍋野:デジタライゼーションのところの話って、日本だとあんまり出てこないような気がします。あるいは、逆に最近になって話が出てきたような印象です。通常、欧米だと逆なのですが。
欧米はむしろ、先にデジタルの話が出てきています。デジタルトランスフォーメーションは一般的になりました。
福本:一方で、IVIでもリファレンス・アーキテクチャを作っていますが、日本がボトムアップで作っているリファレンス・アーキテクチャが、意外とドイツから注目されたりしています。
実際には、ボトムアップにも悪いところばかりではなく、良いところもあるのですね。
鍋野:アプローチについては、ボトムアップでやっているところって日本くらいしかないです。
ドイツの場合、フランホーファーなどは、やるべきテーマを考えると、それを割り振りするのです。「じゃあここはあなたの領分で」といった感じで。
そうすると、それぞれがやるべき領分を実施して、まとめ上げて一つ工程にするのですが、最初から振り分けができているから、「隙間ができている」ケースがあるのです。
そこの隙間が意外に大きかったり、つながっていなかったりすることがあります。
これが、逆にボトムアップの場合は、最初から繋げる方から始まりますので、隙間はないのですが、今度は「境界線が分からなくなってしまう」ということが起きます。
福本:ちなみに、IVIのリファレンス・アーキテクチャは、ものづくりの一番小さい単位から始まります。
鍋野:インダストリー4.0だと、先にフレームワークを決めて、品質があって、トレーサビリティがあって・・・と、上から落ちてきます。
その結果、最終的に大きなマップができるというのが従来のアプローチなのです。
一方で、IVIの場合は、1個1個ピースを集めていって、全部並ぶと出来上がっている。多少抜けがあるかもしれないけど、そこはいずれ埋まるよねという発想です。
ある意味、モザイクみたいな作り方しています。
福本:面白いのが、ドイツが定義をしている、インダストリアル・データ・スペースとIVIが定義をしている、一番小さい単位をつなぐという概念が非常に似ているのです。
だから、ボトムアップでやっても、トップダウンでやっても、この「つなぐ」という概念はできるのだなということがよく分かりました。
鍋野:ただ、一つの企業とか一つのテーマだと、やっぱり部分、部分、になるので、大きなマップはほしくなります。階層ももちろん違います。
それで、最終的には情報があまねく共有できていたり、自分たちの領域ではないんだけど、知っていた方がいいという情報をお互いが持ちたいというイメージがあるのだと思います。
「共有しない」カルチャーは、市場の成長を阻害する
小泉:アプローチの違いは分かったのですが、欧米との比較でカルチャー的に差になるところはどこですか?
日本はクローズドで、欧米はオープンとも言いますが。
鍋野:競争優位性というか、「デファクトスタンダードになりたい」と考える企業が多いです。
日本のクローズドな環境では、情報を「共有しない」となりがちです。しかし、実は、「共有しない」というと、「そもそも市場が成長しない」「囲い込みって成長しないモデル」となるのです。
日本の企業で非常に不思議なのは、例えば何か特殊な製品、独自の製品作りましたっていうと、全部内製化しますよね。
ところが、私が10年間在職した米国デュポン社(現在はダウ社と統合してダウデュポン社)などの場合ありえないです。一般的に3割は外部に製造委託しています。
わざと競合とかにもバラまいて、むしろマーケットが広がることを狙います。なぜなら、成長しないマーケットにいても仕方ないですから。
小泉:では、例えばスマートフォンの分野でアップルからすれば、中国の製造の人たちがすごく頑張っているのは良いことなのですね?
鍋野:そうです。知財を管理するっていう意味では、やるべきことはありますが。
iモードなども、どんどん公開すればよかったと思います。ライセンシーとかじゃなく、一気に公開しないと広がらない。コンパクトHTMLか。で、すべての仕様だとかアーキテクチャも。
ただ、どうしても「このチップじゃなければ動かない」とか、どうしても「独自のノウハウが必要」とか、そこは「特許化されている」とかは必要です。クアルコムみたいなやり方ですよね。
小泉:なるほど。クアルコムは、まさにそれで儲けていますもんね。
鍋野:ファブレスで、あれだけの利益が稼げる会社ってそうそうないですからね。
だから、ああいうモデルを考えればよかったのに、全部自前で。ただ、ドコモさんの場合は、技術は持って、作るのは各携帯会社とかに作らせていましたから、ある意味近かったのかもしれないのですが、あくまでも国内の企業だけしかやっていなかったのが敗因でしょうね。
小泉:あの当時って、コントロールできない企業に作らせて、セキュリティホールがあったらどうするのだ、といった守りを固める嫌いもありましたから。
鍋野:最近の製造業はそんなこと考えないですよね。コストダウンしようと思ったら、カスタムチップとか、もうこれ以上できないっていうところまでやって、そのあと中国に出しますよね。
その結果、中国発で汎用品を使った同じようなものが出てきます。
たとえ、性能が悪くても、本当にそこら辺で売っているものでコストダウンして、医薬品でいう、「ジェネリック」が出てくる。
それが逆に市場を拡大するのです。
製造業の未来
小泉:製造業の未来について、IVIとしてお考えになっていることはありますか?
