ハノーバーメッセレポートの第11弾はシーメンスだ。
先日MindSphere ver3がリリースされ、その具体的な内容が見れるのではないかと期待をしていた。「IoTのOS」を標榜しているこのIoTプラットフォーム。標準的な接続に関してはすべてシーメンスが準備し、各企業独自の接続いついてはドライバーを企業が提供するという方式を取っている。
これはあたかも、パソコンにドライバーを提供するサプライヤーが、ドライバーを準備するようだ。
さらに、MindSphere上には、AIや分析ソフトなどが搭載されていて、さらに自社のオリジナルアプリの開発も行うことができる。こういったところもOSという表現がわかりやすい。
では、このIoTのOS、どういう基本機能があり、どういうことができるのかについてレポートする。
Ver2までのおさらいと、Ver3となったMindSphereでできること
Launch Padと呼ばれるトップ画面。まず、左上から解説すると、「アセットマネージャー(Asset Manager)」は、どんなデータを、どこから、どんな間隔で取得するのか、といったデータの取得を設定する機能だ。
次の「フリートマネージャー(Fleet Manager)」は、トレンドグラフを出すようなもので、見える化を簡単にするものとなっている。
「マインドコネクトインテグレーション(MindConnect Integration)」は、工場の稼働設備の情報をどんどん取っていくだけでなく、別のクラウドやオンプレにあるデータもMindSphereの仕組みに取り込むというものだ。
また、「ビジュアルフロークリエイター(Visual Flow Creater)」という、Node-Redをつかったデータ活用のためのロジックを組む機能も提供されている。
また、「MindConnect IoT Extention」がVer3では重要なものとなる。これまではOPC-UAもしくはシーメンスのコントローラーが前提となる「Mindconnect Nano」というゲートウエイを使って、暗号化してクラウドにあげる仕様であった。しかし、今回のIoT ExtentionであればMQTT, OPC-UA, Modbusなど様々な標準的なプロトコルにはシーメンス自身で対応したということだ。
ただ、メーカーに依存するプロトコル、例えば、FANACのFOCASなど機器メーカーが作ったCNCライブラリ(computerized numerical control:コンピュータによる産業機械の数値制御)でよく使われているものについては、 「MindConnect Library」と呼ばれるSDKを準備しているのでそれに対応したMindSphere用のドライバを作ることができるのだ。作られたドライバは、Mindsphere上でAPIを使って呼び出すことができるのだ。
例えば、他社との接続について、FANUCのFIELD SYSTEMがあって、FIELD BASEにデータがたまり、工場の「制御」が最適化がされているとする。その上で、いろんな工場のロボットがどういう状態か、分析をしたいというシーンでは、MindSphereとつながるドライバーをFANACが準備していて、MindSphereと接続するという仕組みになる。
さらに、Ver3からは、AWSにも対応できるので、AWSのネイティブサービスも使うことができる。例えば、Mindsphereが吸い上げたデータはAWSに格納されるので、AWSの機能で処理をする、また、その逆も処理が可能となっているということだ。
「Predictive Learning」の機能を使うと、様々な経路で集まってきたデータについて、様々なAIのアルゴリズムを使って学習したり推論したりすることができる。シーメンスとしては、AIを開発していないが他社の知見は利用するという方針だ。
分析やレポート作成について、これまではフリートマネージャーや、ビジュアルアナライザーという見える化する機能が中心だったが、Ver3からは、Tableauを使った分析や、Jasper Studioを使ったレポート作成ができるという。Tableauも月額課金モデルで利用できるので、ラインセンス費としても割安な設定となっている。
MindConnect Nano, IoT2040
シーメンスのゲートウエイである、MindConnect nanoやIoT2040は、IEC62443という産業用の第三者認証がとれているという。これによりセキュリティが確保されていて、データの暗号化処理や、物理的なポートをわけることで悪意のあるサイバー攻撃を受けな仕組みが実現できている。
他社がMindsphere上でアプリケーションを作りビジネスを行う例
Mindsphereはオープンプラットフォームなので、パートナー企業はアプリを作れる。
展示では、EISENMANNという日本でいうダイフクのようなマテリアルハンドリング装置を作っている会社が紹介されていた。
このアプリケーションは、Mindsphere上にオリジナルで開発をしているということだ。
他にも、FESTでは、バルブなどの状況監視を行ってビジネスを行っているということだ。
アプリストア
Mind sphereはアプリストアを用意していて、自社・他社・競合問わずMindsphere上で動作するアプリを販売することもできる。
PLCの中の状態監視を簡単に見るアプリなど、現在他社を含めて約50個のアプリケーションが提供されている。
シーメンス自体、様々な業種業界でのソリューション提供のチームがあるが、それらのチームで培われたノウハウもMindsphereのアプリとなり今後順次提供されていくということだ。実際、今回の展示でも業界別ソリューションのいたるところに、「Connected to MindSphere」の文字が躍っていた。
今後は、こういった業界別ソリューションにも注目したい。
Mindsphere World
最後に、MindSphere Worldというユーザグループについて紹介する。
このMindSphere Worldは、ユーザ同士が情報交換をする場だということだ。また、様々な仕様追加に関しても協会としてシーメンスAGに要求するということができるのだという。
ドイツ19社で始まり、5月イタリア、その後日本、韓国、米国で立ち上げていき、日本は、2019年初めあたりを目指しているということだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。