イマクリエイト株式会社は、仮想空間で動きをシェアするプラットフォーム「ナップ」を開発した。たとえば、熟練者の動きを仮想空間でシェアすることで、初心者でもけん玉やゴルフなどのさまざまな技術を習得することが可能となる。製造業向けに、神戸製鋼グループの株式会社コベルコE&Mと共同で開発した溶接の技術伝承ツールとして実用化されているほか、医療などの分野でも導入が進んでいる。イマクリエイトはどのような思いで創業され、また何を実現しようとしているのか。同社代表取締役CEOの山本彰洋氏(写真右)と代表取締役CTOの川崎仁史氏(写真左)に話をうかがった(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)。
究極のコンテンツとは、「体験」の共有
IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): イマクリエイトの創業の背景について教えてください。
イマクリエイト山本彰洋氏(以下、山本): 私が起業を思い立ったきっかけは、2016年7月15日に起きたトルコのクーデター未遂事件にあります(※)。
私の前職は住友商事で、当時はトルコに駐在していました。突如、戦闘機の音が鳴り響き、トルコの国会議事堂が空爆され、自分が日頃使っていた道は戦車で封鎖されていました。私は身の危険を感じ、ひょっとしたら自分は明日死ぬのかもしれない、と思いました。この事件をきっかけに私の死生観は大きく変わり、一度きりの人生、悔いのないように大きなことに挑戦したいと考えるようになりました。
具体的には、顧客の数が十億人に及ぶような大きなビジネスを立ち上げたいと考えました。さまざまな切り口を検討しましたが、最も可能性を感じたのは「体験」の共有でした。たとえば、旅行の体験は写真や動画で共有することはできますが、それだけでは本人が体験した空気感などは伝わりませんよね。そこで、それぞれの人が面白いと思う体験を、五感をつうじて他者とリアルに共有することができれば、これは究極のコンテンツになると考えたのです。
(※2016年7月15日、トルコ軍の一部がクーデターを画策し、失敗に終わった事件。民間人を含め、死者は290人に及んだ。)
山本: また、以上のことを構想しながら日本に帰国したところ、ちょうど2016年は「VR元年」と呼ばれるように、「Oculus Rift」や「HTC Vive」などのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をはじめ、VRの商用化が本格的に始まりました。私は鳥肌が立ちました。この方法なら、五感をつうじたリアルな体験の共有が実現できると。そして、2018年5月には体験シェアリング株式会社という会社を創業し、1分以下のVR動画を誰でも簡単に投稿できるVR動画投稿プラットフォームをリリースするに至ります。
共同創業者、川崎仁史氏との出会い
小泉: 共同創業者/CTOの川崎さんとはどのように出会ったのでしょうか。
山本: 川崎は2019年3月に株式会社CanRという会社を創業しています。一方で、体験シェアリングとCanRは、XR系最大の出資会社であるTokyo XR Startups社から、第5期参加チームとして2019年に出資を受けることになります。つまり、私と川崎はTokyo XR startupsの同期であり、そうした縁から2019年10月に合併し、新たにイマクリエイト株式会社を創業することになったのです。
イマクリエイト川崎仁史氏(以下、川崎): 私は、起業前はNTTの研究所にいて、ITを活用した人のモチベーション向上というテーマで研究をしていました。そんな中、2017年にHTC Viveを秋葉原で体験して、これを使えばモチベーションを向上させるだけではなく、スキルの習得にも活用できるのではないかと感じたのです。
そこで、まずはけん玉のトレーニング・プログラムをつくってみました。なぜけん玉かといえば、私はけん玉が趣味で、けん玉検定の有段者でもあるからです。驚くことに、開発したプログラムを私の妻や母に体験してもらったところ、けん玉ができるようになりました。「これは間違いない、VRは人を変えられる」と私は確信しました。
川崎: 開発に専念するため、NTTを退職して起業することにしました。そして創業したのがCanRです。最初はけん玉のVRプログラムを1,000人以上の人に体験してもらいながら、技術や知見を蓄積していきました。さらにゴルフのトレーニング・プログラムも開発し、2019年にはTokyo XR Startupsの第5期参加チームとして出資を受けることになります。
