特集「DX KEYWORD TEST」では、DXで必須となるキーワードに関するテストを実施。
さらに、4枚の図を使って、サクッと解説します。今回のキーワードは「VR」。全問正解目指してがんばってください!
解説編
ここからは、DX KEYWORD TESTの設問を図解していきます。
全部読んだら、再度問題にチャレンジしましょう!
仮想空間に入り込むことができる技術、VRとは
自分の部屋にいながら、海辺や宇宙、大好きな物語の世界に瞬間的に行くことができたら楽しいと思いませんか?
それを実現してくれるのが、VR(ブイアール)です。
とはいえ、自分自身が本当に海辺や宇宙に瞬間移動するわけではありません。
実際には「ない」のに、デジタルを活用して5感にうったえることで、現実に「ある」ように感じることができるのです。
例えば、VRを活用したゲームで有名な「Beat Saber(ビートセイバー)」では、ヘッドセットを装着することで、音楽に合わせて色々な方向から流れてくるキューブが見えてきます。そのキューブを、コントローラーを持った手を振ることで斬ることができるリズムゲームです。
普通のゲームとの違いは、自分の頭を動かしてキューブを見つけて、キューブがある位置で実際に手を振る必要があることです。
このように、視覚や触覚などにうったえることで、仮想空間の中に自分が入り込んでいる感覚をもたらしてくれる技術のことを、VRといいます。
ちなみに、VRと似た技術として、AR(エーアール)やMR(エムアール)といったものもあります。
VR・AR・MRの違いは、「リアルとバーチャルがどの程度の比率で混ざり合っているのか」です。この考え方は、トロント大学のポール・ミルグラム氏によって唱えられました。
VRは「仮想現実」と訳され、現実空間と全く混ざっていない仮想空間なのに対し、ARは「拡張現実」、MRは「複合現実」と、リアルとバーチャルが交じり合った中途半端な空間を指しています。
そして、これらAR・MR・VRを総称して「XR」と表現します。読み方は色々あり、「エックスアール」「クロスリアリティ」「エクステンデッドリアリティ」と言われます。種類がたくさんありますが、どれも同じ言葉を指します。
今回は、そんなXRの中でも、仮想空間に入り込むことができるVRについて、詳しく解説していきます。
(AR/MRについての解説は、「AR/MR ―DXキーワードテスト」を参照してください。)
VRってどうやって動作するの?
前章で紹介した「Beat Saber 」では、「ヘッドセット」や「コントローラー」を活用して仮想空間に入り込んでいました。
このように、VRを体験するためには、デバイスが必要となります。
そこでまずは、VRで活用されるデバイスについて、映像産業振興機構が公表している「VR等のコンテンツ制作技術 活用ガイドライン 2020」で分類されている、3つのデバイスをもとに紹介します。
1つ目が、「VRヘッドセット」です。
これは、頭に装着することでディスプレイが視界を覆い、映像を映し出すデバイスです。上下左右、360°頭を動かしても映像が映し出されることで、「空間」にいると感じることができます。
VRヘッドセットには、スマートフォンとダンボールデバイスを活用したものから、PCなどの外部機器と接続して数メートル動き回れるもの、スマートフォンもPCも使用しないワイヤレスなVRヘッドセットなどがあります。
VRヘッドセットはVRで活用されるデバイスの代表だと言えるでしょう。
2つ目が、「ヘッドセットとその他デバイスの組み合わせ」です。
1つ目のVRヘッドセットを装着しながら、触覚や身体運動を映像と連動させるデバイスです。
両手に持つタイプのコントローラーや手袋型のコントローラー、ハンドルとアクセルがある車状のデバイスなどがあります。
こうしたデバイスでの操作がヘッドセットの映像に反映されることで、より没入感のある体験をすることができます。
3つ目が、「その他のデバイス」です。
これは、ヘッドセットを装着しなくても、仮想空間を体験することができるデバイスです。
例えば、没入型多面ディスプレイと呼ばれるドームの形をしたデバイスや、体験者をスクリーンで囲うことで映像を映し出すシステムなどが挙げられます。
こうしたデバイスであれば、複数の人が同時に仮想空間での体験をすることができます。
次に、VRがどのように動作しているのか、VRヘッドセットとコントローラーを活用したケースにて紹介します。
前の章でも説明しましたが、VR体験において重要なのは、「仮想空間の中に自分が入り込んでいる感覚」です。
VRヘッドセットとコントローラーを活用したケースでは、頭の動きに沿って空間を見ることができて、手や体の動きが仮想空間上で反映される必要があります。
つまり、現実の人の動きと仮想空間の映像が、常に相互に連携しているのです。
具体的にどのように実現されているのか、4つのステップに分けて解説します。
①VR用の映像を作る
VRコンテンツの提供者は、360°カメラや、3DCGを作成できるツールを活用して、VR用の映像を作ります。
②VRコンテンツをサーバーに配信する
できあがったVRコンテンツを、サーバーに配信します。
③サーバーからコンテンツをデバイスに送る
サーバーに配信されたコンテンツの映像とデータを処理し、デバイスのディスプレイに映し出します。
④体験者の動きをフィードバックさせる
体験者の頭や手の位置、現実空間を、センサーやカメラで認識します。
ちなみに、センサーやカメラは、ヘッドセットやコントローラーといったデバイスに内蔵されているケースと、部屋の中にカメラやセンサーを設置するケースとがあります。
こうしたセンサーやカメラにより、人が空間の中のどこにいて、どの方向を向いているかを認識しているため、頭の動きに合わせて景色が変わったり、手の動きを認識して仮想空間の物を触ったりすることができます。
VRで産業はどうアップデートされる?
