中国、上海で行われたMWC(Mobile World Congress)2017 上海は、以前、バルセロナ開かれたMWCの際にも触れたとおり、通信会社のためのイベントだ。
通信会社を支える通信技術を担う企業としては、エリクソン、ファーウェイ、ノキアが代表的だが、これ以外にもZTEやデバイス側の技術としてクアルコム、STなどの企業や、チャイナモバイル、チャイナテレコムなど通信会社も展示を出している。
これまでの、MWCはバルセロナと同じくスマートフォンの展示も多かったのだが、今回はスマートフォンの展示自体とても少なかったと言える。
一方で、中国・台湾企業の力が強い、VRやドローンの体験コーナーには平日にもかかわらず親子連れやビジネスマンで賑わっていた。
HTC VIVE
最近のVRの展示といえば、HT VIVEとマイクロソフト Hololenzを活用したものが多いが、今回の展示ブースとしては最大級の面積をHTC VIVEが占めていた。
ゲームや教育、エンターテイメントと幅広いVRを使った利用シーンを展開しており、どのコンテンツも魅力的なものが多かった。
特に目を引いたのは、VRとしてはありがちなアクションゲームの中に没入するタイプのもので、ブルーバックの部屋にプレーヤーが入り、外部からのカメラで撮影した情報をリアルタイムにゲームの中の正解と重ね合わせるというものがあった。
これまで、VRのデモは、体験した人にはすごさがわかるが、オーディエンスは楽しめないものが多かった。(強いて言えば、プレーヤー目線の画像がテレビに映される程度であった)
しかし、この展示の場合、世界観の中にプレーヤーが入り込んで、戦っている状態がオーディエンスが見ることもできるため、見ている者も楽しめる。
5Gの通信を考えると、こういう遊び方は実際家庭でも行うことができるようになるだろう。
ドローン市場への多くの参入と、ドローンレース
中国でドローンといえば、DJIだが、今回の展示では多くの企業がドローン製品を展示していた。
できること自体それほど差はないが、中国の製造技術としては割と簡単に作れてしまうものなのだろう。
ドローンレースもかなりの面積で行われていて、多くの人が歓声をあげていた。
スマートウォッチはSIM入り、決済端末へ
個人的に一番欲しいと思ったのは、このスマートウォッチだ。
スマートウォッチは、スマートフォンを一緒に持っていなければならないという課題があったため、例えばランニングする際などにも必ずスマートフォンを持ち歩く必要があった。しかし、考えてみれば、データはクラウド上にあるのだから時計は時計でデータ収集し、可視化の場面だけでスマートフォンを使えば良いものだが、なかなかこうはならない状態であった。
銀聯ブースに今回展示されていたスマートウォッチは、SIMが時計の中に入るという。
さらに、アリババのアリペイや、テンセントのWeChatペイ、銀聯のクイックパスといった、主な電子決済にも対応していてかざすだけで利用可能な場所が多い中国本土では特に便利だと言えるだろう。決済だけでなく、交通系のチケットとしての活用もできるのが便利だ。
電池の持ちやスキミングが気になるところではあるが、最も欲しい機能がすべて入っているスマートウォッチだと感じた。
ちなみに、別のブースでウェアラブルバンドとして活動量計タイプのものも展示されていたが、こちらにも交通系チケットとしての連携が可能な製品もあり、アクセサリとしての時計と、ウェアラブルバンドとを分離したい利用者のニーズが満たされていくという流れも感じた。
災害発生時にドローンが通信をサポート
チャイナモバイルのブースでは、災害発生時のために、ドローンに通信機材を搭載しているものが展示されていた。
記憶に新しい、震災のときに通信基地局が津波に流されてしまって通信障害が起きたことは記憶に新しい。
今後、IoT時代になり、もっと多くのモノが通信をするようになると、災害時に通信ができなくなることの問題が大きいことは想像に難くない。
このドローンがあれば、そういったシーンでも通信を確保することができるというものだ。
スマートウォッチやVRで活躍しそうなUIの新方式 Touch One
TOUCH ONEはVR用ヘッドセットなど、目がふさがれている状態でのテキスト入力に活用できそうな新UIだ。
デモとしては、GoogleのDaydreamのコントローラを使って行われていたが、写真に示すようにコントローラの位置がキーボードの文字に対応していて、たとえば、abcのエリアを1回クリックするとa、2回クリックするとb、という具合に入力が進んで行く。
数字を打ちたいときは右にスワイプすることで、入力する内容が変わるということだ。
このダイヤル式UIとも呼ぶべき方式は、VRだけでなく表示スペースの狭いスマートウォッチでも使えるのだという。
グローバルですすむIoTの潮流と、2017年前半のまとめ
2017年前半戦最後となる展示会だが、CESラスベガス、MWCバルセロナ、CeBITハノーバー、ハノーバーメッセ、COMPUTEX台北、MWC上海と北米・ヨーロッパ・アジアの展示会を見てきたが、展示されているモノを見る限り、メーカーは地域ごとに違うことはあっても、作られているものにあまりかわりがないといえる。これは、グローバルレベルで作ることのできるモノ、着想できることが均質になってきているということだろう。
中国・台湾企業の展示会対応についていうと、以前は、iPhoneが売れると似たモノがいっぱい展示されたように、北米等での発注が増えると、それを模倣した製品がいっぱい展示される、関連部品や部材の展示が多い、という傾向にあった。
しかし、今年の展示会で顕著に感じたのは、台湾・中国の製造企業の一部が、製造委託企業から自社ブランドを持つメーカーへと転身が進んで行っていることだ。(実際にはもっと前から進んでいたのだろうと思われるが、明確に感じたという意図で)
さらに、巨大なマーケットが国内にある中国の展示会では、VRやドローンのような新しい技術で、ハードウエアとしての差別化が難しい製品をいち早く進めるために、親子連れの体験イベントなどを大規模に行っていて、こういった活動も産業の発展としても欠かせないことなのかもしれないと感じた。
今後、クラウドと連携し、AIを活用する、という流れにあるということ。加えて5G時代になることで通信環境が圧倒的に変わり、これまで実現することができなかったSFのような世界が実現されていくことが見えた半年であった。
続きは、MWCレポートらしく、エリクソン、ノキア、ファーウェイのレポートを行う。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。