小泉: なるほど、そんな背景があったのですね。お二人の合併の合意は簡単にできたのですか、それともかなり議論されたのですか。
山本: わりとすぐ決まりましたね。「合併しようよ」という感じで(笑)。もちろん、同期としてすでに色々やりとりはしていましたし、VRを活用したトレーニング(技術習得)の分野を開拓するという方向性も一致していました。また、私は営業が得意ですが、川崎は開発が得意ということで、お互いの強みを合わせることができるという点も重要でしたね。
「見る」ではなく「する」ことで、技術伝承が可能になる
小泉: VRやXRを手がける企業は数多くありますが、イマクリエイトと他企業との違いは何でしょうか。
山本: 最も大きな違いは「見る」ではなく「する」に重点を置いていることです。従来のVRコンテンツは「見る」だけのものが多いです。インタラクティブ性はあったとしても、ユーザーがHMDの画面に表示された物に触れるだけで、想定された正解に行きついてしまうものが多いのです (たとえば、VR空間上のモノをつかむなど)。
一方、弊社のコンテンツではけん玉の達人の動きなどをVR空間に再現し、ユーザーがそれに合わせて動かなければ正解にたどりつくことができません。こうしてユーザー自らが「する」ことによって、XRを通じてさまざまな技術の習得が可能になるのです。
小泉: 具体的にはどのようなサービスを展開しているのでしょうか。
山本: 最も展開が進んでいるのは「溶接」と「医療」の領域です。まずは溶接からご説明しましょう。
開発したのは、溶接の技術伝承コンテンツです。熟練の溶接工の手元の動きをVR空間に再現し、初心者がそれをまねることで、効率的に溶接の方法を学習することができます。このコンテンツは、神戸製鋼グループの株式会社コベルコE&Mと共同で開発しました。コベルコE&Mに在籍している熟練の溶接工の協力を得ることで、熟練者のリアルな動きをVR空間に再現しているのです。
また、販売も神戸製鋼グループの商流と連携しています。この点も他のVR企業とは異なるアプローチだと思います。コベルコE&Mは日本で最も溶接棒の販売数が多い企業です。そうした特定の大きな商流に乗せてVRコンテンツを販売している企業というのは少ないでしょう。また、溶接はあらゆる製造業に必要な工程であり、すそ野がとても広いです。日本には約24万人の溶接工がいて、毎年約10万人が溶接技能者の資格試験を受けます。
小泉: 現場では、実際にどのような効果が得られているのでしょうか。
山本: コベルコE&M社内の新人研修において、実技組とVR組でどちらが効果的に溶接技術を学習できるかを調査しました(上の写真)。結論からいうと、VR組の方がよい結果が出ました。
たとえば、平均的な習熟レベルまでの達成スピードを比べると、VR 組は2日程度で達成、実技組は3日程度で達成となり、VRの活用が初心者の習熟スピードアップに効果があることが検証されました。また、VR組の方が評価点数のバラツキが少なく、全員が一定レベルに到達できていることも確かめられました。
小泉: どうしてVR組の方がよい結果が出るのでしょうか。
山本: 溶接というのは、真っ暗の空間で、しかも強烈な光によって手元が見えないという状況で行います。そのため、そもそも熟練者がどういう動きをしているのかを、初心者は見ることができなかったのです。
しかしVRを使えば、明るい空間(仮想世界なので明るくできるのです)に熟練者の動きを再現し、初心者はそれを何度もまねしながら練習することができるのです。またVRは休み時間にゲーム感覚で練習することもでき、その点も評判が高かったですね。
〈溶接のVRトレーニングを体験〉
VRの映像を見ているという意識はなく、溶接という作業にひたすら没頭しているという感覚だった。まずは溶接棒を緻密に再現しているコントローラーを動かして(意外と重い)、仮想空間上の溶接棒の先端を正しい位置(加工品の金属表面)に運ぶ必要があるのだが、これがすこぶる難しい。さらに、金属表面に直線をえがくように溶接棒をゆっくり動かしていく。しかし、この正しい位置は3次元的に(つまり金属表面の上下左右と金属に対する挿入の深さで)決まるため、熟練者のように動かしていくのは、初めは至難の業に思える。しかし非常にゲーム性が高く、うまくできるようになるまでやみつきになりそうな感じがある。熟練者のお手本は仮想空間上に表示されるだけではなく、自分の動きに合わせて「近すぎる」、「遠すぎる」、「速すぎる」などのアラートが出るため、微調整しながら練習することができる。
