IDC Japan株式会社は、国内の企業にフルタイムで勤務する20~69歳の男女1,000名を対象に、Webアンケート方式で実施した「2018年 国内AR/VR市場 企業ユーザー調査」の結果について発表した。
VRをビジネスで利用しているとの回答は全体の3.3%で、前回(2017年)の2.7%から増加しており、トレーニング分野や不動産の内覧などの分野での利用が拡大している現状を反映している。しかし今後VRを利用する意向である者の割合は減少し、VRの現利用者と今後の意向者も含めた割合は2017年とほぼ同様の状況である。
業種別では、情報通信業に続いて製造業でのVRの利用が盛んという結果になった。VR技術の利用目的については、現利用者では技術研究に続いて「動画コンテンツの開発/個人向け販売」が高く、昨今のVTuberブームなどを裏付ける動向となっているのに対し、今後のVR利用を検討しているケースではマーケティング用途での利用が高く、依然としてこの分野でのVRのニーズが高い。
他方、ARのビジネス利用は現在の利用者(2.1%)、今後の利用意向者(6.3%)ともに前回調査(それぞれ2.3%、6.5%)を下回った。業種別では、情報通信業や製造業での採用がやや活発だ。利用用途を見ると、ARではビジネスでの現在利用者、意向者の両方で「ARコンテンツ開発環境の開発と販売」に分類されるものが多く、実際の業務での活用は「遠隔業務支援/テレワーク」などにとどまっている。
2019年は新しいタイプのARヘッドセットが多数登場することが期待され、今後の伸びにつながることが期待されている。
また、現段階ではAR/VRを自社ビジネス利用していないとした回答者に、AR/VRの自社ビジネス利用での阻害/懸念要因をたずねたところ、VRではHMDの価格、ARではAR自体の消費者への普及等を挙げる声がトップとなり、いずれもAR/VRの一般化には価格の低廉化とそれに伴うより広い層へのリーチが課題であることがわかった。
2018年はOculus Goなどのコストパフォーマンスに優れた製品が発売されたが、AR/VRの一般化に向けての価格の障壁は依然として根強い。また、従来VRの懸念材料であった「VR酔い」は下位に後退しており、ソフトウェアやコンテンツ開発上のノウハウの蓄積がVR酔いの抑止に貢献していると推定している。
ただし、AR//VRをそれぞれ自社ビジネスにすでに利用/採用している層のこれらの技術に対する今後の投資意向は堅調であり、いずれも約4割が投資を増やすと回答している。AR/VRを現在すでにビジネスで採用している層がその利活用を加速させていく一方で、AR/VRの利用を行わない層は現在のままの水準でとどまるため、AR/VRをめぐるリテラシーの格差は今後拡大する可能性がある。
IDC Japan PC, 携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストである菅原 啓氏は「これらの格差はデジタルトランスフォーメーションの実現水準の格差、およびデジタル技術の採用による競争優位性の格差の一因になりうるため、現在エコシステムが確立しつつあるトレーニングVRを利用した人材育成はもちろんのこと、実際の業務の現場においてもこれらの技術を積極的に採用し、デジタルの恩恵を自らの成長のドライバーとしていくことが望ましい」と結論している。
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