福本:IVIも中長期的に考えていて、今年から若手を中心に、「未来プロジェクト」というのを始めています。要は、未来の製造業の姿ってどこなの、という話をしていっているのです。
例えば、マス・カスタマイゼーションというと、それは究極にそうなっていくのだけど、実際には社会全体で対応していかないといけない。という話があります。
「社会全体で対応していく」という意味は、われわれみたいな大企業では簡単にいきません。
だから、中小の「コンビニ型工場」と呼んでいるのですが、例えば、街のホームセンターみたいなところとかが、すごくユーザに一番近いところで、マス・カスタマイゼーション最後の、ラストワンマイルを担うといった、社会全体での変化が起きないといけない。といった議論をしています。
SMU(スマート・マニュファクチュアリング・ユニット)間をどうやって連携していくのだという話題もあります。
他にも、インダストリー4.0の中に、アドミニストレーション・シェルっていう概念があるじゃないですか。それで、もし日本の匠の技術が全部デジタル化できるようになってくるとするならば、匠の技術自体がデジタル化して吸い上げられていくというリスクがあるといった話もしており、オープン&クローズの概念に対応できる日本型のアドミニストレーション・シェルが必要だといった話もしています。
小泉:つまり、ある程度のところまでは、集中的、セントラルキッチンみたいに作っていくけど、それを実際にレストランに運んでいって、配膳する前にちょっとだけカスタマイズして、味付け変えたりとかして出していく、みたいな話が一つあるということですね。
その作っていく過程の中で、匠の技術みたいなのが存在しているのだけど、そこもいろいろな技術革新によって、デジタル化されていく可能性が高くなる。
そこのところをどういうふうに日本は、デジタル化して、先進的にやるなり、守っていくなり、どうやって権利やノウハウを自分たちで持っていくかということを、もっと考えなきゃいけないっていうことですよね。
福本:そうです。
一方で、日本は、製造人員とか、生産人員は減っていくわけなので、それをある程度バンキング的に共有をしていく仕組みも必要になります。
鍋野:そういう意味では、たぶん、同じテーマで、他社の人間、場合によったら競合会社とディカッションをする場がこれまでなかったのかもしれません。
学会というアプローチもありますが、一緒にデータを取得したり、検討まではしないですからね。「発表し合う」というのはありますけれど。
そうすると、たぶんIVIは、テーマの選定の時点で入ってきたときに横に競合会社がいるわけですよ。
たぶん、福本さんのワーキング・グループなどは、ある製造企業の実証実験をやる際に、その競合企業が数社いるという状態ですよね。
鍋野:マーケットを国内に限ってしまうとできないのですけれど、マーケットがグローバルになったり、どこと戦うかは分からない、当然中国があって、ヨーロッパがあって、北米があれば、ニーズも目的も変るわけです。
そうすると、自分たちの考えだけでは、たどり着けない。なぜなら、持っているマーケットや、アプローチの経験値が、それぞれ違っているのですから。
それで、IVIであつまって、「当社は、北米に進出したけど、こんなんだったよ」っていう話が一言聞けるか、聞けないか。これは結構大きいと思いますよ。
小泉:大きいですね。なるほど。
鍋野:そうすると、やってはいけないことやがわかったり、失敗をする前に「じゃあ、これはやめておこう、外しておこう」って思いますよね。
同じ日本企業同士で、日本国内がマーケットじゃなければ、そういう話もできるわけですよ。
福本:というか、日本の市場の中だけで競合しても、もう意味がないですよね。間違いなく日本のマーケットは縮小していくので。
鍋野:少なくとも自動車と機械においては、もはや国内マーケットじゃないですよ。
全世界の5パーセントもない自動車。工作機械の半分は海外。日本国内で喧嘩する意味があまりないです。
小泉:IVIには、海外の企業も入っているのですか?
福本:入ってきていますよ。例えば、一番最初はドイツの企業で、シーメンスとか、ボッシュとかベッコフです。去年くらいからインテルも入って、今年はシスコも入ってきました。
アジアの企業では今年、ファーウェイが参加を検討していると聞いています。
鍋野:海外企業が入ってきても、 実証実験のデータを基に、裏付けされたユースケースなので、たぶん見る人が見たら使える・使えないって分かると思うのです。
それが例えばドイツであろうが、中国であろうが、使えるものは使えると判断してくれると思います。
福本:IVI理事長で法政大学教授の西岡先生がデータ思考なので、実データとかビジネスデータとか、実際にある情報に基づいて、きちんと語っていくっていうことを大事にしてくれています。それで、われわれの活動もすごく前向きに評価をしてくれていると思っています。
鍋野:だから、逆にトップダウンだとか、あるいはシステムありきとか、ビジネスありきで来ちゃうと、失望して退会してしまうということがあります。
システム企業の中でも、例えば最近ソフトバンクが出資して有名になったOSIソフトみたいな会社は、データ吸い上げて分析したり、活用したりするところに特化していますし、プライベート企業ですから、お客様から喜ばれるのですよ。
「そうそう、こういうツールが欲しかった、となるし、ちゃんとデータ見ても、こういうふうに解析できました」っていう回答が返ってくる。
そういう技術を持っている人たちは、成果も出していますから、それに対してすごく評価されるのです。
3/8にシンポジウムも開かれるので、ご興味のある方はぜひご参加下さい。
小泉:今日は、多方面に渡り興味深いお話をありがとうございました。
IVI公開シンポジウム 2018 -Spring 「あらたな時代を望む大胆なビジネス戦略とグランドデザイン」
主催 一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ 協賛 ロボット革命イニシアティブ協議会、日経ものづくり、MONOist、
日刊工業新聞社モノづくり日本会議、中部品質管理協会、日本電機工業会、
日本機械学会生産システム部門、在日ドイツ商工会議所(申請予定)定員 1日目500名、2日目200名×2会場 日時 2018年3月8日(木)9日(金) 場所 東京コンベンションホール(東京スクエアガーデン5F)
参考:
IVI
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。