※「ナップ溶接トレーニング」について詳しく解説した動画はこちら。
山本: 次に医療向けのVRコンテンツについてご説明します。
医療の分野では昨今の新型コロナの影響により、医学部の学生が実際の患者を相手に医療実習を行うことが難しい状況になっています。そこで、実際の医療現場に立つ医師の動きをVR空間に再現し、学生が自らの体を動かしながら仮想の患者を相手に医療実習を行えるトレーニング・ツールを開発しました。東京大学や京都大学、弘前大学の医学部と共同開発を行ってきました。すでに200台以上が稼働しています。
小泉: 医療実習の内容も色々あると思いますが、具体的にはどのような実習が可能なのでしょうか。
山本: たとえば診察です。仮想の患者を前に聴診器を使って心音を確認するなど、医師が実際に現場で行っている手順に沿って診察の練習を行うことができます。また、注射や採血のトレーニング・ツールも展開しています。注射や採血のような侵襲性が高い手技では、実習の機会が限られます。しかしVRを活用すれば、動画でお手本を見るだけではなく、実際にお手本の動きに合わせて練習ができます。
山本: またVRのよいところは、現実の実習では不可能なシミュレーションもできるということです。たとえば、医学部では学生どうしで診察の練習を行うことがありますが、聴診器を使って心音を聴いても、普通は正常音しか聴こえません。異常音が聴こえれば、それは実際に身体に異常があるということだからです。しかしVRであれば、異常音が聴こえるような状況もシミュレーションすることができます。
なお、現在は外科手術の実習ツールも開発中です。名医と呼ばれる医師の手元の動きをVR空間に再現することで、学生は自らの手を動かしながら仮想の患者を相手に手術の実習を行うことができるようになります。
VRトレーニングに求められる2つの技術
小泉: 以上の溶接や医療のトレーニング・ツールに使われている技術について、詳しく教えてください。
川崎: 主に2つの技術があります。「人の動きそのものを3Dデータ化し、それをさまざまな人にシェアできるようにする技術」と「現実ではできない、バーチャルならではの体験をつくる技術」の2つです。まずは1つ目から説明しましょう。
人の動きそのものを3Dデータ化する技術
川崎: 1つ目の技術でカギとなるのは、達人(熟練者)の動きをいかにVR空間で高精度に(現実世界と乖離がないように)再現するかということです。ここで技術的に難しいのが、人と道具の連動です。たとえば、けん玉であればけん玉の達人とけん玉の連動です。弊社ではこの部分の技術を極限まで追求しています。
小泉: なぜ、人と道具の連動が難しいのでしょうか。
川崎: 達人の体の動きのデータは、モーションキャプチャによって収集します。たとえばけん玉であれば、けん玉の達人にモーションキャプチャ・スーツを着てもらい、実際にけん玉の実技を行ってもらいます。この方法によって、達人の体の動きはVR空間にリアルに再現できます。
ところが、道具(けん玉の剣)のリアルな動きは、この方法だけでは捕捉できないことがあるのです。なぜならモーションキャプチャによる人の動きのリアルな再現は、人体のあちこちにつけたマーカー(センサー)のデータを、人体の構造や動作機構にもとづいて統合することで可能になります。しかし道具はそうした人の統合的な動きからは独立しているため、うまく再現できないことがあるのです。
そこで、人と道具のデータを別々に収集し、あとから仮想空間に統合するという工夫が必要となります。動作の種類によって、道具そのものの動きを緻密にとることが必要なのか、人の体の動きが捕捉できれば十分なのかといったさまざまなケースがあります。再現したい動作に応じてそれらを見極め、必要な技術の選定や開発を行っています。たとえば溶接であれば、溶接棒(という道具)の動きが捕捉できれば十分であり、人の体の動きとの連動はそこまで重要ではありません。
小泉: なるほど。逆にいえば、達人のすべての動きを緻密に再現しなくても、技術習得の決め手となるような動きが再現できればいいわけですよね。ただ、その決め手はどうやってわかるのですか。やはり達人じゃないとわからない?
