ハノーバーメッセ2018レポートの第五弾は、ヨーロッパ・オムロンの展示だ。
オムロンは、スマートファクトリーを3階層で見ている。最上位が、クラウドのレイヤー、2階層目がMES、工場間連携のレイヤー、3階層目ショップレイヤーと呼ばれるプロダクションラインで、3階層目となるPLCで管理するようなセンサーやモーションコントロール、ロボットなどにこだわっている企業だ。
ベルトコンベアーの生産ラインを米国に視察したオムロン創業者の立石氏が、既存商品であるマイクロスイッチやリレーと呼ばれる制御に使われる技術を活用してオートメーション化を進めるという歴史がある。
現在オムロンでは、20万点のFA向けの製品があるオムロンだが、約半数がすでにネットワークに繋がる環境ができているというのだ。
マスカスタマイゼーションへの対応
このデモでは、インダストリー4.0で言われている、ユーザ個別のニーズへの対応をいかに生産性高くやるかということをポイントにしているのだという。
オムロン・アデプトという米国のロボットメーカーの技術をベースにし、センサー系からロボットまで全体を繋げたソリューションを展示していた。
この展示では、顧客のそれぞれのニーズにあわせて、実際に製品を組み合わせるというものになっている。
そして、組み上がった製品を「AGV」と呼ばれるテープの上を走るロボットが運ぶのだ。
このロボットは無軌道なのでエリア内に障害物があれば避けながら動く。
工場では、「みずすまし」と呼ばれる、ものを運ぶ担当者のなり手不足が問題になっている。そこで、こう言った小型の運搬ロボットのニーズは高いのだという。
ちなみに、オムロン・アデプトのAGVは、最大140台のロボットを協調して動くことができるというのだ。
データ活用という意味では、ダイレクトに生産状態やセンサーの稼働状況、カメラでとった画像データなどをアップロードする。
多くのIT企業では経営情報を可視化するソフトウエアは持っている一方で、現場でつかうセンサーを持っていない場合が多いので、こういった技術を使うことで工場の稼働状態や経営における生産性がどうなっているかを「動いているデータ」からわかるのだ。
このデモでは、Over Equipment Efficiency(装置の総合的な生産力)という指標で、どれだけの利益を生んでいるのか、どれだけロスしているのかという情報を機器が動いている状態をみながら可視化している。
オムロンがこのロボットを販売することでグローバルでのサポートもできることから、引き合いも増えているのだという。
IO-Linkを使ったデータ収集
今回のデモでは、「IO-Link」という技術を使って、何回稼働しているか、どういう状態なのかといった情報を、「もともとある実線を使って」データを取得しているのだという。
仕組みとしては、一つの配線の中に、3本の線があって、2本が±、もう一本でデータを上げているということだ。
デモではオン・オフするセンサーがあって、状態をみてデータを上げていた。
リアルタイムAIを活用した止まらない工場の実現
昨年はAIを搭載可能なIPCを開発したという展示だったが、今回はそれを活用したデモが展示されていた。
このデモでは、ボトルに液体を充填するという内容で、ローラーを回転させているモーターのトルクを見ることで挙動がわかるようになっている。
(写真では、ベルトの付近にある茶色い部分がそれにあたる)
「トルクの状態で異常値を検出した場合、充填しない」という制御をしているというのだ。
従来は、この機械を動かしている担当者がいて、トルクの状態を目視や音などで監視しているのが一般的だ。車メーカーなどでは聴診棒と呼ばれる棒でモーターの異変を見ているケースもあるのだ。
では、どうやって今後、匠なしでも異常を検知するのだろうか。機械を停止することなく、処理だけをやめることができれば、停止後の復旧の時間も必要なくなるのだ。
そこで、エッジ側に配置されたIPCでデータ処理を行うために、AIのモジュールを搭載させることで、リアルタイムに異常検知と対応を行う。その結果、人不足の解消だけでなく、東欧やアジアなど安い人件費の地域での製造においても生産性が維持できることが重要なのだという。
私個人の今回のハノーバーメッセの期待値として、「エッジ側でのAI活用」というテーマがあったのだが、多くの企業がクラウド側での処理を展示しているなか、生産機械と連携した、エッジでのAI活用の好例であると感じた。
関連リンク:
オムロン
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。