株式会社東芝は、工場やプラント等の産業機器用無線IoTセンサ向けマイクロ波遠隔給電技術を開発した。同技術により、空間に設置された複数のセンサと、給電装置の間のマイクロ波伝搬状態に基づき最適に給電ビームを制御することで、複数のセンサに同時・高効率に給電することに成功した。
IoTの普及に伴い、産業機器用センサの導入数は今後ますます増加する見込みだ。システム導入コストの削減や、生産ラインにおける機器の容易な再レイアウトに対応するため、センサの無線化が重要となり、有線接続を必要としない電源供給方法が求められる。
電池による給電は、動作持続時間や充電・交換のメンテナンスコスト、センサ筐体容積拡大など多くの課題を抱えている。そこで、新たな給電方法として、マイクロ波を用いた遠隔給電・充電が期待をあつめている。
しかし、従来のマイクロ波給電技術では、IoTセンサのように多数のセンサが空間に設置された場合、複数のセンサに対して同時に高効率な給電をおこなうことが困難という課題があった。
そこで同社は、給電ビームを最適に制御することで複数のセンサに同時に効率的に給電する技術を開発した。
開発した技術は、次の2つの特徴を持つ。
- 給電装置からセンサへの電波伝搬路状態の高精度な推定:
伝搬路における電波の振幅や位相変化状態を推定し、電波の多重反射が発生する条件でも高効率に給電を行う。従来行われていた位相変化の推定に加えて、新たに振幅変化も推定することで、複数センサへの最適な給電が可能になった。 - アンテナからの電波放射を考慮した最適ビーム制御による同時給電:
通信用途の電波ビーム制御においては、電波干渉の原因となっていた主方向以外への放射を、多方向への給電電波として扱うことで高効率な給電を実現。同技術では、1つのセンサに給電するためのビームを生成する際、別のセンサ方向に放射される電波放射の大きさも考慮して制御する。
これにより、給電装置の送電可能な電力や、受電するセンサが必要とする電力等の制約条件の下、複数のセンサへの給電効率が最大となるビーム制御が可能になる。
さらに、同技術を搭載した64素子のアンテナアレイからなる給電システムを試作した。同システムでは給電装置がそれぞれ独立に放射電波の振幅と位相を調整可能なアンテナアレイを持つ。
試作したシステムによる実証の結果、ロボットアームの異なる関節部に装着した2つのセンサへの給電に同技術を適用することで、従来のように1つのセンサのみへの放射を最適化していた場合に比べ、受電電力の弱いセンサへの給電量を7~12倍改善し、高効率に給電できることを確認した。
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・東芝(TOSHIBA)
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