川崎: おっしゃるとおりで、達人の知識や経験が重要です。達人の動きをもとに作成したプロトタイプを、その達人に実際に体験してもらい、「ここが重要だ」、「もっとここはこうしたらいい」といったアドバイスを受けながら開発を進めています。
小泉: とはいえ、エンジニアもある程度はその動きの重要なポイントがわかっていないと難しいのではないかと推測します。
川崎: はい、私たち自身もその技術について理解していないと開発は難しいです。そのため私や山本、開発担当のエンジニアたちも実際に現場で溶接などを体験しています。
バーチャルならではの体験をつくる技術
川崎: 続いて、2つ目の「現実ではできない、バーチャルならではの体験をつくる技術」についてご説明します。
VR空間は現実の物理法則にとらわれず、設定を自在に変えることができます。たとえば、時間の流れをスローモーションにすることができます。
私が以前けん玉を教えていたとき、球の動きが速くてついていけないという声がけっこうありました。そこでVRを使えば、球が動くスピードを遅くすることができます。実際、この機能を使って練習し、徐々に球のスピードを上げることで上達できたという人が多いのです。
また溶接でも、先程山本が説明したように、従来は暗い空間でお手本を見たり、練習したりするしかありませんでした。しかしVRであれば、明るい環境で練習ができます。医療では患者の身体構造を透けて見せる、といったことも可能です。VRを活用することで、現実界では不可能だったさまざまな学習環境をつくりだすことができるのです。
ハードウェアの進化によって、VRはこれからさらに発展する
小泉: 開発を進める中で川崎さんが思う、技術的に最も難しいポイントは何でしょうか。
川崎: 最も大変だと感じるのは、ハードウェアの技術的な制約をどう乗り越えるかということです。先程もご説明したように、道具の動きのデータをとる技術はまだ限られています。また、人の体の動きに関しても、モーションキャプチャ・スーツを装着するのがけっこう大変であるという問題があります(スーツを装着するだけで20~30分かかります)。
最近では、スーツを装着しなくても、人の体の動きを1台のカメラで撮影するだけで、仮想世界に再現できるという技術もあります。しかし、この技術ではAI(機械学習)を使って画像データから人の動きを推定するのですが、その計算処理にかなりの時間がかかります。撮影しながらリアルタイムで人の動きを仮想空間に展開できればすばらしいのですが、それができるにはまだ時間がかかりそうです。
小泉: 一方で、ユーザーの方をどれだけVR空間に没入させるかということも、技術的なポイントですよね。
川崎: おっしゃるとおりです。ユーザーが用いるHMDやコントローラーの位置精度はミリ単位(1~2mmの誤差)であり、とても高い水準まで進化しています。
とはいえ、ユーザーも完全にVR空間に没入するのであれば、やはり全身にモーションキャプチャ・スーツを装着するといったことが必要になります。しかしユーザーがVR空間に入るたびにスーツを装着するのは大変であり、また莫大なコストがかかります。
川崎: ですから重要なのは、あくまで「Oculus Quest 2」などの汎用的なデバイスを使うだけでも十分な学習環境を低コストで構築できるということであり、そのためにさまざまな技術的な工夫や、熟練者の方との連携がカギとなってくるのです。
たとえば、溶接で重要なのは「溶接棒の動かし方」です。そこのポイントがしっかりおさえられていれば、ユーザーがVR空間と連動する領域は手首から先だけでよいのです。もちろん、全身が連動できるにこしたことはないのですが。
小泉: なるほど、目的に応じていかに技術を最適化できるかということが重要なわけですね。一方で、ユーザーによって身長や腕の長さが異なると思いますが、コンテンツによってはそうした身体差を反映できる方が良い場合もありますよね。
山本: 実はその点では別途開発中の技術があり、部分的には3月24日~4月3日にオープンβテストを実施したVRリズムフィットネスゲーム『Groove Fit Island!!』で取り入れています。
