医療現場の手指衛生を順守する研究開発
福井大学と、介護・医療の現場でITソリューションを提供するケアコムは「感染予防管理にIoT/ビッグデータ/AIを活用し、WHOが推奨する手指衛生を順守する研究開発」という課題に取り組んでいる。
現在、各国で抗菌薬の効かない薬剤耐性菌の増加が問題となっている。薬剤耐性菌を抑止するためには手指衛生の順守が最も有効な手段だと言われている。
しかし、医療従事者が手指衛生を順守しているか否かを細かくチェックする体制は万全ではない。また、手指衛生順守率の比較も各施設や各診療科によってデータの収集方法が異なるため困難である。
こうした状況を変えるために、福井大学医学部はケアコムの提供する手指衛生モニタリングシステム「3HS-IS」を使った衛生管理の研究開発を行うことにした。
医療従事者の位置とポンピングの有無をモニタリング
具体的なシステム構成については、トップ画像を参照して欲しい。
まず、看護師はセンサーが付いた消毒ポンプを携帯する。消毒ポンプからは0.2秒ごとに位置情報がBluetoothによって、各病室や廊下に設置されているLocator(電波到来方向から位置を検知する受信装置)に送信され、看護師が施設内のどこにいるのか、という情報が把握される。

さらに消毒ポンプが押された時、位置情報の発信を一旦停止してポンピング(ポンプが押されたこと)の情報をBluetoothによってLocatorへ送信、手指衛生サーバーがポンピングの情報を受信すると、直前に送られた位置情報からポンピングされた位置を特定する。
これによって、看護師が適切なタイミングで消毒剤によって手指衛生を行ったかどうかをチェックすることができる。もし患者の近くに行く前や、病室を退室する前にポンプが押されていない場合は、スマートフォンにアラートが届く仕組みになっている。
携帯の消毒ポンプを持たない医師については、専用の職員タグを所持し位置情報を伝え、各部屋に固定されたセンサー付き消毒ポンプと一番近い職員タグが紐づけされて、ポンピングの有無を判断されることになる。
なお、消毒ポンプの頭の部分にセンサーやBLEのモジュールを付ける部分については、既製品がなかったため、Apex社の提供する3Dスキャン、および造作技術によってアタッチメントが作製され、専用の手指衛生消毒ポンプを作ることができたということだ。
衛生管理の可視化を実現
これまでの医療施設内における衛生管理では、各医療従事者がいつ、どのタイミングで手指衛生をきちんと実行しているのかが不明瞭で遵守状況が可視化でていなかった。
しかしケアコムの「3HS-IS」を活用したことで、手指衛生の有無とそのタイミングを可視化し、手指衛生の順守につなげることが出来た。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。