大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、能楽の公益社団法人宝生会と共同で、AR(Augmented Reality:拡張現実)による能楽鑑賞ガイダンスシステムの実用化に向けた実験を、2017年7月29日に行われる宝生流能楽公演「体感する能『黒塚』」をはじめ、3公演にて実施する。同システムは、メガネのように着けて、実際に見ている光景に情報を重ねて表示するウェアラブルデバイス「スマートグラス」を活用するという。
能楽などの日本の古典芸能では、国内の若年層や体験型の観光を望む訪日観光客などを主なターゲットとして、新たなファンの獲得に取組んでいる。しかし古典芸能は、現代の言葉と異なる言い回しが多く、初めて鑑賞する人や言語・生活習慣が異なる訪日観光客にとっては、台詞の意味や物語の内容を理解することが困難だった。
DNPは、視覚コミュニケーション情報設計の技術・ノウハウとスマートグラスを活用し、舞台から目を離さずに内容が理解できるARによる鑑賞ガイダンスシステムを開発。2016年7月に行った実証実験の利用者アンケートでは、回答者の97%が「舞台の内容が理解しやすくなった」と回答したという。そこで今回新たに、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社とエヴィクサー株式会社の協力を得て、実用化に向けてシステムを改良し、実証実験を実施するという。
実証実験における「AR能楽鑑賞システム」では、鑑賞者は、解説コンテンツのデータを収録した情報端末とスマートグラスをセットで使用。今回、実用化に向けて改良されたのは、以下の3点。
- 全座席で安定した運用を実現
演目の進行に合わせて、最適な解説コンテンツをスマートグラスに表示。表示するタイミングを指示する情報は、音響透かし技術を活用した、人の耳で聞き取れない非可聴音信号として会場の既設スピーカーから配信。そのため、Wi-Fiなどの通信環境を新たに設置する必要がなく、全ての座席で安定した運用ができるという。 - 日本語・英語切り替えが可能な多言語対応
情報端末の貸出時に使用言語を選択することで、スマートグラスに表示する言語を切り替えることができる。 - 容易なコンテンツ制作機能によって、公演関係者などによる解説画面の制作が可能に
スマートグラスに表示する解説画面を簡単に編集・制作できる機能を備えた。コンテンツ制作に関する特別な知識や技能を持たない人でも、コンテンツの編集・制作・更新が可能。
DNPは、現実のように感じる環境を作り出す仮想現実(VR:Virtual Reality)や、現実の世界に情報を重ねて表示するARを活用し、新たなコミュニケーション体験ができるサービス「DNP VR・AR活用ソリューション」を提供している。
今後「AR能楽鑑賞システム」を実用化するとともに、能楽以外の古典芸能や舞台芸能、美術館や博物館などの文化施設、娯楽施設、観光施設などに向けて、スマートグラスとARを組み合わせた鑑賞・ガイダンスシステムのプラットフォーム構築を行っていくという。また、インバウンド需要の拡大に合わせた多言語対応や、聴覚障がい者への対応にも取り組んでいくとしている。
【関連リンク】
・大日本印刷(DNP)
・宝生会(Hosho)
・ソニーセミコンダクタソリューションズ(Sony Semiconductor Solutions)
・エヴィクサー(Evixar)
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