ゲーム開始時に、身長や腕の長さをキャリブレーションして、そのユーザーがラグビーボールをキャッチしたり、テニスラケットでボールを打ったりしやすい位置を予測します。そして、ユーザーがその位置で気持ちよくリズムにノリながらボールをキャッチしたり打ったりできるように工夫しているのです。
小泉: コンテンツをユーザーに体験してもらうことで、さまざまなデータが集まってくると思います。そうしたデータの活用については何か検討されているのでしょうか。
川崎: それは今後の課題です。これからデータ数がさらに増えていけば、達人や初心者の動きの3Dデータを分析して、活用していこうと考えています。たとえば溶接では、自分と動きの癖が似ている熟練者を検索する機能や、自分と熟練者の動きの違いを分析して、どうしたらより熟練者に近づけるかを提示する機能などを検討しています。
山本: 一方で広く見れば、VRなどを使って人を教育するだけでなく、ロボットで人の技術を代替するという方法も重要になってきます。教育とロボット化、このどちらが今後発展するかといえば、私は両方ですみわけが進むだろうと予測しています。
たとえば溶接においても、人じゃないとできない領域があります。また、そうした動作をロボットで実現するためにも、教師データとして人の動きのデータが必要になってきます。つまりVRのトレーニング・ツールに使用している熟練者の3Dデータは、ロボットをかしこくするためにも必要なのです。弊社としても会社がさらに大きくなれば、ロボットやAIの知見をもった人材も採用していきたいと考えています。
2人以上がVR空間に参加し、体験をシェアし合う技術も実現
小泉: 最後に、今後の計画や展望について教えてください。
川崎: 現在、開発に注力しているのは、複数人がリアルタイムに体験をシェアできる技術です。
今回ご紹介したけん玉やゴルフ、溶接、医療などのツールは、すべてユーザーが1人で学習するタイプでした。つまり、録画された熟練者の動きがVR空間に表示され、それを真似して技術を習得するという方法です。初心者であれば、この方法で一通りのことを学べます。しかし、中級者になると、習得したいパターンも増え、動きも複雑になるため、それだけでは物足りなくなります。
そこで、1人ではなく複数人が一緒に1つの仮想空間で体験を共有したり、技術を教え合ったりできる環境をつくろうとしています。たとえば溶接であれば、熟練者と初心者が同じ仮想空間にいて、熟練者は初心者の動きを見ながら「こうした方がいい」などのアドバイスをできるのです。
山本: また将来的には、人の動きを簡単にシェアできるような未来を実現したいと考えています。
将来的には、1家に1台VRが普及する時代がいつか来るでしょう。たとえばそのとき、子供がお母さんに「今日は中華を食べたい」といったとします。するとお母さんはHMDを装着し、専用デバイスを右手にもって、周富徳先生(広東料理の料理人)の中華鍋の振り方を学んで、実際につくるというイメージです。
弊社は現在、B2Bのコンテンツを多く展開していますが、将来的には日常のワンシーンに溶けこんだようなB2Cのコンテンツもつくっていきたいと思っています。
小泉: 映画『マトリックス』では、ヒロインのトリニティが仮想空間の中でヘリコプターの操縦法をダウンロードして、即座に操縦できるようになるというシーンがありますね。御社がやろうとしていることはまさにそんなことなのではないかと、今回お話をうかがっていて思いました。
川崎: まさに、おっしゃるとおりです。体験の前と後で人を変えてしまうというのが、弊社がかかげるコンセプトの一つであり、その発想の原点には実はマトリックスの世界観があります。ヘリコプターの操縦法のほかにも、主人公のネオが仮想空間でカンフーの技術を習得するというシーンもあります。まさにこれと同じことを、私たちはXRでやりたいと考えています。
小泉: とてもわくわくするお話でした。本日はどうもありがとうございました。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。