成迫氏が紹介したネットコマースの調査によると、日本のITエンジニアの75%がITベンダーにいるのに対し、アメリカでは72%がユーザー企業にいるのだという。つまり、日本は構造的にアジャイル開発が難しい状況だと言える。だからこそ、デジタルイノベーション室のように、既存の事業とは切り離し、一つのチームをつくる方法が重要になってくるのだ。
成迫氏は、この約1年の実践を通して、さまざまな気づきを得たという。特に「チームビルディング」が重要だとして、「スポーツと同じで、良いメンバー、良いコーチ、良い監督がおり、目標や価値観を共有することが大事。人数は少ない方がいいが、チームづくりさえしっかりできれば、人数はそこまで関係なくなる」と語った。
IoT時代は、リスクをおかさないことがリスク

最後に、IoTNEWSの小泉がモデレータとなり、各登壇者とのパネルディスカッションを行った。方法としては、参加者からの質問に応じて、議論をひろげていった。
キーワードは、「イノベーション」だった。
今回のカンファレンスでは、さまざまな業界のリーダーに登壇いただき、議論のテーマは多岐に渡ったが、共通して語られていたのがヒトやチームの重要性、そしてイノベーション(デジタライゼーション)を起こすためにどうしたらよいか、という方法論だ。
パネルディスカッションでは、さらに踏み込み、日本企業がどうしたらイノベーションを起こし、勝ち残っていけるかという観点で議論が展開された。
各登壇者からは、「少し舵を切っただけでは何も変わらない」「大胆な投資をするべき」「何が起こるかわからない時代においては、何もしない方がリスクだ」といったことが語られた。
また、「中国の深センに行けば変わる。日本がいかに遅れているかがわかり、カンフル剤になる」という言葉もあった。
今年で3年目となるIoTConference。IoTやAIで何が実現できるのか、探索する時代はもう終わったようだ。ある程度の技術やソリューションはそろいつつあり、今何が実現できて、何ができないのかも可視化されている。
これからは、それらを活用してイノベーションを起こすために個人やチームがどう変わり、明日から何を変えるか、といった具体的なアクションの方法が問われるフェーズに入っている。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。