経済産業省は、日本工業規格(JIS)を制定・改正した(平成29年10月分)。JISは製品の種類・寸法や品質・性能、安全性などを定めた国家規格で、社会的環境の変化に対応して、制定・改正されている。その中でも社会的に関心の高い重要な制定や改正が月に1度紹介されている。
今回は、26件の制定及び21件の改正を行った。中でも、腰補助用装着型身体アシストロボットなど以下の3つの改正が重要であるとして紹介された。
腰補助用装着型身体アシストロボットに関するJIS制定
日本では高齢化社会を迎え、生活支援分野でのロボットの活用に強い期待が寄せられている。この需要の高まりを受け、重労働の負担軽減を目的とする腰補助用装着型身体アシストロボットについて、「新市場創造型標準化制度」を活用して「JIS B 8456-1」が制定された。
1. 制定の背景・目的
世界的な生活支援ロボットの市場は黎明期にあるが、日本からの提案によって 2014年2月に生活支援ロボットの国際安全規格「ISO13482」が発行された。
日本においては、この規格に基づいて安全認証を取得する動きもあり、2016年4月には、生活支援ロボットの安全性を確保するための要求事項を定めた日本工業規格(JIS B8445、B8446-1、B8446-2 及び B8446-3)が制定されている。
生活支援ロボットの世界市場を適正に拡大するため、JIS B8446-2タイプ(低出力装着型身体アシストロボット)の一製品群である低出力装着型身体アシストロボットに係る性能基準及び試験方法を開発し、製品規格JIS B8456-1を制定する運びとなった。
2. 制定の主なポイント
JIS B8446-2を引用し、追加の安全要求事項を規定するとともに、性能要求として、構造、質量、最大突出半径、最大アシスト力及びその指標、腰部圧縮力低減指標、表示等が規定された。
3. 制定の期待効果
腰補助用装着型身体アシストロボットは、重労働の身体への負担を大きく軽減するために、介護、建築、物流、農作業等で使用されている。これまではメーカー毎に独自の方法で製品の性能が示されていたが、同JISにより、JISマーク等の認証基準に活用されることが可能となり、消費者の製品選択が容易になる。
また、作業者の労働安全衛生の改善及び離職率低減への寄与が期待される。さらに、世界的に類似した機器は製品化されていないため、同JISを基に日本が主導して国際標準化を目指すことにより、諸外国における市場の創出・拡大が期待される。
次亜塩素酸水生成装置に関するJIS制定
塩化物イオンを含む水溶液を電気分解して低濃度の次亜塩素酸を含有する次亜塩素酸水を生成する装置(次亜塩素酸水生成装置)について、「新市場創造型標準化制度」を活用して「JIS B 8701」が制定された。これにより、使用者が食品の殺菌や厨房の衛生管理等に有効な次亜塩素酸水を生成する装置を安心して使用できる環境と市場拡大が期待される。
電球形LEDランプの安全仕様に関するJIS改正
一般照明用電球形LEDランプについて、最近の国際規格の動向を踏まえた更なる安全性向上を図るため、日本工業規格(JIS C 8156)において、ランプ本体と口金部分との取り付けの強度やランプ使用条件(調光器への対応、水気のある場所)に対する安全と注意喚起に関する要求事項等を追加する改正が行われた。
【関連リンク】
・平成29年10月20日公示JISリスト
・経済産業省(METI)
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。