VRは、ゲームやエンターテインメントでの活用に注目が集まりがちですが、実は産業においてもたくさん活かされています。
ここでは、産業で活用されている4つの取り組みについて、実際の産業課題に紐づけながら紹介していきます。
1つ目は、「トレーニング・シミュレーション」です。
鉄道の線路工事には、危険が伴います。現場のスタッフに安全教育を行っているものの、危険な作業を客観的に見ることができないため、なかなか危機意識を持つことができないという課題がありました。
そこで、車両の運転席からの実写を360°で撮影し、線路で様々な作業を行っている作業員を3DCGによって合成しました。安全教育の受講者は、このVRコンテンツをVRヘッドセットで閲覧しながら、危険行動を取っている作業員を客観的に見ることで、リアルな危機意識を持つことができます。
2つ目は、「3Dデータの活用」です。
医療業界では、患者さんに関する情報を共有して、よりよい医療ケアを提供するための会議が行われます。患者さんの情報は臓器や血管など、体の中の情報も含まれるため、これまで活用されていた紙の資料や画像、動画などの2D情報では分かりづらいことがありました。
そこで、患者さんの臓器や血管などの情報を3Dモデル化して、仮想空間に映し出します。この仮想空間の中に、いろんな場所にいるお医者さんがVRヘッドセットを活用して集まり、患者さんの臓器などの3Dモデルをそれぞれの視点から見ます。患者さんの3Dモデルは、大きさや配置されている位置が、どのお医者さんから見ても同じなので、コントローラーで指をさしたり動かしたりしながら会議をすることができ、よりわかりやすい情報の共有を行うことができます。
3つ目は、「コミュニケーション」です。
大規模な製造業の企業では、生産拠点や部門ごとの活動場所が、国内外、いろいろな場所にあるケースも珍しくありません。これまでは、電話やテレビ会議といった手法を活用していましたが、現実でのコミュニケーションと比べると、微妙な表情や感情が伝えられなかったり、タイムラグが起きたりします。
そこで、現実世界と同じように、仮想空間の中にある会議室にみんなで集まり、リアルなコミュニケーションをとることに加え、仮想空間であることを活かして、3DCGの資料や試作品を写しながらコミュニケーションをとることができるサービスが登場し始めています。
4つ目は、「遠隔操作」です。
コンビニでの飲料補充は、1日1000本を超えることもあり、店舗のスタッフが1日に何度も売り場を離れて飲料の補充を行っていました。バックヤードは低温で、長時間補充していると、身体的負荷が高い作業でした。
そこで、自動で飲料を補充するロボットを導入しました。しかし、ロボットが失敗してしまうときもあるので、VRを活用して人が遠隔から操作をしてサポートしています。仮想空間だけでなく、現実のロボットに人が入り込んで操作するといったケースにも、VRの技術が使われ始めています。
このように、産業においても、様々なケースでVRの技術が活用されていて、今後も活用の事例や種類は増えていくと考えられています。
VR導入事例、ファミリーマート
コンビニには、商品の品出しやレジ業務だけでなく、宅配便の受付やコーヒーマシンの清掃など、他の小売店舗ではあまり行われないような業務がたくさんあります。
ファミリーマートではこれまで、さまざまな店舗オペレーションを、店長が新入社員へ対面で研修を実施してきました。
そのため、店舗が混雑している時や、店長が他の業務を行っている場合は研修が中断されてしまったり、人によって教え方にバラつきがあったりといった課題がありました。
そこでファミリーマートは、新入社員の研修プログラムに、VRを活用しています。
VRを使った研修プログラムは、全ての店舗オペレーションマニュアルに対応していて、新入社員は臨場感のある体験学習を、自分一人で実施することができます。
VRを活用した研修の後には、理解度テストも行われるので、理解できているかを確認することもできます。
さらに、VRを活用した研修では、日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語、ベトナム語など、10か国語に対応しているので、外国人スタッフも学習することができます。
VRを活用した研修と、対面での研修の時間を比較したところ、教える側、学ぶ側合わせて、1人あたり約60時間の削減ができたそうです。
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