MWC2023レポートの第7弾は、HTCだ。
すっかり最近はスマホメーカーというよりXR事業の会社となった感もあるHTC。よくよく考えてみると、5年くらい前からMWCではVIVEブランドの展示しかしていなかったかもしれない。
もともとHTCはスマホが事業の中心だった頃、HTC SENSEと言われる独自のUIを開発し、Androidスマホの中で最も快適だと言われていた。またスマホのブランドには「Desire」と名付けるように、人の感性や情緒を重視したブランド展開をしている企業だ。
メタバース空間はまさに人が自分のなりたい“像”になることができる場として、高いポテンシャルがあるため、人本来の願望や欲求を叶えていくための環境構築をデバイス、プラットフォーム両面で進めている。
今回も例年と同じ場所に様々なXR体験ができるブースを展開。まず視界に入ったのが「VIVERSE」というコトバだ。「VIVERSE」はHTCが提供するメタバースプラットフォームで、VRのヘッドマウントディスプレイに限定せず、Webブラウザ経由で利用可能となっている。自社のデバイスを売るためのものではなく、フラットにメタバースの価値を拡張し、より多くの人にその価値を届けていこうとしていることがわかる。
ブースでは、最新のHMDであるVIVE XR Eliteはじめ複数のデバイスが展示されていた。それらを装着してメタバースを体験するデモが複数のテーマで行われており、どのコーナーでも多くの人が待機列に並んでいた。
まさにメタバース領域は変化が進んでいる最中であり、各社のフラッグシップモデルは20万円前後のものが主流で、カジュアルに購入できない人も多いこともあり、こういったイベントの場で体験しておきたいという背景もありそうだ。
メタバースはテクノロジー系のイベントでは一般化しているものの、市場としてのブレイクスルーには課題があるという。HMDの普及状況を見ると、まだ一部の人のものという実態がある。その一方で、FORTNITEや荒野行動などのメタバースゲームの裾野は大衆まで広がってきている。こんな背景もありVIVERSEを展開しているのだろう。
中でも注目は「VIVERSE for BUSINESS」だ。これはある程度決められた枠組みの中で、メタベース上にオフィスを構築するプラットフォームになっている。リアルオフィスを構える必要が無い中小企業や個人事業主などをターゲットにしているという。
プリセットのコンポーネントがあり、機能もモジュラー化し、デザインや色は選択肢から選んでいくことで、自社のオフィスが簡単に構築できる仕組みだ。
ZoomやTeamsでリモートMTGをすることは珍しくない状況になったが、人と人のつながりや企業という団体への帰属感が失われている部分も否めない。
またMTGの目的以外のものが切捨てられているということもある。人によっては無駄と感じるのかもしれないが、名刺交換も無く、オフィスへの訪問も無くなると、体験がもたらす“印象”が残らなくなっていく。とはいえ昔に戻すことは受け入れられないだろう。
VIVERSE for BUSINESSでは、オフィスやビジネスコミュニティのメタバース化によって、無駄は無くしつつ、これからの時代に最適化した「より良い人と人のつながり」を創出するための場になっていくのではないだろうか。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。